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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ3「失われし記憶を求めて」
242/433

その236 終焉をもたらす魔法

 返り血で制服を汚した四人組が”異界の扉”に到着すると、


「オッス! レベル85パイセン、あざーっす!」


 メガネくんが体育会系っぽく脱帽し、深々と頭を下げます。それに続いて、サーベル装備の女の子もぺこり。

 私たちが手伝った甲斐はあったみたいで、四人はかなり余裕がある状態でここまで辿り着くことができたみたいでした。

 ここ数分は”異界の扉”に直接爆弾を投げ入れるゲームにハマるくらいには余裕があって、いま”扉”付近に”ゾンビ”の姿はありません。

 死屍累々に取り囲まれ、地面に直接、ぽっかりと空いた落とし穴にも見える”異界の扉”はまるで、何かの前衛芸術のよう。


「これから……どうするんです?」


 さっき綴里さんは《光魔法Ⅹ》を使う、とか言ってましたけど。


「なんでも、あの”異界の扉”を破壊する専用の魔法があるそうです」

「へえー」


 私はちょっとだけ顎に手を添えて、


「でも、――いいんでしょうかね。せっかくの異世界に通じる道を……」

「この場合はやむを得ないでしょう」

「うーん……」


 こういう状況ですけど、世界の在り方に関して好奇心はあります。

 ってかもーこーなったら、この世の造物主的な人のとこ行ってワンパン喰らわさんと気が済まない、というか。


 四人を見下ろすと、彼らのうち三人は、トール・ヴラ……ヴラなんとかさんを護るような陣形を取っていて、”異界の扉”を注目していました。

 トールさんだけが完全に戦闘態勢を解いていて、祈りを捧げるようにひざまずいています。


「デハ、イキマァス。――《エンジェル・ハイロゥ》」


 ふむ。

 マンガで得た知識に照らし合わせるならば、エンジェル・ハイロゥというのはたしか、天使の頭に乗っかってる輪っかのことだったはず。

 それが《光魔法Ⅹ》の正体、ということでしょうか。

 観ている間にも、彼女の頭に輝ける光輪が形作られていました。


「ロシアの移民のフィンランド人のダークエルフのパラディンの頭に、天使の輪っか……」


 設定が。

 設定がとても混雑している。


「でも、とても綺麗ですよ」


 と、綴里さんは、可憐な華でも眺めているようにうっとりと言います。

 トールさんの頭に浮かぶ光輪は今も、しゅうしゅうしゅうしゅうと悟空が気を溜めている時みたいな音を立てていて、淡く明滅していました。

 なにがスゴイって、その光輪の輝きに呼応するように、――太陽の輝きが弱くなり、辺りが夜のように暗くなっていくこと。

 たぶんですけどこれ、世界中で起こってる現象ですよね。


「ひょっとしてあの術……太陽光エネルギーを借りてるとか、そーいうの?」

「さあ……」


 徐々に暗闇に染まっていく街中で、待つこと数分。


「…………結構、時間掛かりますね、あの魔法」


 元気玉だってもうちょっと早く撃てますよ、下手すりゃ。


 今さらながら、わざわざこの辺の”ゾンビ”を一掃した理由がわかりました。

 この術を起動するためには、よっぽど時間をかける必要があるのでしょう。


 私と綴里さんが、晩ご飯のおかずについて話し始めた頃でしょうか。

 ……カッ! と、トールさんが目を見開いて、


「今ッ!」


 と、叫びました。

 同時に彼女は、自分の頭の上に浮かんでいる光輪をガシッと掴んで、


「ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオリャアアアアッ!」


 と、豪快に”異界の扉に投げつけます。

 そして間髪入れず、トールさんが叫びました。


「全員、”扉”カラ目ヲ離シテ! 直視シタラ目ガ焼ケマスッ!」

「へ?」


 いや、そんな急に言われても、唐突過ぎますよ。

 伏線もないし……

 説得力もないね。


 などと首を傾げていると、

 

「”戦士”さんの悪いとこ出てるッ! ぼんやりしない!」

 

 綴里さんに左手を引っ張られ、無理矢理、背を向ける感じに。


 同時に、カッ! と視界が強烈な白色に包まれます。

 その時数秒ほど、私にはこの世界が、天も、地も、何もない、真っ白な空間に見えました。

 背中の方からちりちりと強烈な熱量を感じて、思わず振り返りそうになりますが、……


「ダメです」


 と、綴里さんがお姉ちゃんみたいにがっしりと頭を固定するもので、何が起こっているかはよくわかりません。


 ただ一つ。


『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』


 という、今まで聴いた中でも最大級になる、亡者の絶叫のような、悲鳴のような、そういう音が聞こえていました。

 それを耳にした者全てを地獄に連れ去ってしまいそうな、そんな音が。


「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」


 そして再び、沈黙。


「ええっと……」


 私、いつまでこうしていたら?

 と思って今度こそ振り向くと、三人の仲間に支えられたトールさんの姿が。

 どうやら彼女、”魔力切れ”を起こしたみたい。


「あの一発で、力を使い果たしたんでしょうか」

「みたい、ですね」


 コスパ悪い技だなあ。

 ……なんて、私の感想は後々、まったくの見当違いだったことがわかります。


 てっきり私、彼女が破壊したのは”異界の扉”だと思い込んでいたのですが。

 後々話を伺ったところ、――彼女あの魔法で、こことは異なる世界、……彼らの言葉を借りるなら”廃棄された世界”を一つ、まるまる破壊してしまったそうなので。

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