VS、異世界人 2
「漆黒の鎧さん。防御は任せる」
防御は全て漆黒の鎧さんに任せる。マサキたちとは違う。経験を積み強くなった異世界人との戦いは警戒しなくちゃならない。
「ガハハハッ。いきなりラスボスである魔王と対峙できるとは吉兆。今の俺ならばお前を倒すこともできる」
ゴウダの言葉に、冷静な思考がゴウダの分析を始める。鑑定を使いスキルを確認して、ゴウダのスキルはすでに把握している。
器用貧乏で自分にも使えるようにしたが、使い勝手がいいようには思えない。
「ガハハハッ。来ないのか魔王。怖気づいたか?」
マスクの上から自身の顎を摩り、余裕を見せるゴウダ。ゴウダの方が格下だと思うが、どこからこの自信が湧いてくるのか警戒しなくてはいけない。
「お前の能力は軟体と耐久増幅強化だな。それのどこが強いのか知らんが。減らず口はいい。かかってこい」
相手のペースで戦ってはいけない。これはリリス師匠の言葉だ。相手が格下であってもスキルとは全てを覆せることができる。俺が使い勝手が悪いと思っても、ゴウダには相性のいいスキルなのかもしれない。
「ガハハハッ。俺がチャレンジャーか。久しぶりなことだ。俺は真のチャンピオンだが。いいだろう。魔王に挑むチャレンジャーとして先制させてもらう」
低い姿勢で構えたゴウダは、その巨体からは想像もできない速度で俺の腰を刈り取る。
「ガハハハッ。見えなかったのではないだろうな。期待を裏切ってくれるなよ」
腰が狩られたことで足が地から離れる。ゴウダは俺を抱えたまま飛び上がり関節を決めて身動きを封じられた。天地がひっくり返り、脳天を地面へ向けられる。
「いきなり決着かもしれんな」
ゴウダの声を頭上に聞きながら、地面へと体が突き刺さる。漆黒の鎧により衝撃波は軽減されるが、それでも頭が地面に突き刺さる際に首や背骨から全身に電気が走り抜けた。
「ほう。今のを耐えたか」
立ち上がるとゴウダは余裕の笑みで、俺を見つめていた。
「勇者であるマサキが敗北したと聞いたので、どれほどのモノかと期待していたがたいしことはない。獣王もなかなかの手応えだったぞ。魔王は、それ以下か?」
マサキの情報を知っていることにも驚かされたが、ゴウダはキングと戦ったのか?ゴウダの口ぶりではキングが負けたようだ。出来ればもっと情報を聞き出したい。
「お前の攻撃など聞いておらん。今ので全力か?」
俺は立ち上がりながら、漆黒の鎧さんに付いた誇りを払い退けた。
「ほう、効いておらんと?面白い。だが、今度は貴様の番だ。貴様の力を受けてやろう」
ゴウダは本気で俺の攻撃を受けるように無防備な状態で胸を叩く。ゴウダは本気で俺の攻撃を受けるつもりのようだ。
ゴウダの攻撃を受けたことで、ゴウダのスキルを理解した。
耐久増幅強化とは、攻撃に耐えれば耐えるほど肉体が強化されていく。先ほどゴウダの攻撃を受けた後から体の動きが軽くなった。
死なずに敵から受ける攻撃を耐え続けたことでゴウダは強くなったのだ。
体は軽いのに拳は重い。不思議な感覚だ。自分が強くなったと実感できる。ゴウダが自信を持つのも頷ける。ゴウダもこうして多くの戦いを潜り抜けて、ゴウダは敵の攻撃を耐えてきたのだろう。
「いいだろう。どちらが耐えきるか勝負だ」
俺の発言にゴウダは驚いた顔をした。そして、余裕やバカにするような笑みではなく。心からの笑顔を見せた。
「面白い。こい。魔王」
俺はゴウダに殴りかかる。マサキ達との戦いで肉体強化を得た俺の拳は、ゴウダの力を得たことでさらに高みへと押し上げられる。
「グハッウッ!」
俺の拳がゴウダの鳩尾に突き刺さりゴウダが盛大に息を吐く。今のゴウダになり、拳でもダメージを与えられる。
「ガハッ、ガハハハッ。いいぞ。いいぞ、魔王。今まで戦ってきた誰よりも強い。お前は本物の強者だ。なら、俺も全力を惜しまん」
覇王滅殺波を受けた時よりも、ダメージは少ないようだが、確実にダメージは蓄積している。
ゴウダは何か覚悟を決めたように構えを取るが。先ほどまでのレスラースタイルではなく、両手を前に突き出す柔道スタイルへと構えを代えた。
「なんの真似だ?その位置から俺を投げられると思っているのか?」
「やってみればわかる」
俺は警戒しながらも、ゴウダの次の動きを待った。交互に攻撃をしあうようになっている。
相手のペースにするつもりはない。攻撃を仕掛けてきた際にカウンターを決める。
「はっ」
掛け声と共にゴウダが一本背負いの動きを見せた。何をしているのか分からなかった。ゴウダの動きに引っ張られるように俺の身体が宙に浮いて地面に体が突き刺さる。
「なっ!」
「悪いな。もう、触れさせることすらせんぞ」
何が起きたのかわからないまま、地面から顔を出した俺を今度はジャイアントスイングのように振り回される。
肉体的なダメージよりも、脳や三半規管と言った感覚器を襲われる攻撃に味わったことのないダメージが蓄積される。
「なんだ?振り回されるのは慣れてないのか?」
ジャイアントスイングをしながらゴウダは会話を続けてくる。俺には呂律を整える余裕すらない。
「ならここからは俺流のアレンジだ」
回転するだけだったゴウダは俺を空中へと放り投げる動作をする。三百六十度無重力のように俺の身体は振り回す。
「ジャイアントを超える、ワールドスイングだ」
自分の身体がどんな状態なのかわからない。自分は立っているのか、飛んでいるのか、上はどこで下はどっちだ。いつしか意識はブラックアウトしていた。
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