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崩壊したコロッセオ

 漆黒の鎧さんのお陰で大きな被害が出そうなところは何とか食い止めることができた。しかし、コロッセオの半分は崩壊して、大会が続けられる状態ではなくなってしまった。

 現在は最上段の観客席にいるため、視線を街に向ければあちこちで小規模な爆発が続いている。何よりも爆発から二次災害による火災や逃げ遅れた人々が見て取れた。

 

 世界樹に統治されている国であれば他種族がすぐに力を貸すこともできるが、獣人王国は他国ということだけでなく、他の種族にあまり良い印象を持たれていないためどれだけの人がこの現状に対して協力してくれるかわからない。


「やるだけのことはやってみるしかないな」


 まずできることは、生存者の救助と生きている者の確認だな。フェルは心配ないとして子供たちやガンテツは大丈夫だろうか。とりあえずそちらとの合流を果たさなけれなならばならない。


「確か、ゴーリキの紹介してくれた宿に行っているはずだ」


 キングライガーとの打ち合わせに奮闘する一週間の中で何度か宿に言って子供たちと顔を合わせている。

 今回の大会は陰謀渦巻いていたので、大会中はあまり出歩かないように言っておいた。


「とりあえずは宿屋にいくとしよう」


 コロッセオの中で手助けを求める者は助け、自分で何とか出来るものは置いておいた。キングライガーがどうなったかは知らないが、控室にいたなら問題なく逃げられただろう。


「あなた、こんなところで何をしているの?」


 コロッセオから抜けたところで、白虎娘と出くわした。先ほどコロッセオでサイ娘に勝った子だ。身長は俺よりも頭一つ分低い。モフモフ美少女に呼び止められて、俺は自分が漆黒の鎧をフルアーマーモードにしているのを思い出す。


「俺は」

「なんでもいいわ。その姿ってことは闘技場の格闘家でしょ?瓦礫に埋まっている人がいるの手を貸して頂戴」


 司会をしていた男が白虎娘のことをキングの娘として紹介していた。キングの娘と言うことは強者として育てられ、超お嬢様ということだ。

 クラスメイトの顔を思い出して、高圧的に命令してくる白虎娘に対して。


「ああ、わかった」


 そりゃキングの娘だから高圧的ですよね。てか、久しぶりですこういうの。


「ふん。とりあえずあなた一人でもいいわ。来て」


 白虎娘についていくと、先ほどまで白虎娘と戦っていたサイ娘が瓦礫に埋もれていた。


「アイリス、大丈夫?」

「レンレン。どうして戻ってきたのよ。あなたは助かったんだから逃げなさい」

「逃げれずはずないでしょ。私を庇ってケガをしたんだから。必ず助けるわ」


 どうやらサイ娘ことアイリスは、白虎娘ことレンレンを庇って瓦礫の下敷きになったらしい。

 それにしてもこんな巨大な瓦礫の下敷きになったのに生きてるアイリスも異常な打たれ強さである。


「あんたの細い腕じゃ瓦礫を退かすことなんてできないって言ったじゃない」

「わかってるわよ。でも、一人でダメでも二人いれば」


 レンレンが俺を見る。


「漆黒の鎧?そんな奴いたっけ?誰よ」


 アイリスが俺を見て怪訝そうな顔をする。これまで苦悶の表情を浮かべていたのにコロコロとよく表情が変わるものだ。


「あんたどんなスキルが使えるのよ。ちょっとは役に立つんでしょうね」


 レンレンはどこまでも高圧的に命令してくる。どうしてこの子はこんなにも傲慢なんだろうね。まぁ、答えは決まってるけどね。


「ああ」


 俺は片手を上げて瓦礫に触れる。どれくらい力を込めればいいかわからなかったので、覇王滅殺波で全て消滅させてしまえばいいという結論に至った。


「はっ」

「えっ?」「へっ?」


 二人の少女たちは何が起きたのかわからなかったようだ。アイリスの上に覆いかぶさっていた瓦礫が一瞬のうちに消滅して消え失せた。

 アイリスを一緒に消さないようにするのが少し難しかった。


「これでいいか?俺も用事があるから行くが、早く逃げることだ」


 アイリスが助かったことを確認して、俺は宿に向かって走り出す。


「ちょっと待って」


 しかし、すぐにレンレンに呼び止められた。


「まだ何か?」

「あなた格闘家じゃないわね。いったい何者よ」


 ここで正体を聞くとか、順番が前後していると思うが。俺は漆黒の鎧さんを仮面モードに移行する。


「えっ」「うん?」


 レンレンは俺の正体にすぐに気づいたようだ。しかし、姿をハッキリと見えていないアイリスは間抜けな声を出している。


「失礼をしました。魔王様とは知らずとんだご無礼を」


 先ほどの高圧的な態度はどこにいったのか、レンレンは膝を突いて頭を下げる。先ほどまでの高圧的な態度がなくなったことでクラスメイトたちの面影が霧散していく。いつまでも頭を下げさせているわけにはいかないな。


「気にすることはない。仲間が助かってよかったな」

「はい。魔王様のお力添えがあったからこそです」

「うむ。では、我も仲間の下に行こうと思う。コロッセオのことはキングライガーと共に市民を助けるように動いてくれ」

「はっ。魔王様のお言葉、父に必ず届けます」


 これで高圧娘から離れて行動ができるだろう。俺はもう一度漆黒の鎧さんをフルアーマーモードに変更して跳躍した。


「魔王様」

「レンレン?」

「いいかも」

「え?あんた何言ってるの?」


 俺はこの出会いをしたことで、あとで面倒ごとに巻き込まれることになる。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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