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王都コロッセオ 4

「さぁ、今年も始まりました大武闘大会。王国中の精鋭が集うこの大会の最中、第一試合、第二試合共に接戦で見どころのある試合が繰り広げられていますね。シッタカさん」

「ほぅほぅほうぅ。接戦じゃが勝ち上がってきた者たちは順当なる強者。第一試合のベアー。第二試合のクロイセンはキングライガーに継ぐ実力者と言われておるよ。第二試合にクロイセンが遅れて出たときはどうなるものかと思ったが、ほうほう。終わってみればやはりじゃな」


 司会を務めるのはオウム族のおしゃべり大好きオオムコと、解説はヨルノズク族で一番の物知りシッタカが務めている。


「そうですね。しかし、ここからは話題の新興宗教ドラモンからの刺客、ホンダとゴウダが出てきますね」

「ホンダはオーク族。ゴウダはマウンテン族と聞いていますが、毛の量が少なく珍しい種族だと言われていますね」

「そうなのですか?ですが、大切なのはその強さです。ドラモンからの刺客というぐらいなのですから、その実力はかなりのものなのでしょうか?」

「そりゃそうでしょう。ワシは何でも知っとるからな。ほうほうほう」


 シッタカが為にならない情報を垂れ流す中で、選手たちが入場してくる。第三試合に出て来たのはこの数カ月で重量を増したホンダだった。

 相手には俺の姿が分からないだろうが、それはしっかりとクラスメイトの顔を思いだしている。

 

「ドスコイドスコイ。ふん」


 ホンダが四股を踏むたびにコロッセオが揺れるほどの衝撃がある。ホンダのスキルがどんなものなのかわからないが、明らかにこの世界に来たばかりのホンダよりも強くなっている。


「第三試合開始」


 第三試合の開始を告げる銅鑼が鳴り響けば、ホンダが今まで以上に高らかに足を持ち上げて四股を踏む。その四股は今までの比ではないほどの振動をコロッセオ全体に与えた。

 揺れによって身動きが取れなくなった選手たちに、ホンダはその巨体から考えられない俊敏な動きで他の選手たちを張り手の一発でのしていった。

 

「なっななななんと。ホンダ選手。開始早々その力を見せつけた。ツワモノたちが揃った大武闘大会で瞬殺。これは凄い人材が出てきました」

「ほうほうほう。彼ならばこれぐらいやるでしょうな」

「シッタカさんは知っておられたのですか?」

「そらしょうじゃ。ほうほうほう」


 ホンダの瞬殺に会場は沸き上がり声援が上がる。それに応えるホンダは片手を上げるだけで随分と淡泊な表現だけをして会場から去っていった。

 入れ分かるように第四試合の選手たちが現れ、一番目立っているのは全身ラメを散りばめられた衣装を纏ったゴウダの姿だった。

 ホンダとは対照的にゴウダは筋肉質で、キングライガーに引けを取らない巨漢の男へと肉体を作り上げてきていた。


「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」


 両手を高々と突き上げたゴウダの雄叫びは、威圧こそないものの、ホンダの戦いで熱狂していた観客たちを煽るのには十分な効果を発揮する。

 感情中が熱気に包まれ、歓声が大きくなる。その感性を受けたゴウダはバク転や俊敏な動きで観客にアピールを始めるほどだ。

 

「第四試合開始」


 開始の銅鑼が鳴らされれば、そこからはゴウダの一人舞台となる。体当たりするだけで獣人が吹き飛び、攻撃を仕掛けた者はゴウダの硬化された肉体に阻まれ傷一つ付けることができない。

 さらにゴウダが放つ技は柔道とゆうよりもプロレスのように派手で豪快な印象を受けた。その業一つ一つが観客を魅力しゴウダワールドに引き込んでいく。


「ゴウダ選手、アッカー選手を持ち上げた」


 赤い鳥のような獣人が空中でゴウダに捕まり、両手両足を極められたまま地面へと叩きつけられた。


「ビクトリーーー」

「「「ビクトリーーーー」」」


 最後の一人であるアッカーが倒したことで、ゴウダが勝ち名乗りを上げる。それにつられるように観客たちも歓声を上げていた。

 ホンダは無駄がない動きで敵を瞬殺して見せ、ゴウダは大袈裟な技一つ一つで観客を魅力してカリスマ的な熱狂を受けている。

 彼らの人気が高まるのは火を見るよりも明らかだ。これは教祖ビノが用意した演出なのだろう。

 俺は対面する教祖ビノに視線を向ける。教祖ビノは満足そうに拍手を送っていた。


「あれほどに強いか」


 二人の戦いを見たキングライガーは息を飲む。俺はキングライガーのスキルを知らない。だが、獣人で一番強いことは事実だ。そのキングライガーが冷や汗を流していることに少なからず不安を覚えずにいられない。

 

「負けてもらっては困るが?」

「わかっている。魔王様の言われる通り、教祖ビノは出場しなかった。教祖ビノの側近に我が負けるわけにはいかない」


 あらゆる想定の中に教祖ビノが大会に出場しないことも織り込まれていた。当初は選手名簿に記載されており、キングとなるならば大会に出場が必須だと思っていたが、先ほどの仮面といい、少し歯車が狂い始めている。


「ああ、あの二人のことはあなたに任せる。俺はゲストルームで高みの見物を決め込んでいる奴をどうにかする」


 仮面の奴の事は気になるが、そちらはフェルに任せておけば何かしらの手がかりを持って帰ってくれるだろう。

 それよりも表舞台に顔を出しても、戦いの場にはその身を出さない教祖ビノを、どうやって引っ張りだすのか、それを考えなければならない。

 少なくとも、獣人の何千何百は教祖ビノが唱える獣人至上主義を信じてついていっている者たちがいるのだ。それを力で破壊しても反発しか返ってこない。

 いくら獣人が強い者に従うと言っても、最強の魔王に逆らおうとしているのだ。覚悟を持っての事だろう。


「決勝戦が始まるまで、エキシビションマッチが開始されます。その間は我々も自由に動けることでしょう」

「ああ、とりあえず探りを入れさせてもらうとしよう」


 俺はそう言って席を立ち来賓室を後にした。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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