王都コロッセオ 3
「皆の者よ。今年もこの時がやってきた!我々は強者を欲する。皆もそうだろう」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
大武闘大会が開かれるまでの一週間、あらゆる事態に想定するため、俺とキングライガーは秘密裏に話し合いを続けた。表立って動けない俺たちに代わってフェルと子供たちには随分と動いてもらった。
「俺自身もそうだ。我が心は強者との戦いを欲している。我を倒せるほど強い者がいるならば。我を倒し、キングになる者に従おう」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
毎年開かれている獣人王国の大武闘大会。それは獣人王国で開かれる一番大きな祭りであり、キングを決める大切な行事だ。キングライガーはもっとも注目を集める存在として、コロッセオに姿を見せ続けた。
人目があることで、キングライガーが暗殺される危険は減り、キングライガーを危険視している教祖ビノ側の監視もしやすい状況を作った。
「皆も知っていると思うが、今年は特別ゲストが来てくれている。我らが盟友であり、世界樹の守護者。魔王様だ」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
キングライガーの紹介により、来賓席から俺は顔を出して手を振った。
「魔王様が来てくれたことで、もう一つ面白い報告がある。今年はエキシビションマッチとして大武闘大会で優勝した者は魔王様と対決できる権利が得られるのだ。我々は強者を求める「「「そうだ!!!」」」魔王様の強さを知りたいだろ「「「知りたい!!!」」」なら、今年の強者を決めよう」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
キングライガーは挨拶を終えて、俺がいる来賓室へと戻ってきた。
「これはこれは魔王様、態々我らが獣人王国まで足をお運び頂きありがとうございます」
「いや。こちらこそ招待頂きありがとう。正直、獣人たちには好かれていないと思っていた」
「ガハハハ、そんなことを気になされておられたのか?獣人は本能に忠実であり、自分の眼で見た者しか信じぬ。魔王様が力を見せれば皆も貴方を歓迎するだろう」
まるで初めて会話するように他人行儀な挨拶を交わし、キングライガーの言葉にミツナリは黙って頷くだけにしておいた。
来賓室の正面には、同じような作りをしたゲストルームがあり、そこには教祖ビノの姿が見えている。教祖ビノは貴族たちが着るようなローブを身に纏い、頭には獣人に見える作り物の耳を付けていた。
「あいつの企みは全て潰す」
俺が仮面を着けたままで教祖ビノを見ていれば、教祖ビノの隣に見知らぬ人物が現れる。その人物は俺と同じように仮面を着け、全身が見えないようにフードを被っている。
「誰だ、あれは?」
「うん?どうかされましたかな?」
「ああ、教祖ビノの隣にいる人物。フェルたちが調べた人物に仮面を着けた奴はいなかった」
「ふむ。一人見知らぬ人物が増えたぐらいで、どうにかなるものか?」
「もしも、俺がもう一人いたらどうする?」
俺の言葉にキングライガーは仮面の奴を見る。遠目で情報としては何もわからないが、俺が相手が見続けていると、仮面の奴は一瞬俺を見た。
ハッキリとは何もわからない。わからないが、目が合ったと感じたのは間違いじゃないだろう。
「どうやら気付いたようですな」
「わかるか?」
「気配が変りました。教祖ビノは一度もこちらに気付かなかったようですが、あの仮面。只者ではなさそうですな」
「ああ、警戒しなくちゃいけない奴が増えたな。フェル」
「はっ」
「あの仮面を」
俺が仮面を見つめてフェルに言葉をかけている間に、仮面は視線を逸らして教祖ビノに何事か呟くとゲストルームを離れていった。
「あの仮面を追え。気付かれる恐れがある。深追いはするな」
「はっ」
仮面の警戒レベルを最大限に上げてフェルを向かわせる。フェルならば俺の言っている意味を理解して動いてくれるはずだ。
「一人で大丈夫ですかな?なんならクロイセンを」
「必要ない。むしろ、一人の方がフェルは動きやすい」
二人が話してる間にフェルの気配はなくなっていた。
「ただいまより、大武闘大会を開きたいと思います」
話を切るように、コロッセオ内の司会が大武闘大会の開催を宣言する。コロッセオには西と東の門から五人ずつ獣人が現れ、バトルロワイヤルが開始されていた。
「今年は参加者が多いため、数日かけて予選を行いました。現在コロッセオで戦っている者たちは予選を勝ち上がってきたき強者ばかりです。戦いに肥えたあなたでも、決して見劣りする者はおりますまい。名のある者の紹介をしておきましょう。瞬拳使いのカルガルー。巨体から繰り出されるは突きは敵を仕留める槍使いベアー。獣人空手師範代ワッキー。これだけの精鋭が揃っている姿が見れるのも一年に一度だけ。あなたは誰が勝つかわかるか!」
司会者にも熱が入り、選手を紹介しながら客を煽り始める。獣人たちは戦いを楽しみ歓声がコロッセオを包み込んでいく。
いよいよ大武闘大会が始まったのだ。
いつも読んで頂きありがとうございます。
どうもです。
やっと序章に戻ってくることが出来ました。そして、話は中盤に入り佳境へと向かっていきますので、どうぞ第二章も最後までお付き合い頂ければ嬉しく思います。




