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王都コロッセオ 2

キングライガーは膝を突き頭を垂れた。それに対して俺は椅子に座って足を組む。俺の姿を見たクロイセンやフェルも膝を突いた。

 内心ドキドキが止まらない。それでも、これは必要なことだと自分に言い聞かせながら気持ちを奮い立たせる。


「それじゃあ、話し合いをしようか」

「はっ」

「先に言っておく。敵の目的は俺だ。だからこそ、俺はここにきた」


 そう、教祖ビノは機械族イマリの言葉に従うためにいる。機械族イマリの呪い。それは異世界人全員が植え付けられた。

 「魔王」、元の世界に帰るために倒さなければならない存在であり、自尊心の強いビノは、誰よりも魔王を倒して力を示したいと思っているはずだ。


「……」

「そして、俺の目的も教祖ビノだ。俺も奴に用がある。キングライガーよ。俺が教祖ビノと対峙できる場を作ってくれ」


 俺が話を終えるまで黙って聞いていたキングライガーが顔を上げる。


「それは承諾しかねますな。教祖ビノは我々獣人が生み出した怪物です。我々が退治しなければならない」


 キングライガーは教祖ビノが異世界人とは知らない。だからこそ、獣人の不始末は獣人で処理したいと思っている。そんなことはわかっている。


「それを否定はしない。大武闘大会が開かれるそうだな」

「はい。我々はそこで教祖ビノと戦います。そして、勝つ」

「そうだな。そして、俺は優勝者と戦うためのゲストだ」

「ご理解頂けましたら」


 キングライガーが話を終える前に俺の表情を見て会話を止める。


「なんですかな?その表情は?」

「いいや。キングの好きにすればいい」

「ですが、あなたのその表情はまるで」

「まるでなんだ?」

「バカにされているように感じますな」


 バカにしているわけではない。ただ、もしも俺が思っている通り異世界人なのであれば、この数カ月でスキルを理解して力を付けているはずだ。異世界人のスキルは特殊なモノが多く。どんな効果を発揮するかわからない。

 たとえキングライガーが強くても、異世界人である教祖ビノには勝てないと思っているだけだ。

 

「いや、バカにしているわけじゃない。だが、キングライガー。あなたが思っているよりも敵は厄介な相手かもしれない。俺はそう思っているだけだ」

「納得しかねますな。お考えを詳しくお聞かせいただけますか?」


 大武闘大会が開かれるのは、この日より一週間後のことである。それまでのしておきたいことをキングライガーに話していった。

 相手がどんなスキルを持っているのかわからない以上。どんな事態にも想定できるようにしておきたい。

 こちらのアドバンテージは俺が異世界人であり、相手を異世界人であると知っていることだ。


「以上が俺の考えだ」

「本当にそんなことが起きるとおっしゃるのでしょうか?」


 俺の話を聞き終えたキングライガーは信じられないという表情で戸惑いを見せた。だが、俺は最悪の想定までしていなければならないと思っている。

 

「ですが、魔王様の言う通り、教祖ビノが獣人王国を転覆させようとしているなど……荒唐無稽でございましょう」


 俺の言うことが信じられないと、キングライガーは怪訝な表情をする。


「魔王様、キング。発言してもよろしいでしょうか?」


 聞き入れられないキングライガーを見て、クロイセンが言葉を発した。


「なんだ?」

「魔王様の言われることは、私も荒唐無稽に思えます。ですが、教祖ビノが本気で何かを仕掛けようよしているのは確実です」

「クロイセン」

「私は魔王様の言葉、可能性として信じていいと思います」


 クロイセンの言葉にキングライガーはもう一度俺を見上げる。


「本当にそんなことが起こりえるのでしょうか?」

「もしも、俺が教祖ビノならば、必ずやる。獣人王国を転覆させてキングとなり、そのうえで世界を相手に戦いを挑む」

「それはなんのために?」


 元の世界に帰るため?自分の力を示すため?そんなことそいつに聞いてみないとわからない。わからないが、一つだけわかっていることがある。


「それがこの世界にいる目標だからだ」

「目標?」

「そうだ。人は生きるために何かを目標にしなくちゃならない。そして、教祖ビノの目標が魔王を倒すこと。それだけは間違いない。そのために獣人王国を転覆は必要なことだ」

「……」


 俺の言葉にキングライガーはしばし考えるように沈黙して目を閉じた。それはほんの一分ほどだったのか、三十分ほど時間が経ったのか、だが沈黙が終わったキングライガーの表情は清々しく晴れやかなものだった。


「魔王様を信じましょうぞ。「目標」、魔王様が言うその言葉の意味は理解でません。ですが、魔王様には見えていて、私には見えていないモノがある。我の直感がそう告げている。此度は自らの直感を信じるとしましょう」


 キングライガーは、意地もプライドも全て飲み込み、俺の提案を受け入れた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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