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功績を称える

「マテリアルバースト」


 おいおい、やべーぞ。なんか光り出したぞ。そういえば思い出した。機械族は自爆して魔族族を倒したとイマリは言っていた。これはもしかしたら自爆するんじゃないか。

 

 やばいやばいやばいやばい。とりあえず今できることをしよう。


「絶対防御」


 劣化版絶対防御でイマリを包み込んだ。ないよりはマシだろう。イマリが自爆してどれくらいの範囲に広がるのかわからない。

 とにかく今はここから離れなくちゃならない。瞬間移動で飛べる範囲まで飛ぶしかない。


「しゅんかん」


 俺が瞬間移動を開始しようとすると、背後から絶対防御が破壊された感触がする。


「ウソだろ。ヤバい」


 もう一度絶対防御を最大限の広さで展開する。さらにその外まで瞬間移動で移動した。

 絶対防御の外から爆発の光を見れば、絶対防御を一瞬で破壊され、爆発の勢いは止まらない。


「あぁ、もう。なんで俺がこんなことしなくちゃいけないだよ」


 俺は空に飛びあがり、空から覇王滅殺波を最大出力で放った。魔力も体力も全部を使って放った劣化版覇王滅殺波は爆発とぶつかり合い衝撃波が俺を飲み込んだ。俺は意識を失うなかで、できることは全部やり遂げた充実感に満たされた。


「なんじゃ、何がおきたのじゃ」


 亜種族領へ隠居旅行に来ていた魔王ベルハザードが地震に気付いて現場に赴いたとき、そこに広がっていたのは壮絶な光景だった。

 山は二つ破壊され、森は焼け野原となり、爆発の影響で気温は何百度にも上がって灼熱地獄へと変貌していた。


「なんじゃこれは!トキトバシ、トキトバシよ」


 魔王の呼びかけに答えるように現れたトキトバシの鏡はひび割れ傷ついていた。


「どうしたトキトバシ。いったい何があったのだ」

「機械族じゃよ。魔王様」

「なに?機械族じゃと」

「そうじゃ。しかし、今回の機械族は今までの比ではない。全身から火を噴き。腕は六本、空も飛びおるんじゃ」

「なんと。そんな化け物染みた機械族、聞いたことがないぞ」


 魔王ベルハザードもトキトバシの話に驚きを禁じ得ない。機械族と魔王は幾度となく戦ってきた。そのたびに仲間を失ってきた。確かに強さはわかる。だが、全身を武器にするなど聞いたこともない。

 

「じゃが、事実じゃ。それを新魔王は圧倒して見せた」

「ほう。小僧もやるではないか」

「しかしの。機械族には最終手段があるであろう」

「むっ。確かにやつらの最後は壮絶じゃな。自らの命を持って周囲を巻き込んだ大爆発を起こしよる」

「そうじゃ。そして、今回はこれまでの機械族の中でも最大規模の爆発を起こしおったのじゃ」


 トキトバシの傷はそのときについたものなのだ。ミツナリに逃がしてもらっていなければ、今頃死んでいたかもしれない。


「そんなことがあったのか。それで?小僧はどこにおる?」

「わからん。わからんが、最後にワシが見た時。魔王様と同じ覇王滅殺波を放っておった。もしかしたら生きておるのかもしれんが。ただではすむまい」


 トキトバシの悲痛な表情に魔王は意を消して灼熱地獄に飛び込む決断をする。


「トキトバシよ。今からワシはこの中に入る。絶対に他の者を通さぬように、リリスとバフォメットに伝えよ。若い者たちには内緒にせい」

「危険じゃろう」

「ワシを誰だと思っとる。天下の魔王だぞ」


 しばし爺二人で見つめあったが、トキトバシの方が根負けして折れた。


「新魔王様のことを頼んだぞ。ワシはあの新魔王様が好きじゃ。見ていて面白いからのう」

「ワシもじゃ。ここまで義理を果たしてくれるとは思っておらんかったがの。小僧を助けたい」

 

 トキトバシは瞬間移動でリリスとバフォメットを呼びに行き。魔王は巨大化して灼熱の地獄へと足を踏み入れた。巨大化することで熱い場所を飛び越え、高みからミツナリを探すことができるからだ。


「うん?あれはなんじゃ?」


 魔王ベルハザードの目に飛び込んできたのは、岩山に溶け込むメタリックな破片だった。


「これが機械族の残骸か?」


 メタリック破片の周囲にはキラキラと光る緑色の石が散らばっていた。


「これが賢者の石か?こんなものがあるからノーマルは危険な思想を実現しようとしたのか」


 魔王は憎い破片を覇王滅殺波で完全に消滅させて、周囲を見渡す。そして灼熱地獄から少し離れた木の上で両足と左手を失いそれでも漆黒の鎧に身を包んだミツナリの姿を見つけた。


「まだ形を保っておったか」


 すでに消滅していてもおかしくないと思っていた魔王は、ミツナリの姿を見て歓喜した。すぐにミツナリの身体を両手で包み込むように抱き上げた。


「心の臓は止まっておるか。じゃが主は死なんせん。魔王の名に懸けて」


 魔王ベルハザードはトキトバシが連れてきたリリスとバフォメットに指示を出して立ち入り禁止区域の指定をした。そして、抱き上げたミツナリを連れて世界樹の城へと戻ってきた。


「よくここまで戦ってくれた」


 儀式用の寝台に寝かされたミツナリは、漆黒の鎧を纏っていることで顔の半分が仮面で覆われたままだ。


「こんな子供だったとわね」


 ベルハザードの隣に立つリリスは、仮面が剥がれた顔半分を見てリリスは悲しい顔をする。


「こやつは異世界人なんじゃよ。元の世界に帰るため、魔王の仕事を引き受けた」

「なんて無茶をやらせたんだい。あんたは」

「本当にそうじゃった。こやつがこんなになるまで戦ってくれるなど考えてもおらんかったよ」

「どうする気だい」

「秘術を使おうと思う」

「なんだって。あんた何を言っているのかわかっているのかい?」

「一人の命で一人が救えるんじゃ。安いもんじゃろ」


 ベルハザードの笑顔にリリスはため息を吐く。


「どうしてこの小僧にそこまでしてやるんだい?」

「これは小僧への功績じゃよ。最高の敵を倒したのに、功績も与えぬでは王として名が廃る」

「はぁ~あんたは本当にバカな王だよ。それでも私らが選んだ王だ。あとのことは任せな。この子の教育は私とバフォメット爺がするよ」

「うむ。頼んだ」


 魔王ベルハザードは自身の胸に腕を突き入れ、胸から巨大な魔石を取り出す。彼ら魔族は心臓部分に魔石が埋め込まれている。これが心臓の代わりとなり、魔力と血液を循環させているのだ。


「ミツナリよ。主の功績を称える」


 魔王ベルハザードは自らの身体から取り出した魔石をミツナリの心臓へと突き入れた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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