ゴブリンの街
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よう、ちょっと久しぶりになるが、魔王オオカネ・ミツナリ様だ。今回はゴブリン襲撃から色々有ったが、どうやら亜種族会に認められたらしい。
地方巡回の本当の意味を知ることになったわけだが、そらそうだって感じでやっとふに落ちた気分だ。誰が見知らぬ魔王を認めるかって話だ。
馬鹿正直に優しくされて勘違いしてたのは俺の方だったというわけだ。ハッキリと言えることは世の中そんなに甘くないってことだな。
「魔王様、宴会の続きに付き合ってくれますな?」
亜種族会の会合が終わると、バイエルンから歓迎の宴に誘われた。だが、今回は丁重にお断りした。
「すまないな。今回はゴブリンの街に先に行ってやりたいんだ。何より帰って仕事も山積みになっているだろうしな」
「真面目ですな」
「ああ、その辺も前魔王様に見込まれたところだからな。またゆっくりと酒を飲みにくるよ。それに、小太刀もな」
「小太刀?あの片刃ナイフのことですかな?」
「そうだ。あれは刀を小さくしたものだ。刀を太刀ともいうだろ?だから小さくした刀で小太刀だ」
「なるほど。では、小太刀の製造。魔王様の作った見本を元に進めさせて頂きますじゃ」
バイエルンはドワーフ領ではないからか、師匠と呼ぶことはなかった。それでも言葉一つ一つに敬意をこめてくれているのが十分に伝わってくる。
「トキトバシ。ゴブリンの街に三人を移動させてくれ」
「あいよ」
「またな」
「また会おう」
バイエルンに握手を交わし別れを告げる。トキトバシは握手が終わると三人をゴブリンの街へと飛ばした。戦いが繰り広げられたゴブリンの街は、かなり酷い状況になっていた。
死者は葬った後なのか、街の外れには大きな焚火の跡があった。街の中に入ればケガ人の世話をしているゴブリンたちが立ちあがって頭を下げてくれる。多くのゴブリンが動けぬまま路上に横たわっていた。
「野戦病棟だな」
破壊された家はいつ倒れてもおかしくないため、皆家には入らず、外で過ごしていた。
「どうだ?お前が行った悪行だ」
踊り子の衣装に身を包んだハーヴィーは何も言わず、唯々肩を震わせる。そこには彼女に敵意を向けたゴブリンはおらず、被害に有って傷ついたゴブリンたちが横たわっている。
「すまない。キングはどちらにおられる」
俺は横たわるゴブリンの世話をしているゴブリンに話しかけた。
「魔王様!。此度は我々を救って頂き」
「気にするな。今はキングに会いたい。場所を教えてくれ」
ゴブリンが感謝の言葉を口にするよりも先に手で制する。
「はい。キング様は一番傷が深く。今も家で眠られております」
「そうか、辛いことを聞いた。すまない」
「いえ、魔王様は何も悪くありません。魔王様には感謝しかありません。本当にありがとうございます」
ゴブリンは恐縮しながらも唯々辛い状況のなかで、魔王にお礼を口にする。そこには悲壮感と哀愁だけがあり、慈悲を与えられるのは俺だけだった。
「今は休め。また、皆が幸せに働いてくれる環境を整える。約束しよう」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
俺はキングが眠る家の中へと入っていく。部屋の中には俺とキングしかいない。ハーヴィーはエリカさんに見てもらっている。
「キング、深手を負わせてすまない」
見た目はいかつい鬼にしか見えないゴブリンキングも、深手を負えば昏睡状態になる。彼らもただのモンスターではなく人なのだ。
魔王に忠誠を誓い。魔王と共にあらんとした。そして新たな魔王となった俺を受け入れてくれた民だ。
「王よ。謝らないで頂きたい」
「キング」
「あなたに呼ばれたような気がしました。魔王様、我々は何も後悔しております。だから謝らないで頂きたい」
キングの言葉に俺は頷くことしかできなかった。
「我らが王よ。どうか、この世界を見守りください。我らはあなたに従い、世界樹と共に生きましょう」
「約束しよう。俺はこの世界の守護者となる。どんな外敵があろうと皆を守り抜く」
「おお、ありがとうございます。私も体を直し、必ずや魔王様のお力になりましょう」
「ああ、それも約束だ」
俺はキングと握手を交わして席を立つ。
部屋から出た俺を出迎えたのは、ベールを脱いだハーヴィーだった。
「どうした?」
「私は」
「お前は世界を知れ」
何かを言いかけたハーヴィーに、俺はそれ以上何かを語らせることはなかった。ここで、ハーヴィー許しを乞う言葉を言えば、俺はもうハーヴィーを許せない。
ハーヴィーを振り切り、俺は家の外に出る。そこには大勢のゴブリンが魔王の姿を見ようと待っていた。
「魔王様!」「我らは魔王様と共に生きます」
「こんなことでは我らは負けません」
「来ていただきありがとうございます」
そこにいたのは魔王に元気な姿を見せようとするゴブリンたちの姿があった。そして、魔王の後ろにはその思いをぶつけられるハーヴィーがいる。
俺にかけられることは一つだけだ。
「生きよ」
そういって俺は腕を天へと突きあげた。
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