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罪と罰 終

 ジャッジメントの言葉に委縮したのか、ハーヴィーはそれ以上文句をいうことなく黙っていた。空気が重くなったので、最後の質問のために俺は口を開いた。


「これは最後の問題だ。お前はこの問題を当てなければ負けるということだ」


 ハーヴィーの肩が震える。ここに来て自分の負けが見えてしまったのだろう。ここで自分が当てて、俺がハズレなければ勝ちはないのだ。


「では、最後の罪だ」

「ちょっちょっと待ちなさい。勝った時に得られるもの確認したいわ。私が勝てばあなたを従わせられるのよね?」

「そういうことだ」


 その場合は俺は魔王としての権限を手放すがな。この世界の人間に迷惑をかけるつもりはない。


「そして、私が負けた場合は……私はあなたに従うことになるのよね?」

「そうだ。お前は俺のモノになる」


 俺はモノという言葉を強調する。負けを意識したハーヴィーにさらに恐怖を与えるためにそういったつもりだった。俺の言葉を理解したのか、ハーヴィーは大きく息を吐いて先ほどまでの動揺を落ち着けている。


「いいわ。OKよ」


 そして、彼女は完全に心を落ち着けて見せた。ハーヴィーの顔は戦いに挑む戦士のように、むしろ高揚した顔をしている。


「さすがだな。最後の罪だ。俺のスキルは、他人のスキルを見ただけで使うことができる。俺はお前のスキルも使うことができる。そしてこの力があるからこそ、俺は魔王になった。これが俺の罪だ」


 罪と呼んでいいかどうかハッキリとはわからない。だが、俺はこの力で魔王になったことを罪だと思っている。本来であれば世界の王となる魔王は、この世界の住人の誰かがなった方がよかっただろう。そういう奴が認められて成ればよかった。


「あなたが魔王になった理由が罪?本当にそんな力があれば最強だと思うけど。魔王として認められるのに十分な力ね。本当にそれほどスゴイスキルに代償はないのかしら?」


 ここまで状況に流され動揺していたハーヴィー・クロード・キサラギは、最後の問題を前に冷静さを取り戻して思考を巡らせる。

 超お嬢様は、超の意味に恥じることなく頭もいい。テストでは学年一位を争うほどだ。上流階級とはずない知識も持っている。勉強だけでない礼儀や作法、習い事などの様々な知識も持ち合わせている。


「私のスキルは肉体強化や武器強化のような攻撃を重視したものばかり」


 どうやら肉体強化と武器強化はハーヴィーから手に入れたらしい。


「強化を使えば後に凄い筋肉痛とか、武器が壊れたりするから大変だし」


 なるほど、俺が劣化版というハンデを負うのと同じで、スキルには何かしら代償があるということか。この女は冷静なようでやはりバカなのかもしれない。 


「ハーヴィー様。お時間です。答えを」

「待って待って。あと少しだけ」

「ジャッジメント、大丈夫だ。彼女の考えが出るまで待ってやれ」

「畏まりました。魔王様がよろしいのであれば」


 俺の言葉にジャッジメントが引き下がり、ハーヴィーは不思議そうにこちらを一瞬だけ見た。しかし、すぐに思考を再開する。


「そもそもどうして魔王になったことが罪なのかしら?そんなこと罪だというってことは相当に人を殺して力を見せたってこと?確かにそれなら魔王に成れてもおかしくない」


 どうやら結論が出たらしいが、人を大量虐殺犯にしないでもらいたい。大量虐殺犯はお前だろ。


「決めたわ。今の話は本当のことよ」

「クロード様。正解です」

「よし」


 ここまでの三問、俺は一度もウソをついていない。自分が罪だと思うことを本当に告白して見せた。だが、この女は一問目に人に罪を擦り付け、二問目に親友と彼氏を裏切った。ウソと本当を使い分けながら、最低な奴だということが露見している。


「じゃあ、次はあなたが答える番よ」


 どうしてそんなにも挑むような、それでいて元気満ち溢れた顔をしていられるんだ。


「いいだろう。最後の問題を始めてくれ」


 この戦いが終わったとき、お前の本当の罪が始まる。


「私と彼は本当は彼氏彼女じゃないの。偽りの彼氏彼女なのよ」


 最後に放り込まれた罪はなんともシンプルで、それでいて根本的な話になる。こいつがマサキと付き合っていない?なら、いつものイチャイチャした態度はなんだ?他の女子たちの苦労はどうなる?お前はそこまで最低なのか。


「どうかしら?私は本当のことを言ってる?それともウソ?」


 本当に楽しそうに笑う。そこには怯えも気負いもましてや、負けるという概念すらないように思えた。


「本当のことだ」


 俺は迷わなかった。一問目、二問目を聞いていたからこそ。この話が本当であると判断できた。こいつは心の底から最低な女だ。


「魔王様、正解です」

「えっ!どうして?」


 ハーヴィーは当てられると思っていなかったのだろう。動揺した素振りで何度も、俺とジャッジメントを見た。


「勝負は決しました。正解数二対二。これにより魔王様の勝利となります。そして、ハーヴィー様には隷従の首が付けられます」


 そこは俺にしか見えない首輪をつけられたハーヴィーの姿が出来上がった。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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