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罪と罰 2

 「さて、次は二問目だ。覚悟はいいか?」


 俺がハーヴィーを見れば細い足をシャツで隠そうともがいていた。親友の彼女がパンツを隠す姿は正直ヤバい。それが完璧な美少女となればヤバさは想像以上に思春期男子には強烈な刺激を含む。


「さっさとしなさいよ変態。あなたの罪を当ててあげるわ」

「くっ、いいだろう」


 ハーヴィーの挑発に気分を変えるため目を閉じる。それからもう一度脳裏に焼き付けるためにハーヴィーをゆっくりと眺めた。


「ちょっ見るな変態」

「そうだな。次の罪についてだ。俺には大切な親友がいたんだが、昔からその親友が気に入らなかった。そこで、俺はある転機を迎えてその親友を裏切ることにした。これが俺の罪だ」


 俺の脳裏にマサキとトシの顔が浮かんだ。もしかしたら親友だと思っているのは俺だけかもしれない。親友であるからこそ、間違ったことをしていれば裏切ってでも正さなくちゃならない。

 俺はもう一度ハーヴィーの姿を見ながら、こちらの世界の味方になってよかったと思った。


「それは本当の話ね。あなたに親友がいるか疑わしいけど。裏切るっていうのはあなたにお似合いだと思うから」


 ハーヴィーは態々皮肉まで付け加えて答えを告げる。


「クロード様。正解です」


 ジャッジメントが正解を告げれば、俺のボデーアーマーがなくなり上半身が裸になる。これでも鍛えているので、それなりの身体をしているつもりだ。


「隠しなさいよ」

「彼氏がいるのだろ?男の裸など見慣れているだろうに」

「そっそんなことないわよ。私とシンタロウはプラトニックな関係なんだから」

「彼氏の名前はシンタロウというのか」

「うっ」

「情報を簡単に話すものではないな」


 ハーヴィーの迂闊なところを指摘して、俺はジャッジメントにゲームの続きを進めるように促す。


「回答権が魔王様に移りました。クロード様は罪を告白してください」

「わかってるわよ」

「それと、罪に関しては近況のモノをお願いします。幼いときの話では本当に罪に思っていたのか判別できません。また幼い時の罪はすでに許されている場合がございます。罪とは許されていないものを差します」


 ジャッジメントの指摘にハーヴィーはまたも爪を噛み始める。どうやら考え事やイライラしたときの彼女の癖なのだろう。


「いいわ。近況の罪ね。いくわよ」

「ああ、いつでも構わないぞ」

「私には彼氏がいるわ」

「ああ、シンタロウだな」

「そこ、うるさい。黙って聞きなさい」


 魔王にここまで強気で接せられるこの女は流石の豪胆さを持っている。


「私には彼氏がいるわ。でも、彼は凄くモテるの、私以外に彼を好きな子が四人いるの」


 ほう、自分の従者であり親友であるツバサの気持ちには気づいていないと思っていたが、ちゃんと気付いているのか。


「その中に私の親友がいるんだけど。その親友は私を応援してくれているから、自分の気持ちを心の中に封じ込めているわ。私はそれが嫌で彼女が彼と接近できる時間や環境を整えたりしたわ」


 そんなことをこのお嬢様がしていたとは知らなかったな。


「でも、私は一度だけ。二人が急接近できる日に、最低な方法で邪魔をしたの。彼女の誕生日の日、私は彼を閉じ込めた。

 彼が友達を祝うのが許せなかった。だから、ボディーガードに言って閉じ込めさせた。彼は自力で脱出して、結局彼女を祝ってしまったけどね。私の罪は以上よ」


 この話はマサキから聞いたことがある。ただ、先ほどのようにひっかけがあったとしても、事実かどうかまで詳しくは詳細がわからない。

 その場にいたマサキですら誰に助けられたのか、犯人は誰なのかわからないのだ。俺が知るはずがない。

 マサキから聞いた話では、見知らぬ黒服に誘拐されて、誰かに助けられたと言っていた。多分だが、マサキはハーヴィーの手によって助けられたんじゃないだろうか。マサキの居場所を知ったいたのは彼女だけであり、マサキを助けていないのなら、ハーヴィーの人格を疑う必要がある。


 よって、ハーヴィーが自力といった部分が嘘であり、誘拐したのは事実でも助けたのが彼女だから、マサキは誰か犯人がわからなかったのだ。


「その話はウソだ」


 俺の宣言にハーヴィーは無表情でこちらを見ていた。


「魔王様、ハズレです」

「ふふふ、やっぱり人を信じられないのね。私が言ったことは全て本当よ」


 勝ち誇っているが、俺はお前の良心に賭けたつもりだったのだがな。お前がマサキを助けてもいないなら、本当に最低な奴ってことだ。


「そうか、なら最後の勝負といこうか」

「最終ラウンドになります。現在、互いに一勝ずつですので、次のゲームが当たった方が勝ちとなります。ただし、どちらも当たりもしくはどちらもハズレの場合は魔王様の勝ちとなります」

「ちょっと待ちなさいよ。どうして魔王の勝ちなの?おかしいじゃない」


 とことんアホなのだろう。この立場で自分に勝ちがあるだけありがたいとどうして思えないのか。


「言葉が過ぎますよ。これは魔王様の慈悲にて行われたゲームです。本来であれば、あなたはゲームをしなくても魔王様に服従しなくてはいけない捕虜の身。それともこの場であなたの負けを宣言しましょうか?」


 ハーヴィーの態度や口調を見かねたのか、ジャッジメントが怒気を込めた声を発する。


「なっ何よ。どうしてあなたが怒るのよ。あなたは公平な審判でしょ」

「私は審判ではありません。裁判官です。裁判官はどちらに非があるか判断する者。常にどちらにも味方し、どちらにも敵対します。ですが、あなたが私のルールを害しようとするのであれば、あなたに敵対します」


 ジャッジメントの言葉に委縮したのか、ハーヴィーはそれ以上反論することはなかった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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