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素直になれない君は



「本当に来るつもりですか?」


「もちろん、私が行くんだから君も来るんだよね?片桐君?」


「もともとは俺が誘われたはずなんですけど」


「いいじゃないか、相手がうちの大学の後輩だって分かったんだし問題もなかろう」


「おおありでしょう」


 雫はスマホでつい最近連絡先を無理やり交換されたと言ってもいい、浅野緑とメッセージをやりとりしていた。

 

「まぁもう私は行くことになっているからね、観念するといいよ」


「すでに行くと言った手前、前日にキャンセルするわけにもいきませんからね……」


「大方君がしようとしていることはわかるけどね、私が行くからにはそんなことさせないから」


「なにを言ってるかはわかりませんが、俺は頼まれたから行くだけです。それ以上でもそれ以下でもありません」


「そう願ってるよ」


 その言葉を最後にピタリと連絡が止まる。


 雫はそんなラインの履歴を確認しながら、ベッドに腰掛ける。

 明日、飲食店の先輩にあたる女子高生、東雲から誘われた合コンに行くことになっている。

 曜日が日曜ということもあってバイトもなく、配信も夕方には行う傾向にないことから、行かない理由は特になかった。


 そのため日程が決まった時に問題ないと連絡して参加が決まったわけだ。

 しかし、その前日になってなぜか三日程前に唐突に現れた浅野緑という現役の読者モデルも来るという話になっているのを雫は知った。


 あの後、緑からの連絡もちょくちょく雫の下に届いていたが、その内容からもどうにも雫を毛嫌いしている雰囲気を雫自身が感じていた。

 そう感じていたからこそ、なぜ今回緑までもが参加したのか雫にはわからないでいたのだ。



 そしていつのまにか朝日が昇り、太陽が上がってくるのをいつもの土手で雫は眺めていた。

 いつものような日々の始まりを感じさせる光だった。





「おっす!おはよう、光輝!」


「おはよ、大地」

 

「にしてもよく、緑さん呼べたよな?あの褐色の麗人を」


「俺もわかんないんだ。なんか東雲たちの方が知り合いだったらしくて、どうせだからっていう話らしい」


「すげぇ偶然もあるもんだよな」


 とある駅に早めに集まっていた男二人。

 どこか爽やかな感じのするすらりと伸びた体躯の男は名を光輝。

 一方肩幅が広く筋肉質な様子が見て取れる男は名を大地という。


 その二人がここにいるのも、ひとえに高校の頃によく遊んでいた後輩の東雲たちと合コンをするためであった。

 本来はこちら二人、向こう二人で計四人だったのだが、どうせなら互いに一人ずつ呼ぼうという話になったのだ。


 そして東雲たちは男を一人、光輝たちたも女を一人呼ぶことにした。

 ただ光輝たちはその一人がなかなか見つからないこともあって、結局東雲たちによって他の二人も集められることとなった。


 この合コンが東雲の提案であったことからも、特に問題なく日程も決まり、そろそろ集合時間だという時間になったのである。


「わぁ〜、久しぶりです!!光輝先輩!」


「久しぶりです!」


 そこにやってきたのは飲食店でもよく二人になっていることのある女子高生の二人で、一人は東雲、もう一人は田中といった。


「東雲も田中もかわんねぇな」


「久しぶり、二人とも」


 光輝はそう爽やかに受け応えて見せる。

 その場に集まった四人で色々と昔話に花を咲かせながら、東雲が呼んできたという二人のことを待つ。

 とは言っても片方は緑なのを知っているため、男二人組はかなり興奮気味であるのが側からでもわかるほどだった。


 そして次に来たのが待望の浅野緑本人だ。

 白を基調に整えたファッションでその褐色の肌とマッチしてどこから見ても美しい印象を生ませていた。


「こんにちは、田中ちゃん、東雲ちゃん。時間ギリギリだったかな?」


 そんな声でこの場に現れた緑はその笑顔でみんなの心を射抜いていた。

 それほどまでに綺麗な人だから。


「こんにちは!緑さん……!ほんとに来てくれるとは思ってなくて……、今日はありがとうございます!」


「いいよ、いいよ。私もちょっと遊びたいと思ってたしね。こんな可愛い子と一緒ならウェルカムさ」


「か、可愛いなんて……」


 どこか男子二人は困ったような顔でこの光景を見ていたが、そうしているうちに最後の一人もやってきていた。


「すみません。遅れちゃいましたかね?」


「片桐君!ぜんぜん、ちょうどいいくらいだよ!」


「それならよかったです」


 そんな風に笑ってこの場にやってきたのは、その髪を自然に伸ばし、ラフな格好で全体を着飾っていた高身長の男、片桐雫だ。


 そしてその登場に感極まっていたのは東雲や田中だけではなかった。

 違う意味で光輝と大地もどこか驚愕した様子だったのだ。


「あ……?」


「お前……片桐とは聞いてたが、雫……なのか?」


 二人は懐かしむような、どこか恨めしく思っているような、そんな声色で問いかける。


「ん?……こんにちはお二方。今日はよろしくお願いします」


 そんな爽やかな笑みで男は答えた。

 その様子に二人は動揺する。

 なにせ、この男、雫は二人にとっていい意味でも、悪い意味でも運命の出会いと言ってよかったから。


「どうしたんですか?光輝先輩。顔が真っ白ですよ?」


「え?」


 そう東雲に指摘されてようやく光輝は自分の状態に気づく。

 あぁ、またこれなのかと。


「いや!なんでもないよ。……それよりそろそろ時間だしね。話は歩きながらにしよう」




「お、おい、光輝。あいつ、雫、なんだろ……?なんでだまってたんだ、あいつがくるなんて聞いてないぞ」


 大地は小声で光輝に耳打ちするような距離でそう言っていた。

 光輝もそれに倣う。


「俺も片桐だとしか聞いてなかった。それが雫だとは思わなかったんだ……!」


「くそっ、なんでまたあいつの顔を拝まなきゃなんねぇんだ」


 そんな二人を他所に、目的地までの時間では二人の後をなぞるようにして東雲、雫、そして田中、緑の列ができていた。


「片桐君きてくれてありがとう!」


「予定がなければ行くと言いましたしね。今日はたまたまこの時間、予定がありませんでしたから」


「緑さんも来てくださってほんとにありがとうございます!私、しののんから緑さんの話を聞いた時からこうして話してみたかったんです!」


「いいよ、これも縁だしね。どんとこい!」


 そんな様子で進んでいく。

 ただ、この時緑の視線が雫によっていることには誰も気づかない。



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