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嵐の前の静けさ



『よろシオン〜今日はツイッターでも言ったお絵かき配信するよ!』



『まってコメント欄にマジの神絵師さんいない!?』



『あぁ〜確かに。この表情作るなら構図変えた方がいいな……』



『うぅこれまでアニメ調でやってきた着色の弊害が……』



『よし、これでどうよ!?』





『あっ、やべ歌詞間違えたぁぁぁ!これなし、もっかいもっかい!』



『いやなんでそんな上手いん……?うぅどう酷評したらいいんだ』



『実は一般シオラーに混じって歌手とかいない!?』



『あぁ音域?結構広いと思うよ?てか、出せるようにしたんだけどね?』



『えぇ俺もうちょいエッジ入れたつもりなんだけどなぁ……』



『お?いいんじゃない?』






『みんなリヴァル好きすぎない?アンケートの意味がなかったんだが……?』



『やっぱ二次創作って面白いよなぁ』



『ん?他のキャラ?簡単にでいいならできると思うよ?』



『いやちょっと待とう、送られてくるセリフがもう全部やばいよ』



『特に自分で推しのカップリングを作るのに一時期ハマってた』



『ちな、めっちゃ面白かった』






『まじでホラゲーやるの?やめよ?』



『うわっ、まじやばいってえぇぇ』



『てか、操作ムズッ』



『ちょ塩、塩まいとこうぜ、って今くんの!?』



『いや、今のは叫んでない。うん、あれは俺の喉にすむ奴が勝手に動いただけだから』



『んっ!?…………し、心臓に悪い……』



『ク、クリア………』






『うぅ、泣ける……こんなストーリーだったのか』



『そうだよな、辛かったもんな……』



『黙れってひどくない!?えっ?出てくんなって!?てかこの声も俺の声なんですけど!?』



『ん?女の声?そりゃさっき見せた俺の声よ』



『やっぱ昔のゲームにも声があるとこうも違って見えるんだなぁ』



『やば、五時間経ってる……おつかれオッ!』






『てかやっぱり俺ってカッコよくくない?』



『女装とかしたらめっちゃタイプかも知れん』



『自給自足って……くくく、やばいツボが……』



『いつか俺と俺のコラボとかしてみようかな』



『あっ、そうそう!多分来週あたりに初コラボあるから見にきてね!』



『相手?相手はまだ秘密』





「七々扇紫音、怒涛の勢い!わずか一週間でチャンネル登録者数十万人突破!!異例の速度で駆け上がる新人の実態とは!!!」


 初配信からは一週間とちょっとが経っていた。

 その間に紫音は計六回の配信を行い、そのどの配信においても同時視聴者数一万人を下回る時間がなかった。

 それどころか一度配信するごとに新たに見始める新規ファンが加速度的に増えていき、初配信で集めたチャンネル登録者数と同数のファンをこの一週間で集めたことにも他ならない。


 そしてその全ての配信が#紫オンライブでトレンド入りするという快挙を見せた。

 しかも、そのほとんどがこのバーチャルユーチューバー界隈に興味がない人までその名を轟かせるようになり、未だその熱は消えていなかった。

 それも紫音一人のあらゆる能力を見せつけるような形で有名になることで、次は何をしてくれるのかという期待が起こりやすくもしていた。

 それこそ、ユナイトという名よりも大きくなるほどに。



「また紫音ってやつか、まじでバズってんな」


「正直どこが面白いのか全くわからん。確かにトーク力はあるかもしれんが、こんなん自己顕示欲満たしてるだけの配信だろ」


「面白くはあるけどなんかつまんない」


「そこまでよく見てないけど天才って呼ばれてるんだろ?なんでそんな奴がブイチューバーなんてやってんの?」


「紫音って花音ちゃんのパクリ?」


「あいつどこかでこんなことできてる俺ってすげーって思ってそうで好きになれん」


「なんか、見せつけられてる、って感じ」


「俺ら無能に対する新しいタイプのいじめ」



 その名が世間に浸透していくということは、つまりは悪い意味でも多くの人に知られることと同義でもある。


 普通のファンもいる中、まだ少ないながらも一定数の悪質なコメントもよくツイッター上では呟かれていた。

 中には単純な嫉妬や、呆然とした印象のものが多い。

 基本的に妬み嫉みは、完全に無くなる話ではない。


 だからこれから活動するにあたっても、こういう輩は一定数つくのが当たり前ではある。

 しかし、紫音はそうではない。


 今の紫音は世間が求めていた、求めている紫音でいなければならないから。


 別に紫音自身特別このコメントに執着しているわけではない。

 むしろ逆。

 この意見も等しく一意見として受け取ってしまう思考に問題があることに紫音は気づかないのである。


 どんな罵倒も、どんな批判も、どんないい評価も等しく何も感じていない。

 ただこうあるべきなのだと思っているだけだから。





「紫音。あまり気を負う必要はないんだからな?いろいろ紫音はこちらが思っていた以上に規格外だったから、僕たちもあまり状況を正しく認識できているわけじゃないんだが、それでも僕は君のマネージャーだからね。君のことだけでもしっかりサポートしてあげたいんだよ」


「気負ってなんかいませんよ。ちょっとぼーっとしちゃっただけです。どちらかというと、元気が有り余ってますよ?」


「そうかい?それならいいんだけどね。何かあったら言うんだよ?どんな小さなことでもね」


「了解です」


 紫音は自身のマネージャーである木下柚月と、一つテーブルを挟んでコーヒーを飲む。

 場所は都内の有名なカフェで、その都心とは思えないほどのノスタルジックな雰囲気を醸し出していた。

 紫音はそんな場所でそのコーヒーの苦味を感じながら、ある人物を待つ。


 今回この二人でこの場所に現れたのも、今日から定期的にお世話になるだろう人との顔合わせ的な意味を持っている。

 

「じゃあ確認するよ?今回会うのは、というより今日からお世話にもなるのは、僕たちが普段からお世話になってる録音スタジオの一人だよ。ちなみにこれから紫音くんに専属的についてもらう人でもあるから、くれぐれも注意してね」


「確か小倉さんでしたよね?」


「うん、小倉隆さん。まだ実績はないけど、紫音くんのボイスはほぼ彼が一任する形になってる。うちの他の面々も同じ社内の人に依頼してるんだけど、今回は紫音が新人だからそれに気を使ってくれたようだね」


「なるほど」


 紫音にとってそんな気遣いはむしろ無い方がいいのだが、そんなこともいちいち言っていられないだろう。


 ちなみにこのボイスの収録。

 これは主にユナイトを経営するコネクトが販売するといった、いわゆる事業の一つである。

 紫音や他のライバーにとって、報酬は配信での歩合制であるのには変わらないが、他にもこのボイスの販売での収益もそれに加わってくる。


 そのため多くのライバーがおよそ二ヶ月に一回のペースでボイスを販売する。

 その例に漏れず、この五月下旬の定期ボイス販売に向けての収録をしにきたわけだ。

 今日がまだゴールデンウィークに入った一日目であることを考えると、およそ一か月の猶予を持っての収録となる。

 これもひとえに紫音のことを思っての配慮であった。

 

 マネージャーである柚月はまだ地固めもままならない状態だから今回は見送ってもいい、と言われていたものの、どうせ機会があるのなら、ということで紫音は参加することになっていた。


「それより本当に台本は僕たちの用意したものでよかったの?」


「ん?当たり前じゃないですか。それに今回は短めなんでしょう?まだ俺は出たばかりの新人ですからお任せしたんですよ」


「いや僕が配信見ていた限りでは僕たちなんかよりよっぽど自分の魅せ方をわかっていたようだから……ね」


「それは確かに?」


「やっぱり?僕もはじめの方はいろんなことをサポートしようと思ってたんだけど、最初っから配信アプリとかソフト系のサポートしかできなかったからね」


「まぁ俺の場合は結構特殊ですからね、自分で言うのもなんですけど。自分のやりたいことも明確でしたし」


「そう言ってくれると助かるけど、それで僕らが君をサポートしない理由にはならないからね。ちゃんと僕たちに任せてもらえるように僕たちがしなきゃ」


 柚月は自分に言い聞かせるようにそう言葉にしていた。

 事実今の彼女ではかえって紫音の邪魔をしてしまってもおかしくない。

 そういう点ではしっかり自分のことをわかっているとも言えるのだろう。



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