いつか夢見た自分Ⅱ
『てなわけで俺の自己紹介に戻るわけなんだけど。次は俺の得意なことリストだ!』
そういって男は再度腕を平行に振る。
再度画面には違う半透明の板が出現したが、今回はその大部分が塗りつぶされており、そこの欄が見えないようになっている。
「えっ白紙……」
「絵と歌は何処へ……」
「もしかして……」
『いや違う違う!確かに何も書かれてないけど、隠してんの!まぁ得意なこと、って言ってるけど、実際にはやったことあること、みたいな感じかな?そんなわけで今回はこのワールドに来たってわけよ』
「脈絡はどこに行った……」
「やべぇ全然新人っぽくない流れだ……!!」
「まだ俺のほうが緊張してる」
「どういうわけだってばよ」
『つまりはゲームをしましょうってことだね。実はこのワールドにこれからあるメーターが出現するんだ。一定時間そのメーターは出現し続けるんだけど、このメーターはコメント欄にいるみんなのしたコメントに反応するようになってるんだ。そして、その反応するコメントっていうのが、俺の得意なことに設定してあるから、俺が何してるのかいっぱいコメントしてくれると、どんどんメーターがたまっていくよって感じかな』
すると画面を占領していた半透明な板は鳴りを潜め、男の後ろ側にいくつもの試験管のようなメーターが現れる。
『ちなみに今回特定のコメントに反応するメーターが八つあるということは、俺の得意なことが八つあるということでもあるから、それを見事コメントして見せればメーターがたまっていくわけだね』
「いや、現れ方までおしゃれかよ」
「これ溜まったらどうするの?」
『あぁ、溜まったらっていうより、これからがゲーム要素になるんだ』
「そういえばゲームって言ってたな」
「え、なんや」
『このメーターは五分間だけその特定のコメントだけを溜めていくんだけど、この五分間でできるだけ俺の得意なものを挙げていくんだ。そのときにコメント欄とこのメーターを見て、どのコメントがメーターに反応しているのか推理するんだ。例えばコメント欄がほぼ野球、で埋まってなおかつメーターが溜まり続けていったら、あぁ多分あのメーターは野球を表してるんだなってわかるでしょ?』
「なるほど」
「すげぇ」
「あぁだからメーターの上限が決まってないのか!」
「つまりコメントいっぱいして特技を当ててみろって話か」
『うん、みんなの言っているような感じかな。ちなみに野球とかだったら、野球だったり草野球だったりのコメントなら大丈夫だけど、ベースボールとかだと反映されないから気を付けてね』
「俺らの裁量にかかってると」
「まじでゲームじゃん」
「当てられたら何かあるの?」
「てか八つもあるとぜってぇ難しいのもあるじゃん」
『あ~、当てられたら、やっぱりゲームだから罰ゲームは必要だよね?』
「キタッ」
「草」
「罰ゲームだ!!」
『どうせだから、当てられた特技のうち一つだけ俺が即興でやってみせるってのはどう?全部当てられたらだけどね?』
「いいね!」
「その勝負のった!」
「ていうかどうやって当てられたのかを確認するの?」
『そうそう、みんながコメントして推理する時間は五分間だけど、そのあとにもう五分間とってみんなが俺の特技だと思ったものについてコメントしていってほしいんだ。ちなみにこの二回目の五分間だけど、記録されるのは一アカウントまでに一つだけのコメントだから、みんなの推理で導いた答えでも、もう明らかだなって思ったものばっかりをコメントしちゃうと、八つ目当たりの特技のコメントが全然ないってことになりかねないから気を付けて?ちなみにコメント量の多い単語を上から順に並べていったときに上から八つが俺の特技とあってれば、全問正解ってこと!』
「つまりはあからさまな野球ばっかりかいてたら、生け花とかがランクインしなくなるかもしれないってことか」
「あぁ、そっか!」
「てことは俺たちで空気読みしなきゃいけないのか……!」
「まぁ五分間あるなら初めのほうで出ていないコメントをしてあげればちゃんと出来そうですね」
「マジでゲームじゃん(二度目)」
「何かさせてやるぞ!」
「俄然やる気でてきた」
『まぁわかりにくかったりもしただろうから、これ』
男は再度左手を翻して見せる。
つまりは何かを出現させたということであった。
「ルールブックあるんかい!」
「死ぬほどわかりやすいやんけ!!」
「初めからこっちみせろや!!」
「草」
『えっ、当たりつよくない!?俺新人だよ!?まだみんなからも親しみをこめてシオンとも呼ばれてないよ!?』
「そういえばそうだったっ!!」
「新人のいうことじゃないんだよなぁ」
「カッコイイゾーシオンー」
「初配信から爪痕を残しすぎな件」
『ま、そんなわけで俺のことはシオンって呼んでくれたらうれしいかな。苗字もかっこいいから好きなんだけどね』
「七々扇ってかっこいいもんな」
「よろしく!シオン」
「よろシオン」
「俺も好き!」
『っと、話が脱線しちゃったけど、そろそろ準備も完了したみたいだから、推理パートの五分間始めるよ!』
「よろシオンで草」
「よろシオン天才じゃん」
「挨拶決まったな」
「りょーかーい」
男の見ていないときに男の挨拶が決まった瞬間であった。
そして男がはじめ、と声を出すと後ろに連なるメーターが音を出してどこか存在感を持ち始める。
するとまだ三十秒と立たない間に二つのメーターがものすごいスピードで溜まっていくのが見えた。
『なんでこんなスピードで溜まっているんだ!?』
「いや自分で絵とか歌って言ってたじゃん」
「草」
「バレバレなんだよなぁ」
「朗報、残り六つを当てればいい模様」
「サッカー!」
「野球!」
「柔道!!」
「行けっ、生け花!」
そんなこんなでかなり速いペースで流れるコメントは認識が難しいレベルで速くなっているため、男もなかなか確認しずらそうだった。
視聴者がそんなコメント欄に悪戦苦闘しながら特技を言ったり推理を展開したりしているのだが、それをボーッとみているだけでも芸がない。
そんなことを思ってか男も何かしようとコメントを拾って雑談を繰り広げようとするも、その瞬間にお黙りシオン、と書かれてしまってからはふてくされたように増えていくメーターの隣で体育座りをしたりして五分間を過ごす。
その間に俺のことを心配するかのような声もちらほらと見えたが、そんなことより情報が大事とでもいうように流れが速くなっていくのだからなんとも悲しいものである。
『あれぇ?俺の配信のはずなのに……?なんで俺はこんなところにいるんだっけ……?』
「あシオンが壊れた」
「やべ、」
「弓道!」
「とりあえず、絵、歌、ピアノ、水泳、サッカーあたりまでは確定」
「茶道だぁぁ」
「空手ぇぇぇぇ」
どこかで男を心配するコメントもある中、そんなものなど意に介さないといったように続けている視聴者たちだった。




