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32 思い出させたらダメなんだが


20分程電車に揺られた後、少し歩くと夏祭りの会場に着いた。

人混みに揉まれながら少しずつ進んで行くと、屋台が見えてきた。


かなり大きな祭りなので屋台の列は200m程続いている。


様々な種類の屋台がある中、有咲(ありさ)は胸を躍らせながら(ゆう)の横を歩いている。


「どの屋台から行きましょうか」

「どこでもどーぞ」

「あ、私たこ焼き食べたい!」

「じゃー行くか」


七海(ななみ)が手を挙げて小学生みたいに言ってきたので、たこ焼き屋を探し、列に並ぶ。


「楽しみですね」

「有咲ちゃんも食べるの?」

「はい、毎年食べてるんです」

「毎年ってことはいつもは2人で来てるってこと?」

「はい、お兄さんと仲良く2人で夏祭りデートです」

「優くん?どういうこと?」


七海の笑顔が怖くなった。

そんなこと言われてもなぁ。


「どういうことって言われても…普通に妹と夏祭りに行ってただけなんだけど…」

「ふーん、つまり毎年デートしてたんだ…」

「どうしてそうなる⁉︎」


こうしてイチャイチャ話していると、すぐにすぐに列が無くなって屋台に辿り着くことができた。


「いらっしゃい。何にする?」

「では特製たこ焼きをお願いします」

「あ、俺もそれで。七海はどうする?」

「え…じゃあ私もそれで」

「ありがとーございまーす。1800円でーす」


何とか話を逸らすことに成功した。


(危ねぇ耐えたー)

そんな内心は知らず、七海は財布を取り出してお金を出そうとしている。

優はそれを静止するように手を出す。


「あ、いいよ別にこれぐらい」

「あ…いや…でも…」

「いいからいいから、あ2000円で」


そう言ってスムーズにお金を差し出す。

できる男だ、コイツ。


「ありがとーございましたー」


優が袋を受け取り、2人を連れて人混みから離れて行く。


屋台から少し離れたところでたこ焼きを配る。


「ありがとうございます」

「あ、ありがとう」

「じゃ、いただきます」

「「いただきます」」


熱々のたこ焼きを爪楊枝で刺し、息で冷ましながら食べる。


(oh……)


その息をかける動作を見て少し邪な事を考えてしまう。


そんな自分を律するように頬を叩き、純粋な目で2人を見る。


「ん〜おいひいれふ〜」

「ん!おいしい!」


そこには美味しそうにたこ焼きを頬張る美少女2人が。


というか、全く気にしていなかったが相変わらず滅茶苦茶見られている。

通りかかる人のほとんどがこちらを見てきている。


まあ、それもそうだろう。

絶世の美少女2人と仲良さげに話す男。


人によっては二股してるように見えているかもしれない。


(ま、気にしたら負けか)


結局いつもの事なので気にせず2人とたこ焼きを食べる。


数分後、全員食べ終わり、次の屋台へと向かう。


「次はどこ行く?」

「んーどうしましょうか」

「りんご飴でも食べるか?毎年食ってるだろ?」

「そうですね。では行きましょうか」


こうして兄妹がりんご飴を求めて歩いて行く。

だが、七海は足が進んでいない。


「おーい、いくぞ」

「有咲ちゃんと毎年夏祭りに来て、毎年りんご飴を食べてるんだ」

「えっ?」


思い出されてしまった。


これ、ちょっとマズイ?


「えーっと、だから兄妹として来ているわけで」

「優くん?私、浮気はよくないと思うの。もう怒っちゃった。今夜はいつも以上に愛してもらわないと許さないから」

「いや何言ってんのー⁉︎」


七海の衝撃的な発言に周りの視線は鋭い物に変わったのだった。


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