表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/218

111 絶対に負けたくないんだが


球技大会当日、(ゆう)は最初の試合に出場していた。


団体戦のシングルスに出場し、何とか勝ってチームは勝利を決めた。


その後は少し時間があるのでみんなで女子の観戦をしに行った。


現在は璃々(りり)が試合をしているようで、コート中を走り回っている。


相手は初心者のようなので、璃々は軽く打ってわざと点をあげたりしている。


そんな璃々を見ながら近くの男子がコソコソと何かを言っている。


「(紗倉(さくら)さん、可愛くて優しいなんて最高だよなぁ)」

「(な!俺、告白してみようかな)」

「(お前じゃ無理だろ。まず紗倉さん結構モテるだろうから彼氏いるんじゃね?)」

「(まじかー。俺の紗倉さんがぁ…)」


何を言ってるんだこの人達。


ここにいると謎に気まずいから離れよう。


少し離れたところに行き、璃々の試合を観戦した。


試合はスムーズに終わり、次は七海(ななみ)の試合が始まる。


「あ、如月(きさらぎ)くん。見に来てくれたんだ」


ベンチに戻ってきたら璃々が声をかけてきた。


気づけばベンチの前で観戦していたようで、璃々はこちらに身を乗り出して話してくる。


「七海は勝てそうか?」

「うん。多分…ね…」

「多分ってことは…相手はもしかしてテニス部?」

「うん。七海ちゃんなら大丈夫だと思うけど、彼女はかなり強いよ」

「そうなのか。ふーん」


そこで試合が始まり、相手のサーブが来る。


最初から強烈なサーバが来るが、それを楽々と返している。


(やるな七海…。まさかこんなに上手いとはな…)


優は一瞬で垣間見得た七海の実力に驚きを隠しきれずにいる。


それを見て璃々がドヤ顔で胸を張っている。


「ふふん、私のライバルは強いでしょ」

「そうだな。想像より強くて驚いてるよ」

「ま、七海ちゃんの本気はこんなもんじゃないけどね!」


璃々のドヤ度は増し、鼻の位置がますます高くなっている。


それに若干ジト目を向けた後、七海の方に目を戻す。


七海は相手選手を圧倒していて、向こう側の人は殆どが諦めている。


結局そのまま七海は圧勝し、クラスは勝利を納めた。


試合が終わり、七海はテニスコートから出てくる。


入り口の近くに居たのもあって、七海はすぐにこちらの存在に気づいた。


「あ、優くん。私の試合みてた?」

「ああ。強いな七海。正直驚いたよ」


そう言って褒め称えると、七海は自身ありげに胸に拳を当てる。


「そうでしょ〜。私、優くんと離れ離れになってからたくさん頑張ったんだよ?君を1人ぼっちにしないために」

「ん?どういうことだ?」


ちょっと理解が及ばず、腑抜けた声が出てしまう。


七海は胸に当てた拳を強く握り、少し悲しそうに語り始める。


「優くん、昔…強すぎてずっと1人だったじゃない?だから…私が対等な存在になりたいなって思ってて…。それでいっぱい頑張ったんだよ?」


七海のどこか儚げな目を見て、胸の奥から熱が伝わってくるのを感じた。


「私は…君と同じぐらい…強くなれてたかな…?」


不安そうな目で見てきて、答えに困ってしまう。


ただそんな目をされては素直に言わないわけにはいかないので、今思った事を口にする。


「どうだろうな…。俺もしばらく本気でしてないからな…」

「じゃあ…今日、しない?勝負」

「ヴッ…」


ここで過去の記憶が蘇り、口が開かなくなってしまう。


その状態から無理やり出した悶えるような声で、今どのような事を考えているのか察したらしい七海が途端に笑顔を作る。


「やっぱりやめておこっか…。やっぱり難しいよね…」


その悲しみと後悔が混ざった声を聞いて、優は心の中の何かが切れたような気がした。


(七海にこんな事を言わせてしまうなんて…ったく、何が守るだ。結局、未熟なクソ野郎なままじゃねぇか…)


気づけばそのような言葉から考えてしまっていて、七海にまた不安そうな顔をさせてしまう。


(こんな過去も打ち破れないようなヤツが七海のそばにいるだなんて…。笑わせてくれるな…)


だが、七海のそばから離れたくはない。


ずっと近くで守っていきたい。


そんな気持ちはまだ心の中で健在に生きており、優は両頬をパチンと叩いて自分の心を奮い立たせる。


(何やってんだ俺は…。七海は俺の為に努力してくれてたんだぞ…?なら今すべきは、その努力に報いることだろ!)


一瞬空を見て気合いを入れ直し、七海に目を向けて重い口を開く。


「いや、やろう。本気で」

「え⁉︎いいの⁉︎」

「ああ。七海の努力、全部俺に見せてくれ」

「うん!!」


七海の暗かった顔は明るくなり、優は安心感と共に闘志を燃やした。


「やるからには負けないぞ。申し訳ないが、3年間の努力を全部踏み潰す気でいかせてもらう」

「私、そんなに弱くないよ。優くんこそ、ブランクがあって勝てるほど甘くないよ?君の才能を全て吹き飛ばすぐらいの気持ちでいくからね」


この時、この2人の周りに炎が見え、周りの生徒は暑くて離れて行ってしまった。


その後も2人の近くは暑くなり、普通に先生が呼び出されるぐらいの事態になったりしたらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ