7-18. 根
身体が岩で出来た団子虫、ロック・ピルバグと初めて遭遇した後、僕達は迷宮の2層目の探索を続けていた。
時々ロック・ピルバグが現れたが、一度対処法が分かればそこまで怖くは無い。
ダンと盾本の盾術戦士コンビが難なく倒していってくれた。
あぁ、だけど通路上に岩球が4つ並んでたり、見つけた時には猛スピードで転がって来ていた時にはヒヤヒヤしたな。
「あ、有りました! 下り階段ですよ!」
「よっしゃ! やったぜ!」
「ぅおおおぉぉぉ!」
「ヤッター!」
合宿2日目の夕方、僕達は3層目へと繋がる階段を見つけた。
「ついに3層目だね、計介くん!」
「おぅ」
「しかし、2層目の探索は結構時間が掛かったな。現在時刻はもう夜7時丁度だ」
懐中時計を見つつ話す神谷。
まぁ、洞窟の中じゃ朝も夜も関係無いけどね。
だからといって生活リズムを変えるのも面倒だけど。
「朝の8時17分から探索を開始したので、休憩含め約11時間か。昨日は確か探索時間8時間だったから、2層目は少し時間が掛かったな」
神谷がブツブツ言ってるなーって思ったら、なんか考え事をしてた。
ちなみに、『17分』ってのは盾本が寝坊した分の時間だ。
……思えば、盾本が寝坊したアレもまだ今朝の出来事か。
昨日か一昨日くらいの出来事に感じる。
1日がとても長く感じるよ。
「じゃあ神谷、今日もココでお終いにする?」
「そうだな、数原君。丁度キリが良いし、ここで一泊しよう。今朝と同様、明朝8時に3層目へと出発しようか」
「オッケー。皆もそれで良い?」
「「「はい!」」」
「おぅ!」
「うん!」
「分かった」
全員、一斉に頷く。
「盾本、寝坊しないようにね」
「クソッ、分かったよ。計介くんにそんな事言われるなんて……」
「寝坊しないようにね」
「分かったよ! くっ、屈辱だ……」
フフッ、僕はこの世界に来て生活リズムがだいぶ整ったのだよ。
日本に居た頃のネボスケ計介とは違うからな。
ちなみに、盾本はこの後もブツブツなんか言ってたけど気にしない事にした。
そんな感じで、合宿2日目の夜も階段の近くで野宿になった。
テントや寝袋を用意し、輪になって夕食を食べ、談笑し、見張り番ローテーションを組み、寝る支度を済ませてオヤスミナサイだ。
翌朝、合宿3日目。
8時14分。
「おはよう、皆」
「「「「おはよう」」」」
「おはようございます」
「おっはよー!」
「うっす」
出発前に、一応グループのリーダー(?)である僕が全員居るかを確認する。
「よし、やっと全員揃ったな」
「……すみませんでした、計介くん」
「おぅ。明日こそは集合時間守ってくれよ、盾本」
「…………はい」
まぁ、盾本は2日連続でお寝坊してしまった。
どうしたんだろうね。高校では殆ど遅刻しなかったのに。
というか、うちのクラスで遅刻したり遅刻ギリギリに到着するのは僕ぐらいだったけど。
きっと疲れでも溜まってるんだろう。
「まぁいいや。という事で、3層目に行くぞ。神谷、シン、マッピングの用意は大丈夫?」
「応!」
「任せて下さい!」
「可合、コース、ケーブバット対策は良い?」
「うん!」
「大丈夫ー!」
「盾術戦士組、団子虫対策は万全か?」
「おう!」
「任せて、計介くん!」
よし、全員オッケーだな。
「……数原、俺には何か無えのか?」
「あ。あぁ……いや、忘れて無いよ、勿論」
やべっ、強羅の事を完全に忘れてた。
強羅にジト目で見下ろされる。
……怖っ。
「……えと、あー…………そうだな。よし、強羅は魔術師さん達のSPをやってくれ」
「え、SP? 護衛っつう事か。分かった」
誤魔化してみたけど、強羅を忘れてた事は多分バレてんだろう。
済まんな強羅。
よし。気を取り直して行こうか。
「全員準備オッケーだな。それじゃあ……出発!」
「「「おぅ!」」」
「「「「はい!」」」」
僕の掛け声で、僕達8人は3層目へと向かった。
階段を下りつつ考える。
さて、3層目に突入だ。ココがこの迷宮の折り返し地点だな。
3層目、一体どんな所なんだろうか?
地下にも関わらず陽の当たる草原が広がっているとか、そんなロマンを迷宮に求めちゃいけないか。
……いやいや、2層目は1層目と同じだった。
ってことは3層目も2層目と同じなんだろうな。
「3層目、どんな所なんだろうー?」
そんな事を考えていると、隣でコースがそんな事を言う。
どうやらコースも僕と同じ事を考えていたようだ。
「どうせ2層目と同じだろ」
「えー、ダンつまんなーい」
「コース、お前迷宮に何を求めてんだよ。迷宮なんて、所詮は魔力が溜まっただけの洞穴だぞ」
「そうだけどさー……もっと、こうー、階段を下りたらお花畑がー! みたいな?」
おぉ……
コースの想像も中々やりますな。
「…………そんな事、ある訳無えだろ。一体何を考えてるんだ? お前の頭がお花畑になっちまったか?」
えぇ!?
ダン、そこまで言うかよ!?
確かに現実的では無いけどさ……コースが可哀想だよ!
「えー、残念……。面白そうなのになー」
そう言って、何事も無く階段を下り続けるコース。
……あそこまで馬鹿にされても、タフだなお前。
コースのメンタルは本当にどうかしてるのだろうか。
「君達。階段の先が見えてきたぞ!」
そんな事をやっていると、先頭を歩く神谷がそう言った。
お、ついに3層目だ。
皆の目つきが変わり、雰囲気も変わるのが分かる。
メンバーのやる気が漲ってくるのも感じる。
「お花畑ー♪」
……空気が少しピリピリしてきたと言うのに、コイツだけはまだ想像の世界を行っているのかよ。
そろそろ現実に戻って来い、コース。
まぁいいや。コースは初めて会った時からこんな奴だった。
放っとこう。
さて、徐々に階段の終わりが近づき、僕もやる気が出てきた。
「よし、行きますか!」
そう言ってパンと手を一度叩き、気を引き締めた。
さぁ、何でも掛かって来い!
「さて、3層目に着いたんだが……」
全員が階段を下りきり、3層目の通路に足を踏み入れた。
のだが、皆そこから動かない。
「なんだオメェ!?」
「これは私達、歓迎されているのでしょうか……?」
何故なら、階段を下りて直ぐの所に『謎の生物』が居たからだ。
「なんだあの気味悪い奴は!?」
「あれって……木の根っこかな?」
ソイツは、木の根で出来た、棒人間よろしく手と足、胴体を備えた人型の人形で。
「なにアレー!? 面白い動き!」
「変なダンス……なんだろう?」
「ちょっ、可合、コース! 俺の後ろに下がってろ!」
ソイツは、手足や身体をグネグネとうねらせ、まるで何かの踊りでもしているかのようで。
「せ、先生。アレって一体……」
「数原君、君はこの生物についても知っているのか?」
「あぁ。魔物図鑑で見覚えがある」
ソイツは————
「アイツの名前は『ルート・バインダー』。アイツも厄介な魔物だ」




