7-10. 大所帯
「勇者諸君の健闘を祈る。では、合宿開始!」
プロポートさんの掛け声で、ついに合宿が始まった。
この合宿では、一緒に最下層へと向かうメンバーは自由だ。
さて、誰とメンバーを組んで行こうか。
まず学生の3人は勿論、一緒に行くよな。
あとはー……思いつかない。
最悪、シン・コース・ダンと僕っていう普段通りの4人組でも迷宮を踏破出来なくは無いと思うんだけど。
まぁ、それでもいっか。
ふと周囲を見回すと、そこかしこでグループが作られ始めている。
よし、僕も学生達を呼び集めてさっさとグループを作らなければ。
ボッチは嫌だ。
「シン、コース、ダン! 居るかー?」
「はい! 今行きます!」
遠くからシンの返事が聞こえた。
よしよし。これでボッチは回避できるぞ。
その数秒後、僕の方に向かって走って来た。
神谷が。
……え、なんで神谷?
僕はシンを呼んだはずなのに。
「数原君、私はこのシン君と共に行きたい! いや、共に行かせてくれないか!?」
そして僕の所に着くや否や、凄い勢いでそう話し掛けてくる神谷。
どうしたどうした。
「私は勿論先生と一緒に行きますが、このカミヤさんも一緒で大丈夫でしょうか?」
「え、うん、勿論良いよ。大歓迎だけど……」
なぜ神谷がこんなにもシンを気に入ったんだ?
凄く気になる。
「にしても、なんで神谷はシンと一緒に行きたいんだ?」
「あ、あぁ、済まない。説明を忘れていたな。……私は、シン君という新たな『仲間』を見つけた。私と同じ『剣術戦士』の職を授かった、いわゆる同士だ」
確かに。
そういや、神谷は小さい頃から剣道をやってたんだよな。確か剣道三段? とか言ってたっけ。
……まぁ三段が凄いのかどうかは分からないけど、神谷の事だからきっと凄いんだろう。
「しかし、私は日本刀、対してシン君は西洋剣。同じ職なれど、得物は異なる。シン君も私も、きっとお互いに剣術戦士として学ぶ事があるはずだ! だから私はシン君と共に迷宮を進み、経験を積みたい! 共に行かせてくれないか、数原君っ!」
「…………」
……ヤバい。
神谷の熱血がヤバい。
また暴走してるよ――――
「頼む、数原君ッ!」
「……おぅ、分かった分かった」
勢いに押され、ついつい了承しちゃった。
「……まぁ、神谷を断る理由なんて無いし、人数は多い方が良いしな。こちらこそ宜しく」
「ありがとう数原君っ! 精一杯やらせてもらうよ!」
「お、おぅ」
「か、数原くん。私も良いかな……?」
「私、ミユちゃんと一緒に行きたーい!」
っと。
なんとか神谷の暴走を止められたと思ったら、間髪置かずコースがやって来た。
可合つきで。
……ってか、妙に可合とコースの距離感が近い。
まるでこの2人が初対面とは思えないレベルだ。
一体何があったんだろう?
「先生のグループにミユちゃんも入れて良いよね?」
「あぁ。勿論良いよ。……ってか可合、いつの間にそんなコースと仲良くなったんだ?」
「あ、えーと……さっき初めてコースちゃんと出会って、色々お喋りしてたら仲良くなっちゃって」
……ガールズトークってのはどの世界でも共通なんでしょうかね?
「で、コースちゃんが『私たちのグループは男ばっかりで寂しいから、ミユちゃん来ない?』って言って私を誘って————
「あぁーっ!!! それ言っちゃダメー!!!」
「あっ! 内緒だった!」
……口の軽い可合、どうやら早速ナイショの約束を破ったそうです。
「なんで言っちゃうのーっ! 恥ずかしいよーっ……」
「コースちゃん、ゴメンッ!」
「「……」」
口止めを早々に破られ、プンプン怒るコース。
口止めを早々に破り、ペコペコ頭を下げる可合。
そして思わぬコースの本音を聞いてしまい、黙り込む僕とシン。
……まさか、そんな悩みを抱えていたとは。
ゴメンなコース、いつも男達ばっかりで。
「……数原君、済まない。うちの可合がまた暴露してしまったようで」
「ま、まぁ…………可合の口が軽いの知ってたから大丈夫」
そういや召喚後の王城を出る前夜も、可合は『勇者召喚』に関する重要事項を僕に垂れ流してくれてたんだよな。
僕からすりゃ、可合の口の軽さは今更なのだ。
「え、えぇ……ゴメンナサイ」
「うん……でも、もう過ぎた事だし仕方ないっかー」
そしてコースの気持ちの切り替えも異常に早い。
「ごめんね、コースちゃん」
「いいよ、ミユちゃん。これからもよろしくねー!」
「うん! こちらこそ!」
あー、良かった良かった。
コースと可合の魔術師コンビは何とか迷宮潜入前に仲直りしてくれたようだ。
……だけどなんだか疲れちゃったな。
まだ迷宮に入ってもいないのに————
「おっ、居た居た。神谷、可合、一緒に行こうぜ」
何気なくこちらに駆け寄って来る強羅。
どうやら神谷と可合を探してたみたいだ。
このトリオは本当にいつも一緒だもんな。
「あぁ、拳児。私はこの数原君のグループにお邪魔することにしたんだ」
「拳児くん、私もそうしたんだ」
「ほぅ、神谷も可合も……面白そうじゃねえか。数原、俺も良いか?」
あー、はいはい。
神谷と可合がここに居るのだ。強羅が入るのは運命みたいなモンだろう。
「良いよ。宜しくな」
「おぅ! こちらこそ宜しく!」
「先生、済まねえ、遅くなった」
そして、最後にやっとダンが来た。
「おぅ、遅かったなダン。何かあったのか?」
「いや、実は俺、このタテモトさんって人と仲良くなっちまってな……」
……お前もかよ!
なんだよ学生達。
3人とも、うちの同級生と仲良くなるの早過ぎじゃない?
「どうも、計介くん。久しぶり。元気で良かった」
「こちらこそお久し振りだね、盾本。お陰様でな」
そして彼は盾本守。
見た目も成績も普通で、それなりに人付き合いもある優しい男の子。
クラスにはこういう子が必ず1人や2人は居るよね、って感じの子だ。
まぁ僕とは特に接点も無いし、別段仲が良いってわけじゃない。のだが、何故か彼とは席替えをしてもしても毎回ご近所さんなんだよな。
そんな訳で時々話す機会があり、気付いたらそれなりに仲良くなっていた。
……ってか、このタイミングで僕達の所に盾本が来るってことは。
まさか盾本も……?
「ダンさんの職が俺と同じ『盾術戦士』で、しかも中々な盾の使い手だって聞いたんだ。合宿を通して『盾術』について深く教えて貰いたいと思ってね。って事で、俺も計介くんのグループに参加させてもらっても良いかな?」
……はいはい、もう良いよ。
一緒に行こう。
ここまで人数が増えれば、盾本が入ろうが入るまいが変わらない。
「おぅ。宜しくね」
「ありがとう! よろしくね!」
……フゥ、なんだかとんでもない大所帯になってしまったな。
僕の周囲には、グループのメンバーになったヤツらが集まっている。
シン、コース、ダン。
神谷、可合、強羅。
それと盾本、そして僕。
総勢8名。
結構な大所帯だ。
合宿参加者が18人(【加法術Ⅲ】利用:8+6+4=18)だったから…………。
僕達のグループだけで参加者全体の44%を占めてる(割合の計算利用: 8 ÷ 18 × 100 = 44 )。
参加者の約半分がここに集まってしまった。
周りを見回すと、他のグループも既に完成しているようだ。
他のグループは4人組や3人組だ。
……うちのグループだけ異常にデカくなっちゃったけど、まぁ大丈夫だろ。多分。
そして既に洞窟へと足を踏み入れているグループもある。
さて、じゃあ僕らも洞窟に入るか。
いつまでここに居たって、僕達の合宿は始まらないしな。
¬¬¬¬¬¬¬¬¬¬
「これで勇者共は全員迷宮の中だな。フッフッフ……」
迷宮の入口から少し離れた所にある草むら。
その草むらから、勇者と戦士、魔術師達の全員が迷宮に入っていくのを見届けてある者が立ち上がる。
骸骨の仮面を被り、黒のローブを羽織り、フードを深く被った者。
「魔王様直々に賜ったウッドディアーの軍勢を残らず殺し、また溶かしてくれたそのお返し、是非してやらんとなぁ! ハッハッハ……ハーッハッハッハ……」
彼を残して誰もいなくなった草原には、風の音と彼の高笑いが響くだけだった。
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