6-1. 狼狩
「いやー、今日もウルフ狩れましたね!」
「これでまたガッポガッポだねー!」
「そうだな。まぁ、僕はダンの後ろに隠れてるだけなんだけど」
「気にすんな、先生。得手不得手ってヤツだろ」
「先生のステータス加算が無かったら、私達もこんな楽には狩れませんから」
「あぁー……そう言ってくれると助かるよ……」
僕が【乗法術Ⅰ】と【除法術Ⅰ】を習得した、あの日から1週間が経った。
今の会話からお分かりの通り、最近の僕らは遂にカーキウルフも狩り始めたのだ。
お陰でコースが言う通りガッポガッポだ。
僕の貯金もだいぶ溜まり、今では金貨6枚くらいまでは行ったかな。
いや、最初の方は今まで通り王都東の草原でラットとチキンを狩りまくっていたんだけどね。
新しい魔法を習得したお陰で、僕らの狩りは最早狩りではなくなり、蹂躙と化してしまっていた。
そんな時にコースが放った一言。
「つまんなーい。もっと強いの狩ろうよー!」
この日から、僕らの狩場はさらに遠くに移った。
王都周りの丈の低い草原とはまるっきり違い、丈が膝上まである草ボウボウの所だ。
……僕からすれば中々のトラウマが蘇る場所なんだが。
「先生には【乗法術Ⅰ】と【除法術Ⅰ】があるじゃねえか。先生も強くなってんだぞ」
こうダンから諭されてしまった。
……ってな訳で、なんとか僕は草ボウボウのフィールドに足を踏み入れた。
そしてダンの後ろに隠れつつバフ役に徹していた。
カッコ悪い? 知りませんそんな事。
一応、僕数学者なので。
戦うのは戦士なり魔術師なり、戦闘職に任せれば良いのだ。
そんな感じで、現在に至る。
「ウルフの倒し方も調べておいて良かったな。まさかこんなに役立つとは」
「そうですね。あの日の調べ学習で、ダンの『魔物の仕留め方』を読んでいなければ、普通あんな方法しませんからね」
「だろ? だから『勉強』ってのも大事なんだ。『知識』も『強さ』の一つだ」
高校で散々アホやってた僕がこんな事を言うのもなんだけど。
「確かにー!」
「身を以て『知識』の重要さを感じたな」
よしよし。調べ学習の効果も少しずつ現れているようだな。
学生達は着々と成長している。良かった良かった。
さて、今ダンとシンが話していた『カーキウルフの倒し方』についてだが。
その方法は割と単純で、『石ころや土を適当に投げて歩き回る』だけだ。
土じゃなく、系統魔法の弾でも良いらしい。とにかく投げれれば良い。
こんな単純な方法が有効なのは、カーキウルフの視力によるためである。
犬の眼は近視かつ遠視で、近い物と遠い物はハッキリ見る事ができる。しかし、近くも遠くもない距離の物はボンヤリとしか見えないようだ。
カーキウルフについてもこれは同じようで。
草むらの中に伏せている際、『もう少し人間共が近づいて来れば行けるワン』っという間合いでは、僕らの姿はボンヤリとしか見えてないらしい。
そんな間合いで僕らが石ころなり土塊なりを投げたとしよう。
その時にカーキウルフの眼に映るのは、ボンヤリとした謎の物体が迫ってくる様子。
『なんか飛んで来たワン! まさかバレたワン!?』
ウルフ達はそう誤解し、自ら草むらから飛び出て来てしまうようだ。
さて、出てきてしまったウルフ達。
最大の切札、奇襲を失ってしまったウルフ達。
こうなってしまえば、カーキウルフは最早ちょい強めの犬に成り下がってしまう。
囲まれないように、常に包囲網から外れるように立ち回れば特に怖いものは無い。って『魔物の仕留め方』に書いてあった。
奇襲の名手が潜む草ボウボウの地雷原。土塊を投げ当てれば爆発するかの如く飛び出すカーキウルフ。
名付けて、『対カーキウルフ・地雷発掘作戦』。
これのお陰で僕らはウルフを狩りまくりだ。
ウルフの買取金額は一頭銀貨8枚。
カーキウルフは大体5頭くらいで群れを為しているので、全滅させれば銀貨40枚だな(暗算に【乗法術Ⅰ】使用)。
これを4人で分けても一人当たり銀貨10枚だ(暗算に【除法術Ⅰ】使用)。
お陰様で皆ジャンジャン稼がせてもらってます。
そんな事を考えつつ、東街道を王都に向かって歩く。
今の時刻は昼過ぎ。
街道の往来は昼のピークだ。
朝イチで港町から王都へと魚を運んだ魚介商人の馬車が、空っぽでのんびり帰っていたり。
輸客商人のデカい乗合馬車が、沢山の人を乗せて王都へ向かったり。
宝石商人の馬車が、冒険者の護衛を連れて港町へと向かったり。
草原での狩りを終え、街道へと戻ってくる冒険者のグループも居るな。
……いやー、なんだか平和だね。
本当に魔王に襲われるのだろうかって疑ってしまうよ。
しかし、僕はこうやって日本から魔王を倒すために勇者として召喚されたのだ。
だからこそ、この人々を守るためにもっと強くならなきゃいかんな。
そんな事を考えつつ、僕とシン、コース、ダンの4人は王都へとのんびり帰って行った。




