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4-5. 学生

「俺らを弟子にとって欲しいんだ」



……え、どうしてこうなったの!?

僕が弟子を取る!? 無理だ無理!


「いやいやいやいや、何で僕!? もっと腕の良い冒険者なら幾らでも居るでしょ」

「実力が全てじゃないですし」

「あ、あと、僕まだ冒険者始めて2週間だよ!? 経験も無いし」

「俺らだって経験も有って無いようなモンだ。積めば良い」

「……そ、それに僕の(ジョブ)数学者だよ! 非戦闘職だけどいいの本当に!?」

「問題ナシだよー!」

「…………ま、マジか」


言葉に詰まる。シン、ダン、コースの言葉に全く言い返せない。


「っていうか、私達は実力経験(ジョブ)その他諸々なんてどうでもよくて、(マッ)……()()()()が良いのー!」

「……ぅっ」


そしてコースの駄目押しが決まった。


「という事で……」

「「「弟子にして下さい!!」」」


一斉に頭を下げる3人。

勢いで追い詰められた。完全に流れを持って行かれた。


しかし、こっちとしてもプライドはある。命の恩人を僕の下に置くとか、そう簡単にやる訳にはいかないんだよ。


「……皆の気持ちはよーく分かった」

「という事は、弟子にしてくれるんですね!」


シン、早まり過ぎだ。続きを聞いてくれ。


「いや、そういう訳じゃない。僕の命を救ってくれた恩人を、僕より下に置く訳にはいかないじゃないか」

「そうか? 俺らは全く気にしないが」

「そんな礼儀知らずな事出来ないよ。しかもさっきのウルフの襲撃で分かったと思うけど、実力も経験も無い。せめて僕と同等の関係に————

「それじゃダメなんです!」


なんでだよ。


「私達は計介さんが経験も少ない事も、実力があまり無い事も知ってます。けれど、弟子入りしたいって思った理由は……()()()()がカッコいいって思ったからです」

「狩りの様子を見ると、グルグル回ったり、謎の呪文を唱えたり、全身血塗れだったり。だけど……獲物はいつでも全部高品質で」

「酷ぇ渾名付けられても、変な踊りしてでも、そのスタイルを貫き通す。形振り構わず生きていく計介の姿がカッコいいって思っちまったんだ」

「どうか、その精神……私達に教えて下さいっ!」



……マジか。


凄くいい話に聞こえるけれど、周りからそんな風に見られてたのか。

酷ぇ渾名とか、変な踊りとか、自覚はしてたけど改めて言われるとショックだ。

だが落ち込んでも居られない。

彼らの真意は分かった。その気持ちには真っ直ぐに応えないとな。

あと『出来る事ならなんでもやる』って言っちゃったし。


ハァ……まぁ、仕方ないか。



「……分かった、じゃあこうしよう。弟子ってのもちょっと違う。だから、『学生』にしよう。これで良いかい?」

「「「勿論です!」」」


あー、良かった。

咄嗟に思いついた『学生』ってワードを出してしまったが、結果オーライかな。

弟子、って言うよりも学生、って言った方が上下差を感じないからな。

飽くまで僕の主観だけど。


「えーと、じゃあ計介さんの事は何と呼べば良いでしょう?」

「それは普通に名前で呼んでくれれば————

「あ、狂科学者マッドサイエンティストだから、『先生』とかで良いんじゃない!?」

「え!?」


お、おいコース! 何てこと言ってんだ!

そんな烏滸がましい肩書き、頂けないぞ!

まぁ、学生と先生っていう関係も悪くないかなっとも思ってしまったけどさ。


「お、それ良いな!」


ダンも乗るんじゃない!


「よし」

「「「先生、よろしくお願いします!」」」


結局流れに乗せられてしまった。

なんという連携技だよ。

……もういいや。ここまでやられちゃ、変更するのも面倒だ。



「…………こちらこそよろしくお願いします」






はい、という訳でもう疲れてヘトヘトなので、王都に戻ることにした。

学生さんの3人組を連れて。


なんとか街道に辿り着き、現在は雑談を交わしつつ王都に向かって歩いている所だ。


あ、ちなみに倒したウルフ達については血抜きをして、全部3人に渡しておいた。

ウルフの血抜き方法は、ラットと同様頭を下にして首元を切るだけだ。


いい土産が出来たようで、喜んでいたな。



「そういえば、3人はとても仲が良いけど、兄弟か何かか?」

「いえ、僕らは幼馴染です」

「王都からずっと北にある、トリグ村っていう所から上京してきたのー!」

「一人前の冒険者になる為の修行にな」


ふーん、そうだったのか。



聞いてみれば、トリグ村ってのは王都からずっと北にある、山に囲まれた小さな集落のようだ。商人もあまり来ないので、村では基本自給自足の生活が求められている。


そんな村には、15歳になると村を出て修行し、狩猟を学んでくるという習わしがあるようだ。

険しい山々の中ではいきなり初心者が狩りを覚えるのは難しい。なので、都会に慣れるという名目も兼ねて王都で生活しつつ、そこで初心者として狩猟を学ぶのだそうだ。


王都周辺の平原で狩りの基本を覚えたら、拠点を王都から北の町に移し、起伏のある土地での狩りを覚える。慣れてきたら、また北の町に拠点を移して徐々に起伏の大きくなる土地での狩りに慣れる。これを繰り返し、1年から2年掛けて山での狩りをマスターして故郷へ戻るというのが修行の流れだ。


ちなみに狩猟を学ぶ方法としては、1人の師匠にずっと付いて行ったり、それぞれの拠点で師匠を見つけたり、また独学で覚えたりと結構自由らしい。


で、故郷を離れて王都で2ヶ月経った頃。彼らは僕の情報を聞きつけ、僕に弟子入りしたいと決めたそうな。


えー、ちょっとこの話を聞くと先生役って結構大変じゃないすか? 面倒臭そうなんだが……。

ってか、ご指名の先生は非戦闘職の数学者なんですが。それで良いのか、本当に。


まぁ、僕としても断ろうとは思っていない。

相手はなんだかんだで命の恩人だし、この話が嘘だとは思えない。

まぁいい、受けてしまった仕方ない。


僕流の狩り、彼らが満足するまで教授してやらぁ。



特に教える事無いけど。

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『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
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『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
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