8-7. 実力Ⅱ
さて、怪我人達はなんとか大丈夫そうだ。
可合とコレレさんに任せよう。
救護スペースから振り返り、無数の騎士と戦士・魔術師・勇者達の方を眺める。
「へー……皆頑張ってんな」
戦況はこちらの方がだいぶ優勢のようで、包囲の輪は結構大きくなっていた。
相変わらず敵の姿は皆セットに変化したままであり、その数も減った様子を見せないが、それでも皆頑張ってくれている。
「【強斬Ⅷ】!!……【強突Ⅵ】!!」
お、神谷が[日本刀]を振って無双してる。
流石剣道部員、声が良く響く。少しうるさいくらいだが、逆に奮い立たされるような掛け声だね。
「ゥオラァッ!」
その隣で、強羅が[メリケンサック]で騎士をボコボコに殴り倒している。
右腕ストレートで一発、即落馬だ。
……鎧の上から殴り倒してるけど、痛くないのかな?
「【硬叩Ⅱ】ッ!」
カンッ!
「今だ、水沢さん!」
「ええ! 【水弾Ⅲ】!」
盾本が[鍋の蓋]を突き出し、騎士の槍を弾き飛ばす。
その隙を狙い、盾本の後ろに隠れてた水沢が反撃。
2人ペアで攻撃に参加している。
防御の弱い水沢と攻撃が弱い盾本がお互いをカバーしあってるのな。
「こんなバットの使い方はしたくないっスけど……!」
ボキッ!
ボキッ!
その近くでは、長田が[金属バット]を振り回している。
ウッドディアーの前脚をバットで振り抜き、前脚をあらぬ方向に折り曲げる。
そんな長田が通った後には、痛みに苦しむウッドディアーと落馬して地に転がる変化セットが並ぶばかりだ。
「【火線Ⅸ】!」
「【土弾Ⅱ】ぉー」
「もう、長田くんったら……」
「すごい数だねー」
そんな長田の跡を処理して回る火村と草津。
赤く燃えるレーザーと勢い良く発射された土塊で、地に倒れた魔物に止めを刺して回る。
この2人、本当にいつも一緒にいるのな。
……っていうか、火村のスキルレベル高くない?
既にⅨですか。
さすが魔女やってるだけの事はあるな。
「…………」
その少し先で黙々と[斧]を振るっているのは森だ。
横に斧を薙ぎ、縦に斧を振り落とし、来る敵も来る敵もどんどん一振りで切り伏せていっている。
無言で騎士を倒して回る大男、敵からしてみれば森が一番怖いんじゃない?
「ヨッシャー、3騎纏めて一丁上がりだぜ!」
「おぉ、芳川やるじゃねえか! カッケーな!」
例のクソ共、芳川と斉藤も頑張ってるようだ。
『罠術戦士』の芳川が仕掛けた網のようなものが作動し、騎馬たちの動きを封じる。
「さーてお前達、少し眠っててくれよー」
そう言って斉藤が網越しに[スタンガン]で騎士達を気絶。
「さて、後はコイツらを煮るなり焼くなりだな」
「マジ楽でいいわ」
「それな」
「「ハハハ……」」
なんかコイツら、無駄口が多い気がするけど……。
まぁ、サボってないだけ良いかな。
「よーし、行くよぉ!」
ふと、耳にそんな声が届く。
森の右隣でそう意気込んでいるのは呼川だ。
「それなら【魔物召喚Ⅱ】・ゴースト!」
「……♪」
呼川がそう唱えると、彼女の頭上に魔法陣が現れ、そこから半透明な何かが出てきた。
プワプワ動いており、心なしか嬉しそうな感じに見える。
すると突然、呼川が熊のぬいぐるみを投げ上げる。
「それじゃあクマちゃん、よろしくね!」
「……!!」
半透明の何かは飛んで来た熊に向かって入り込んだ。
熊のぬいぐるみは両手両足を器用に動かし、着地。
「……ガアアァァァァッ!!!」
「いけ、クマちゃん! やっちゃってぇ!」
そして、熊のぬいぐるみは戦場へと駆け出した。
……へー、これが『召喚魔術師』の力か。
呼川が言ってた『サモン・モンスター』って響き、良いよね!
日本でもそういう系のラノベは読んでたけど、憧れちゃうよ。
「【従魔術Ⅱ】!」
パシンッ!
パシンッ!
な、何の音だ!?
その音の方に振り向くと。
「さぁ、キミたち! ボクたちの勝利のためにたっぷり働いてくれよ! ハーハハハハハハハハハハハハハハ!」
飼塚がそう叫び、鞭をビシバシ2騎の騎士に打ち付けている。
……飼塚の目がイッてしまってるんですが。
笑い方もヤバいし。
どうした飼塚。
するとその直後、鞭を打ち付けられていた騎士達が動き始める。
味方であるはずの、騎士達の方に向かって。
「そうそう、イイねーイイねー! 騎士が騎士を攻撃する、相討ち! 面白いねー! ハーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
鞭打ちされた騎士が騎士と戦い、それを眺めるヤバい目でヤバい笑い方の飼塚。
これじゃあまるで悪役だ。
……あれ、飼塚、お前こんな奴だったっけ?
いつもの性格とはかけ離れ過ぎていて、僕の中で彼に対するイメージが崩れちゃいそうだ。
ま、まぁ、これが【従魔魔法】か。
飼塚の豹変具合はちょっと僕には刺激が強かったが、文字通り魔物を従えるっている魔法なのかな。
面白いね。
同級生達も皆、頑張ってんな。
今までの鍛錬や、今回の合宿で着けた実力が発揮できてるようだ。
そんな中、僕もずっと休憩してる訳にはいかないよな。
よし、休憩終わりっ! 僕も何か頑張りますか!




