8-5. 参戦
物凄い勢いで騎士を倒していった戦士・魔術師達だったが、集中が切れてきたからだろうか。
立て続けに戦士と魔術師の2人が怪我をした。
それを見て動揺したからか、溜まった疲労からか、はたまた人数が減ったからか、戦士達の攻勢が緩む。
騎士達の攻撃を受け、捌き、躱すの防戦一方。
徐々に包囲網が再び狭くなってくる。
「クッ……」
「このままじゃマズいな……」
確実に頭数を減らしてはいるものの、騎士達は次から次へと後ろから現れ、倒せど倒せどキリが無い。
僕達を囲んで戦う戦士・魔術師達の間から見えるのは、未だに無数の変化セットの騎士達だけだ。
「団長! 何か策は無いんですか?!」
「団長さん!」
「…………」
戦士や魔術師がそうプロポートさんに問うが、無言がその答えを表していた。
刻々と悪くなっている状況の中。
包囲網の中心に居る僕達にも、動きがあった。
「ちょっとこれ、ヤバくないっスか?」
「ボクたちも行こう!」
そう言って、長田と飼塚が立ち上がる。
「守られてるだけってのもなんか違えしな」
「きっと、私達も何かの役には立てるはずよ!」
強羅と火村もそれに続いて立ち上がる。
「そうだよ! 俺たちも行こう、計介くん!」
僕の隣に居た盾本も、僕の方を見てそう言う。
……えぇ、僕も行くの!?
「いや僕はちょっと無理だよ。非戦闘職だし……」
「あぁ、そうだった、ゴメン!」
……あ、あぁ。そうだ。
そういえば、僕だって役に立てるじゃんか。
しまった、何で今までただボーっと戦いを見てるだけだったんだよ。
「じゃあ行ってくるよ、計介くん。ダンさんから教えて貰った技術、今こそ――――
「皆、座るんだっ!!」
盾本が包囲の輪に向かって走り出そうとした時。
神谷が立ち上がってそう叫んだ。
「戦闘のプロである戦士・魔術師の皆さんが本気で戦ってこの状況だ。この世界に来て2ヶ月と経たない私達がどうかできると思うのかい!?」
「そ、それは……」
「でもこのままじゃ……」
言葉に詰まる同級生達。
次第に立ち上がっていた者達が座っていく。
のだが、盾本と拳児だけはそのまま立っていた。
「おい勇太。俺達が束になって数で攻めりゃ、なんとかなるんじゃねえか?」
「そ、そうだよ。神谷くんだって見ただろ? 俺【硬叩Ⅰ】を習得したし、なんとかなる――――
「甘いのだよ!!」
神谷が2人を見て叫ぶ。
「職を授かった、レベル上げを頑張ってステータスを上げた、スキルを手に入れた、技術も身に着けた。それでも埋められない差があるのだよ! 驕るな!」
「……」
「じゃあ、この状況、どうしろってんだよ、勇太ッ!」
「そ、それは……」
神谷と強羅が言い争いを始める。
「オメェの言いてえ事は分かるよ。誰も死なせたくねえんだろ?」
「……無論だ。クラス委員として、全員を守るのが義務だ」
「だけどよお、このままじゃ全員皆殺しだぜ? 戦えば、だれか死ぬかもしれねえけど生き延びれるかもしれねえ。けど戦わなければ、もれなく全員串刺し。どうすんだよ!」
「…………」
神谷が黙り込む。
「それじゃあ、俺は行く」
それを見た強羅は、今も尚戦っている戦士達の方へと駆けて行った。
「(拳児…………)」
神谷が俯いてそう呟くが、強羅を止めることは出来なかった。
強羅は団長の方へと駆けていく。
「団長、俺もやるぜ――――
「駄目だ、来るな!」
が、団長は強羅に背を向けて騎士と戦ったまま、そう叫んだ。
「だけどよお、団長!」
「お前らじゃ相手にならん!」
ザシュッ!
「今まで諸君にはステータス強化や色々な技術の鍛錬をしてきたがっ!」
ブスッ!
「そんなのじゃ足りねえっ! 攻撃も効かねえし、一突きされて終了がオチだっ!」
ドサッ!
「少なくとも、今の諸君のステータスじゃなあっ!」
団長直々にそう言われ、黙り込む強羅。
そこから進むこともできず、退くのもできず、強羅はそこで立ち往生してしまった。
さて、そろそろ僕も役に立つ番が回って来たかな。
神谷の言う通り『同級生の誰も欠かしたくはない』し、かと言って強羅の言う通り『戦わない訳にもいかない』。
けれど、団長の言う通り『今の僕達のステータスじゃ歯が立たない』。
今の僕達なら、ね。
「【解析】!」
ピッ
――――僕は数学者だ。
――――戦士でも魔術師でもない、識者に分類される非戦闘職。
===Status========
強羅拳児 17歳 男 Lv.7
職:格闘戦士 状態:普通
HP 60/60
MP 35/35
ATK 36
DEF 14
INT 17
MND 9
===Skill========
【自動通訳】【胆力Ⅰ】
【格闘術】
===Equipment========
メリケンサック(ATK+8)
===========
――――武器を持ち、味方と肩を並べて戦う事は出来ない。
――――迷宮合宿にも、本来居るはずは無い。
「【乗法術Ⅱ】・ATK3、DEF3!」
――――だけど、こんな場面でも僕は役に立てる。
――――なぜなら。
===Status========
強羅拳児 17歳 男 Lv.7
職:格闘戦士 状態:普通
HP 60/60
MP 35/35
ATK 108
DEF 42
INT 17
MND 9
===Skill========
【自動通訳】【胆力Ⅰ】
【格闘術】
===Equipment========
メリケンサック(ATK+8)
===========
――――僕の武器は、剣でも斧でも弓でもない、【演算魔法】だからだ。
「よしっ!」
味方のステータスが足りないなら、上げれば良い。
相手のステータスが高いなら、下げれば良い。
ステータスを計算して、な。
「行け、強羅! ステータスは加算しといたぞ!」
「……ッ!?」
一瞬強羅が僕の言った事に戸惑ったようだが、直ぐに理解してくれたようだ。
「ッシャァ! 行くぜぇ!!」
そして、そのまま強羅は団長の横を駆け抜ける。
「あ、おい、ゴーラ殿っ――――
そのまま迫り来る騎士の懐に入り、横っ腹に拳で一発。
変化セットは身体をくの字に曲げ、真横に飛んでいく。
そのまま隣に居た騎士を巻き込み、共に倒れた。
「へへっ。団長、どうだぃ!」
「…………有り得ない。なぜそんな力が……」
それを見たプロポートさんは驚きで口がポッカリだ。
理解が出来てないようだ。
「プロポートさん、これを」
という事で、とりあえず僕がさっき【解析】で開いた強羅のステータスプレートをプロポートさんの方に飛ばす。
青透明の板を右手で払うようにすると、プロポートさんの方に飛んで行く。
そして、彼の目の前でピタッと止まった。
我ながらナイス・コントロールだ。
プロポートさんが、目の前に飛んで来た強羅のステータスプレートを眺める。
「……こ、これは!? 何故こんなにもステータスが変わっているのだ!?」
「僕の魔法です」
「にしても、上り幅が有り得ない! 強化用魔法と言っても、ステータスが倍、いや3倍程にまで上昇させられる物なんて聞いたことが無いぞ!」
「まぁ、それは後程。これなら僕達勇者も参戦できますよね?」
プロポートさんが目を閉じて考える。
が、それも一瞬。答えは直ぐに出た。
「…………あぁ。カズハラ殿の魔法を掛ければ、諸君でも十分に戦えるだろう」
そして、プロポートさんはこちらに振り向いた。
「勇者諸君、力を貸してくれ。頼むっ」
それを聞いた同級生は、一斉に立ち上がった。
「「「「「ハイッ!」」」」」




