7-33. 比例Ⅱ
さて、待ちに待った練習問題だ!
参考書に当てている手には、魔力が吸い付くような感覚。
まるで僕の指の中の磁石があって、参考書に惹かれるかのような感じ。
これは新スキルをゲットする時の前兆だ。
もう数度目だし、これにはだいぶ慣れてきた。それでもやっぱり不思議なモンだよね。
という訳で、練習問題のA問題から行ってみよう!
A問題は(1)から(10)までグラフを書く問題。
文章や表からグラフを作るといった感じだ。
但し、引っ掛けとして比例の関係にないものもあるらしい。その時は『比例でない』って書けば良いようだ。
さて、(1)は……
『ある針金は1mあたり20円で売っています。この針金の長さと価格の関係をグラフに表してください』だな。
割と簡単めな方の問題だ。じっくり考えれば分からなくもない。
って思ったけど、参考書に手を添える僕の指先からは、体内に溜まった魔力が流れ出るんじゃないかってくらい吸い付かれている。
そんな時は躊躇わずに流すのが一番だ!
さて、どうなるかなー……
「おっ」
魔力を流すと同時、頭の中にあるイメージが浮かぶ。
久し振りの感覚に思わず声が漏れちゃった。
誰も起きなければ良いんだけど……
頭の中のイメージには白い背景が広がり、真ん中辺りに黒くマス目が引かれている。
網目模様の左には0、20、40、下には0、1、2と黒字の数が並ぶ。
あぁ、グラフだな。
さっき僕がヘタクソながらに作った奴と一緒だ。
その上からは赤く斜めの線が引かれ、左下から右上に向かって伸びていく。
……これが(1)のグラフか。
長さが『1』の所では、赤線の高さは『20』。
長さが『2』の所だと赤線の高さは『40』。
『左に1進んで』『上に20進む』っていう感じか。
うん、確かにコレは比例の関係だ。
★=20にすれば、『○=△×★』になる。
さて、じゃあこのグラフを紙に書き写して————
ピッ
「おっ」
===========
アクティブスキル【直線比例Ⅰ】を習得しました
===========
おぉ、よっしゃ、やったぞ!
新スキルだ!
突然目の前にメッセージウィンドウが現れたので、驚いてまた声を漏らしちゃったじゃんか。
でもやっぱり、貰えるだろうと分かっちゃいたけど貰えると嬉しいよね!
さて、新スキルは【直線比例Ⅰ】か。
実に数学者らしいスキル名だ。
きっと【演算魔法】の中に仲間入りしてくれている事だろう。
ってか、『直線』『比例』とか言っといて【演算魔法】の中に入ってなかったらビックリだよね。
よし、じゃあそんな訳で新スキル【直線比例Ⅰ】も手に入ったし、練習問題をやっていきますか。
えーと、さっきのは『左に1進んで』『上に20進む』だったな。
まずマス目を描いて、数字を描いて、それから直線を……
「(フゥー、終わったー……)」
よし、B問題の(10)、終了っ!
いやー、今回は割と簡単だった。
特にB問題が即効だったな。
出されたグラフから、『1個あたり何mでしょうか?』『100gの時は何円でしょうか?』『何円あれば、何個買えるでしょうか?』って言うのを読み解くだけだ。コツさえ掴めば一発だ。★が分数でもマイナスでもドンと来いだ。
A問題も簡単っちゃ簡単だったんだけど、イカンセン全部の問題でグラフを描かなきゃいけなかったから面倒だったな。
さて、じゃあ先程手に入れたスキルがどんなものか、詳しく見てみましょう。
「(【状態確認】)」
ピッ
目の前に現れる青透明のステータスプレート。
それを人差し指で操作していく。
えーっと、Skill欄の【演算魔法】のー、【直線比例Ⅰ】っと……。
ピッ
ピッ
良かった。ちゃんと【演算魔法】の中に入ってた。
「(よし)」
コレだな。
さて、どんな魔法なんだろうか。
ちょっとドキドキだな。
===【直線比例Ⅰ】========
魔力を消費して正比例、及びそのグラフに関する演算を高速かつ正確にこなせる。
演算能力はスキルレベルによる。
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……ま、まぁスキルの内容は普通だった。
比例に関する計算を魔法でしてくれるだけ、と。
僕のドキドキを返してくれよ!
ところで、この前『【合同Ⅰ】』の時に書いてた『【状態操作】との併用』とかなんとかは載ってないのな。
まさか、比例のグラフを書く専用のスキル……!?
いやいやいや、だとしたらかなり尖ったスキルだな。
使い所が限られそうだ。というか、実際【乗法術Ⅱ】で代用できるし。
……うーん、そう考えるとコレを使う機会が思いつかないな。
よし。
【直線比例Ⅰ】君、きっと君には輝く舞台がある。
僕はそう信じているよ。
これからも僕は【演算魔法】欄で君を見守ってあげるからね。
まぁ、新スキルが見た目イマイチだったのは残念だが、まあ仕方ない。壊れ性能なスキルがあれば残念性能なスキルもあるさ。
という訳で『比例』の勉強も終わった事だし、性能はともかく新スキルも習得出来たし、そろそろテントに入りますか。
今は勉強直後なので全く眠くはないが、どうせテントの中でのんびりしてれば知らぬ間に寝てる。
じゃあ盾本を起こして見張り番を引き継ぎ、さっさとオヤスミしよう。
今何時かなー。
神谷が置いといてくれた懐中時計を、盾本が置いといてくれた魔力ランプに照らして時刻を確認————
「(うぉっ)」
マジかよ。
あれから70分も経ってる。
盾本の見張り時間に突入してるどころか、彼の時間も残り10分って所だ。
あと10分かー……。
どうせなら盾本の分の見張りまでやっちゃおうかな……。
あぁ、いやダメだ。盾本の次の見張り番が誰か分からない。
よし、しゃーないな。
可哀想だけど、盾本を起こして見張り番を交代しよう。
残り10分だけど。




