7-30. 余り
僕達は、気絶した5人を連れて長い階段の上にある僕達の拠点へとなんとか到着した。
神谷の指示で、コースの【水源Ⅵ】とシンが用意していた調味料セットの塩を使って塩水を作り、彼らに飲ませた。
そして数分後。
「…………ハッ! ま、魔物が――――
「長田君、目覚めたか。大丈夫、落ち着くんだ」
「あ、あぁ…………え、神谷君っ!? 何で此処に居るんスか!?」
神谷が意識を取り戻した長田の所へ駆け寄る。
「拳児が君達を見つけて、私達は長田君達のグループを保護しているのだよ」
「拳児……、成程、強羅君っスか。彼が俺らを見つけてくれたんスね!」
「あぁ。私達が寝ようとしていた時に君達の呻き声が聞こえ、そのお陰で君達を見つけることが出来たのだよ。そして此処は階段の上の拠点だ」
「ほほぉ! 確かに、俺らは意識を失う直前、階段の下で『誰かー!』と叫んで助けを求めたっス。 俺らの声が届いて良かったっス! ……という事は、その直後に階段の上から来た『デカい魔物』ってまさか……強羅君っスか?」
「ああ、俺だな」
強羅が頭を掻き、そう言う。
「…………ま、まあ、あの時は目も頭もボーっとしてたし、強羅君を魔物と見間違えたのは謝罪するっス。済まない、強羅君っ」
「い、いや。別に俺は全然気にしてねえからな。それより体調は大丈夫か?」
意識が朦朧としてボンヤリした視界、それと強羅の体格の良さ、[メリケンサック]が招いた結果だ。
もはや事故としか言えないだろうな。
「ハッ! そういえば、喉がだいぶ渇いたっス! 申し訳無いっスけど、お水を少し分けて頂けないっスか?」
「あ、お水ねー! 少しどころか沢山あげるよー!少し待ってて!」
長田が水を所望すると、コースが長田の所へ走っていく。
「そ、そんな沢山だなんて――――
「いーのいーの。それじゃ、水筒くださーい」
「あ、はい。これっス。それでは、よろしくお願いするっス!」
「任せてー! 【水源Ⅵ】!」
そう唱えると、コースと長田の間に水の球が現れる。
水の球はジャポーっと水筒に注がれ、瞬く間に満杯になる。
「おおおおお! こんなに水を!?」
満杯になっても水は止まらない。
あああ、結構こぼれちゃってるよ。
「うん! ちょっと魔力を使いすぎちゃったかなー?」
「水色のローブに三角の帽子……もしかして貴女は水系統魔術師さんっスか?」
「そうだよ! コースって言います。よろしくね!」
コースが首を少し横に傾けてスマイル。
「ああぁぁ、水の女神様! ありがたやぁ……」
満杯の水筒を置き、コースを仰ぎ始める。
……ヤバい。長田が壊れ始めた。
目も少しイっちゃっている。
人は渇望したものを与えられた時、この様になってしまうのだろうか。
そんな事をやっていると、他の同級生も次々に目を覚まし始めた。
さっきの塩水が効いてきたんだろう。
「うぅっ……」
「こ、ここは……」
「あっ、真弓ちゃん、召子ちゃん! 目が覚めたんだね!」
「あぁ、美優!」
「お久しぶりだねぇ、美優ちゃん!」
矢野口と呼川が目を覚ましたようだ。
可合が2人の元に駆け寄り、再会を喜ぶ。
「あっ、あれ? 人が増えてる」
「…………ぉっ」
おぉ、飼塚と森も意識を取り戻したようだな。
「よう、飼塚、森。久し振りだね」
「あっ、数原クン! 久し振りじゃん!」
「…………久し振り」
「2人とも元気そうで良かったよ」
「数原クンこそだね!」
そんな感じで5人が全員目を覚ますと、僕達メンバーとお互いに再会を喜び合った。
その後、5人が渇いた喉をコースが作り出した水で潤し、暫し休息。
僕達も色々と驚きで完全に目が覚め、眠気も吹き飛んでしまった。寝る準備は完璧だったんだけどね。
そして、休みつつ5人と僕達は色々話をして情報交換をした。
「いやー、助かったっス! 皆さんアザっした!」
「本当ね。助けが来てくれて良かったわ」
この声がデカくて耳障りな野郎は長田振之助。
高校では野球部に所属しており、如何にも体育会な性格。部活に明け暮れるような男だ。
対角は強羅と張り合えるほどにガッシリしており、肌は良く焼けた褐色。
重要物は[金属バット]で、職は『棍術戦士』。
で、その隣に居るのが矢野口真弓。
背が高くスラっとしていて、黒く長い髪をポニーテールに束ねている。サバサバとした性格で、クールビューティーだ。
部活は弓道部に所属している。腕はいいようで、エースだか部長だかをやってるって聞いたな。詳しくは覚えてないけど。
重要物は[弓矢]で、職は『弓術戦士』。
ちなみに、この2人は割と一緒に居るな。
野球部と弓道部の部屋が近いから、放課後には部室に向かってに2人で歩いている姿が良く見られる。
「本当本当。ボク達の最後の叫びが届いて良かったよね」
「いやいや、それはちょっと言い過ぎだよぉ」
この低身長の男子が飼塚養平。
髪は茶髪で軽くくせっ毛の入っており、子犬といった小動物のようなイメージを感じさせる。かわいいというか、癒し系と言うか、そういう感じの男の子だ。
また動物好きで、家では色んなペットを飼ってるって聞いたことがあるな。
重要物は[鞭]、職は『従魔魔術師』。
ちなみに、鞭は馬のブリーダーである父から拝借した物のようだ。
で、飼塚の言葉に返した奴が呼川召子。
少し性格が甘え気味で子どもっぽいところがある女の子だ。
通学バッグには可愛いストラップが沢山着けており、邪魔じゃないのかなー……ってずっと思ってた。
重要物は[ぬいぐるみ]、職は『召喚魔術師』だ。
[参考書]を持ってきた僕が言うのもなんだけど、呼川の[ぬいぐるみ]もミスチョイスなんじゃない? って思った。
「…………」
で、最後にずっと無口なのが森力也。
コイツは高2の夏に地方の山間の村から首都圏に引っ越してきた転校生で、どんな奴なのかまだ良く知らない。無口な性格であり、お互いに話すことも無いので尚更だ。
身体はポッチャリした体型だが、クラス一番の力持ち。この前の卒業式の準備では森がピカイチの活躍を見せていたな。
重要物は[斧]、職は『斧術戦士』だ。
「ところで長田君、一つ聞いていいかい?」
「何っスか、神谷君っ!」
「長田君達のグループは、どういう経緯でその組み合わせになったのかい?」
「確かに。教室でも中々見ないメンツだよね」
「長田と矢野口のコンビなら『部活組』って括りで良く見るけどな」
確かに。僕も少し気になる。
この5人は特に仲が良いって話も聞かないし、何というかメンバーがバラバラって感じだ。
神谷・可合・強羅とか、火村・草津とかでも無いし。
「あぁ、それはっスね。結論から言えば『余り物グループ』っス!」
おいおい、余り物って……。
「元はワタシと長田の2人で組むことは決めていたんだけど。気付いたら斉藤と芳川がどんどんクラスメートを引っこ抜いて行くし、数原の所にも軍団が出来ているし……ってなっちゃってね」
「俺達、完全に出遅れてしまったっス!」
……なんか済まんな。
僕の存在のせいで余り物軍団を作ってしまったみたいな感じになっちゃったよ。
「で、俺と矢野口さんの2人で迷宮に入ろうとした時に――――
「ボク達を仲間に入れてもらったんだよね!」
「そうそう。あの時は助かったよぉ、真弓ちゃん」
「……有難う」
成程、そういう経緯でこのグループが出来た訳か。
……ごめんなさいね、戦士でも魔術師でもない分際で大きなグループを作っちゃって。
僕もちょっと責任を感じてます。
さて、5人の同級生とも再会を果たした。
パッチリ目は覚めていたが、それでも身体は正直だ。
僕達にも眠気が徐々にやってくる。
「……さて、それでは私達もそろそろ寝よう。だいぶ眠くなってきた」
「そうだね、勇太くん。私もそろそろ寝ようかな……」
神谷がそう言って立ち上がる。
周囲も欠伸をし始めたし、そろそろおやすみタイムだな。
「あぁ、神谷君っ!」
「ん? どうしたんだい?」
そんな時、長田が神谷を止める。
まだ用事があるのか。何だろう?
「俺らもここで寝て良いっスか?」
「何故そんな事を聞く? 無論、構わないさ」
「おぉ! アザっす!」
という事で、長田・矢野口・飼塚・呼川・森の5人も僕達と一緒に寝ることになった。
さて、それじゃあ僕も寝ようかな。
興奮が収まったからか、だいぶ眠くなってきた。
明日も頑張ろう。
水を少し飲んで、テントに入ってオヤスミナサイ。




