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第081話・連コです


 まぁそもそもの話なんですけど。


 これでも僕、お嬢様から武芸については一通り習っていますし、魔力による肉体の強化とかの、スキルによらない魔力の使用方法についても習っています。


 それにお嬢様だけでなくナルさんとかレミカさんを交えての鍛錬とかも最近はよくやっていましたし、一対多の戦闘でも人並みにはできるんですよね。


 もちろん、ここのギルドにいる方々が皆お嬢様たちよりも強いのであれば、僕ももっと手こずると思うんですけど。


 ぱっと見た感じ全然そんなこともなさそうでしたので、まぁ、瞬殺もやむなしなのかな、と。


 倒した五人を広場の端にほうに寄せてあげると、そこから次々に対戦者が僕の前に立ちました。




「でやああああああっ!!」


 柄の長い槍と斧が一体化した獲物を使っている男の人は、腕力はあるのでしょうが取り回しの速さとスマートさが足りません。


 お嬢様のほうがよほど素早く的確に振り回していますし、きちんと遠心力を乗せるので威力もあります。


 振り下ろしてきた斧槍の柄の部分に拳(瞬間的に結界でガードしてます)を当てて防ぐと、半ばでベキリと折れて使えなくなりました。


 ノド元に拳を寸止めで突き付けると、相手は降参しました。


 僕の勝ち。




「ふんぬあっ! はあっ!」


 短めの金属製の棍棒(メイス、とかいうみたいです)で二刀流の男の人は、とにかく手数で攻めるタイプらしく、ブンブンと交互に鈍器を振り回してきます。


 しかし、試しに何度か受け止めてみましたが一発一発がそれほど重くないですし、だというのに本人は獲物の重さに少し振り回されている様子で、全然連打が繋がっていません。


 ナルさんの拳や蹴足のほうがよほど重くて速くて正確で、それでいて途切れなく連打が飛んできます。


 タイミングを合わせて懐に潜り込んで相手の手首に手刀を当てて獲物を取り落とさせて、それから鼻先に裏拳を寸止めしてやると、相手は腰が抜けたように座り込みました。


 僕の勝ち。




「ちぇあああああっ!」


 細長くてしなる剣で開始早々に全力の突きをしてきましたが、お嬢様がよく使う大上段からの突き打ちのほうが早いです。


 サッとかわしながら相手の顔面に平手打ちをぶつけると、勢いあまってその場で二回転ぐらいして地面に倒れました。


 僕の勝ち。




「喰らえいっ! サンダーボルト!!」


 なんか魔術師っぽいローブを着て身長より長い杖を持っていた男の人が、杖の先から電撃の矢を打ち込んできましたが、これもナルさんの電撃パンチのほうがはるかに高威力です。


 炎の渦は紅ティラノ君の熱線に遠く及びませんし、氷の槍は蒼トリケ君の足元にも及びません。


 何度か結界で受け止めてから歩み寄って杖を蹴り飛ばすと、拳を握る前に降参だと言われました。


 僕の勝ち。




「ははははは! この幻影戦法が見破れるかな!」


 四本のナイフをくるくるとお手玉のようにしながら、ブーメランのように投げてくる男の人。


 うーん。レミカさんのほうが取り回しが上手ですね。それにレミカさんなら本当にナイフを出したり消したりできますし、一度に十本でも二十本でも扱えるので、これぐらいでは全然怖くありません。


 投げてきたナイフを四本とも次々と掴み取って投げ捨てると、愕然とした様子で座り込みました。


 僕の勝ち。




 ゴーレムとかを召喚できる人。

 鋭刃結界でゴーレムを真っ二つに。


 僕の勝ち。




 騎士みたいに剣と盾を持った人。

 鋭刃結界で盾と剣を真っ二つに。


 僕の勝ち。




 忍者とか盗賊みたいな格好の人。

 拘束結界で動きを封じてぐいっと軽く締め上げます。


 僕の勝ち。




 なりふり構わず五人パーティーで挑んできた人たち。

 盾役の重騎士、長短二刀流の双剣士、弓と短剣の狩人、風と水の魔術師、回復役の神官。


 この町でも指折りのパーティーらしいですが、なんかやっぱり練度が低い気がします。

 お嬢様とナルさんとレミカさんの三人がかりのほうがよほど手強いと思います。


 全員順番に気絶させて僕の勝ち。




 ◇◇◇




 ◇◇◇




 ◇◇◇




 ◇◇◇




 ◇◇◇


 はい。というわけで。


 広場の中は死屍累々といった感じです。

 僕は軽く額の汗を拭いながら、受付嬢さんを見つめます。


「他に、戦ってくれる方はいますか?」


「…………」


 受付嬢さんは答えません。

 周囲を見回してみますが、誰も彼も及び腰で僕と目を合わせようともしません。


 それなら仕方ないですね。


「以上のようですね。皆さん、対戦ありがとうございました」


 僕はペコリと頭を下げます。

 受付嬢さんが苦々しげに顔を歪めているのが横目に見えます。


「それで、ご理解いただけたでしょうか? 僕の結界術って強いんですよ」


「……そのようですね」


「はい。だから、僕の職業は結界術士でなんの問題もないと……」


 と、言っていたら。


「な、なんだこりゃあ!? どうしたんだアンタら! いったいぜんたい何があったんだよ!?」


 とても驚いたような声が広場に響きました。


 声のしたほうを見てみると、短い紅髪に小麦色の肌の女の子がいて、そこら中に倒れている冒険者の皆さんに順番に声をかけて回っていました。


「おい、起きろよ! アンタも、ほらアンタも! シャキッとしろよ!」


 それから受付嬢さんの隣に来ると、バツが悪そうな様子の受付嬢さんにも問いかけます。


「おいおいおいミーシャ! これはどういうことだ! アタシがいない間に、いったい誰がこんなふざけたマネをしたんだ!」


 僕は、そんなふうに慌てた様子の女の子をじっと見つめます。


 歳の頃は僕よりいくつか上といった感じで、男の子みたいな顔つきと喋り方をしています。


 紅い髪の毛は少年のように短く、小麦色の肌は健康的に日焼けをしているようで、シミひとつないです。


 体型的には、僕より少し背が高いぐらいで、全体的に控えめな体つきでいつつも出るところは出て引っ込むところはキュッと引っ込んでいます。


 そして服の丈が全体的に短く、腕は丸出しヘソも丸出し、なによりヤバいのがホットパンツなのでお足のほとんどが丸見えなことです。

 太ももの付け根から足首の上ぐらいまで、生足がさらけ出されているのです。


 僕が、この子のスベスベの太ももに頬擦りしたい気持ちをグッと堪えて鼻を摘んでいる(押さえてないと鼻血が出ちゃいそうでして)と、紅髪の女の子と目が合いました。


 僕は試しに手を振ってみました。

 仲良くなれたらお足を舐めさせてもらえないだろうかと思ったからです。


「あ、見ない顔だ! 分かったぞミーシャ、アイツがコイツらをコテンパンにしちまったんだろ!」


「……はい。そのとおりです、メラミ様」


「このヤロー!!」


 紅髪の女の子は、肩をいからせてズンズンと僕の目の前まで来ると、僕を指差して言いました。


「テメェこの野郎アタシと勝負しろ。アタシが勝ったらコイツら全員に土下座して謝れ!!」


「じゃあ、僕が勝ったら今日の晩ご飯をご馳走させてください。……そこの受付嬢さんもご一緒に」


「え……?」


「上等だよ、ぶちのめしてやんよ!」




 というわけで、広場の真ん中で女の子と向き合ったのでした。


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