83 企業戦士のアニメ
精神的ダメージが抜けてきた・・・ リハビリがてら、こちらから投稿を再開します
「うーん。素晴らしいですねぇ。スキが無い」
「雪ちゃん先生から高評価いただきました!! 」
「このアニメ、雪奈のお気に入りだしね」
とある日の夕方。兄妹でTVアニメを視聴した後での会話だった。ネット配信のアニメ放送チャンネルでやっている【 機甲戦士ヴァンダム 】シリーズの最新作だ。秋から始まったアニメ番組の中でも、雪奈のお気に入りアニメの一つだ。雪奈を経由したネット情報によると、放送開始の頃からアニメファンの間では話題だったという話である。
「実に『現代向け』な話というか、スキのない設定ですよねぇ。回が進むごとにスキが無くなってきたというか、そのスキの無さが分かるようになってきたというか」
「そうなんだ?? 」
そういう事らしい。なんだか30年以上昔から続いているシリーズで、ニチアサの特撮番組みたいに設定を少しずつ変えながら、ときどき休みながらも続けている長寿?? シリーズのアニメらしいんだけど。今回のシリーズの前にやっていたのは…… 雪奈たちと一緒に見ていたハズなんだけど、あまり覚えが無い。雪奈に聞いてみると『ヤクザやチンピラがロボットを使って棍棒や斧で殴り合ったり銃を撃ちまくったりする話』という事だったので、話にあまり興味を持てなかったのかも知れないな。プラモを買ってもらった気もするんだけど、なぜだか話をあまり覚えていない。
…… そういえば雪奈は幼稚園に入ったばかりだったのに、すでに小学生向けとか大人向けのアニメとか番組とかに興味を持ってたな。やっぱりそういう事なんだよな。もう僕の中では普通に前提条件みたいになっちゃってるから、どうでもイイ感があるけれど。
「まず今回のシリーズ、たぶんメーカーが厳重なチェックをしたり制作側のコンピューター技術やソフトの性能が上がったりしているのが理由なんでしょうけど、すんごく画質がいいのですよ。昔はCGアニメなんて本気の手描きには勝てないとか言われてたような気もするんですけど、技術の進歩はスゴイものです。このぶんでは『わざとパースを崩す』なんていう技術も使えるようになるかも知れません」
「たしかに絵はキレイだよね。ちょっと前のパティキュラとか、ときどき物凄い事になってたもんね」
あー。アレかな。画質崩壊とかなんかそういう言い方をするヤツ。雪奈がときどき笑いながらネタ画像を探してたから僕も覚えがある。絵の下手なスタジオに外部発注した結果なんだっけ。予算と時間の制限が生んだカオスだとかなんだか。
「あとやっぱり商品的には男の子向けなハズなのに主人公が女の子だとか同性婚がアリな世界観だとかが、もう現代の世相を反映してますよねぇ。バケモンの最新作もあえて自分キャラの性別設定を『させない』という事にしてますし。海外に商品を売る事を前提とした設定ですよね。主に北米対策というか」
「あー。なんかメンドクサイよねー。学校でもルッキズムはいけません、みたいな話はときどき出てきたりするし。わざわざ言う事かなぁって思うけど」
あー。そういう感じの『気づかい』的な話かぁ。商売の話だと、お客さんには気を遣うよね、っていう話かな。
「しかも逆ハーレム状態な感じに突っ走ってます!! さすが最近の流行り」
「何だかんだいって、めっちゃモテてるよね!! 最初はツンツンしてるのにすぐデレちゃうキャラとかいっぱい居るし!! イケメン男子にもカワイイ女子にもモテモテ!! 」
雪奈がちょっと前に見てた、ネット小説原作ネタのアニメなんかだと普通のジャンルと化してるヤツかな。ハーレムものとか逆ハーレムものとか。でもこの手のアニメだと主人公がスゴイ能力を持ってたり主人公のメカが超高性能だったり伝説の武具だったりして無双状態だし、ある意味でモテても当然といえば当然なんだろうか。
「あとはいかにも北米販売向けっぽく人種配慮とか。ベタベタなアジア人は居ないというか設定だけの空気な気がしますけど、まんべんなく配置している気がします。白人も黒人もスパニッシュ系も、ぽっちゃりキャラも痩せ型キャラも主人公周辺の仲間には取り揃えてますよね。なんかネイティブアメリカンなんだかジプシーなんだか良く分からない子も居ましたし」
「あ、そういえばそうだね」
多民族国家だと色々あるんだろうなぁ。特定の人種を特定の役柄につけるとクレームが出るとか何か色々と。雪奈に聞いた話だと戦隊モノみたいなチーム制ヒーローだと『かならず一人は各人種に割り当てる事』みたいなのがあるらしい。色々と大変なんだなって思った。
「それ以外は購買層というか、主人公の年齢に合わせた『 王道的 』な設定ですね」
「どういう感じが?? 」
「『主人公は善良』とか『汚い大人が悪役』とか『子供の気持ちを理解してくれない高圧的な親が悪役』とか『努力・友情・勝利』とか。特に、大人は汚い!! 純粋な子供の感性こそが正義!! 愛は世界を救う!! イジメは物理で叩きのめせ!! 悪い大人と世間の理不尽を皆の力で打ち倒すんだ――!! みたいな感じです。ざまあ展開に乞うご期待!! ってところですかね?? 」
「「ああ―― 」」
春奈と僕がそろって声を上げてしまう。言われてみればその通りだ、という気持ちと、同時に『まあフィクションだよね』という気持ちを同時に感じる。ときどき思うんだけど、僕もけっこう雪奈の考え方とか感覚に影響を受けてるような気がするんだよなぁ。
「しかしタイトルの『戦士』っていう部分、今となっては素晴らしい!! としか言えません。これが兵器だとか兵士だとか完全に戦争を想起させる単語だった場合、格闘大会だとかプラモシミュレーターだとかのシリーズが生まれる事も無かったかも。今回の学園モノもです。うーんまさに奇跡のタイトル」
「おおー。そういう見かたもあるかぁー 」
なるほど。『戦士』っていう単語、現代の日本語イメージだと良いイメージもあるもんね。戦争関係じゃなくてもときどき出てくるというか。ファンタジー関係の勇者とかそういうイメージなのかも知れない。
「まあ、制作会社が制作会社なのでシリーズ後半に入るとガチの殺し合いになる可能性はあるんですけどね。以前もそんな感じのアニメ作ってましたし。シリーズ前半は仲間達と協力して魔物狩りをしてたりラブコメしてたりしたのに、シリーズ後半になると仲間同士で殺し合いを始めたアニメとか」
「そんなアニメ作ってる会社だったんだ」
それいつの時代の話なのかな。時代的に許されてたとか流行りだったとか、そういうのもあると思うから今もそうだとは限らないと思うんだけど。時代背景ってのを考慮して欲しいんだよなぁ。今回のアニメだって世間に配慮してるって言ってたじゃないか。
「しかし。うーむ。素晴らしいですね。トンチが効いてるというか感心する事しきり」
「そんなに?? 」
「いえ、ワタシは基本的にこの『機甲戦士ヴァンダム』シリーズですが、主人公は人間でも、あくまで【 主役 】は【 当代のヴァンダム 】だと思っているのです。商品的にもそうですし。もっとも最近はギャルのプラモとかも販売されてるので方向性が怪しくなってきましたが」
「まあそうだよね。ロボットのプラモを売ってる会社がスポンサーだもん」
そりゃそうだ。スポンサーがプラモのメーカーさんだもん。ロボットのプラモを男の子に買わせる、的な。そういう言い方をすると身もフタもないんだけど。
「今回のシリーズ、今のところ【会社を立ち上げて営業利益を出す】とかいう話になってますよね。で、今回の主役メカである『ヴァンダム・マーキュリー』は【企業の広告塔】であり、ライバルを物理的に叩きのめして権利を勝ち取る【 企業のメイン戦力 】というワケですよね」
「うん、そうだね」
「まさに!! 【 企業戦士 】ですね!! フフッ」
「「 ……うん ?? 」」
雪奈の言葉に、少しだけ間をあけて。なんとなく声を出す僕と春奈だった。
「 ……企業戦士ヴァンダム」
「「うん?? 」」
「もしかして通じてませんか」
少しだけ悲しそうな雰囲気の、雪奈の声だった。
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「お兄ちゃん達には『企業戦士』という言葉がうまく通じませんでした。せっかく『うまい事言ってやった』と思ったのに。ざんねんです」
「まあ今どきは言わないからなぁ。昔でも子供には馴染みの無い言葉だったし」
「今どき企業戦士って呼ばれるような会社員って居るのかしら?? 」
その日の夕食後の家族の会話は、雪奈の愚痴がメインの話題になったのだった。
「きっとヴァンダムマーキュリーと主人公のタヌ子ちゃんはバブル期の企業戦士よろしく毎日毎日、日付けが変わるまで残業して馬車馬のように働いて会社を盛り立てて行くんですよ!! そして残業代をガッポリ稼いで休日にはネオン街で豪遊したり高級外車を乗り回したりするに違いないんです!! ガンガン働いてガンガン使う!! 24時間戦って株式上場目指して頑張るんですよ!! めざせ重役です!! 」
などと言う雪奈だったけど。24時間も働いてたら過労でしんじゃうと思う。もしかして過去の日本にはそんな時代もあったんだろうか。『ペキン』『モスクワ』『パリ』『ニューヨーク』とか口ずさむ雪奈だったけど、アレなんの歌なんだろうか。昔のビジネスマンは殺人スケジュールで仕事してたのかなぁ。僕は大人になったらホワイト労働がいいんだけど。
「そのうち総会屋とか悪徳トレーダーとの戦いとか始まりませんかねー。会社を乗っ取ろうとする勢力に対し、金と暴力の力での抗争が始まるとか!! サブタイトルは『 伝説の13時間総会 』みたいな!! 」
そんな事を言う雪奈に「それってロボットアニメって言えるのかなぁ」って言ってしまう僕だったけど。
「でも昔、政治闘争の合間にゲリラがロボットで局地戦をするアニメがありました。機甲戦士ヴァンダムのシリーズでもヤクザの話はずーっと『お金をどうするか』みたいな事を言ってましたし。わりとありますよ、お金と権力とか政治闘争のアニメって」
そういう話って大人向けなんじゃないかなぁ。ヴァンダムって大人向けアニメなんだろうか。プラモの販売ターゲットはどのあたりを狙ってるんだろう。でも雪奈みたいな子供も一定数居るのならターゲットの範囲はけっこう広めなのかも知れない。
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そんな話があってから少しして。
雪奈が部屋の隅っこに座ってプラモをいじっていた。例の最新作ヴァンダムのデフォルメシリーズ版のプラモデルだ。ブンドド遊びでもしてるのかな、と思ったら違ってた。小さな工具だかドライバーだかでプラモをガリガリ削っている。
「雪奈、なにしてるの?? 」
「盾を分割加工してるんですよ。あと肉抜き穴を埋めてます。最近は100均で色々と安く手に入るので助かりますね」
なにやらレベルの高いプラモ制作遊びをしていた。箱の中にはプラモのランナーとかプラモ用のヤスリとかピンセットとか接着剤の小ビンに加えて、パンの袋を留めているバッグクロージャ―や細かいプラスチックの破片が散乱している。あのデフォルメ版のプラモ、小さな子でも手軽に組み立てる事ができるのが売りなんだと思ってたんだけど。精神年齢が高いユーザーが買うと、こういう楽しみ方になるのかな。ヴァンダムのプラモって、こういう購買層がメインターゲットなのかしらん。
そしてそんな妹の様子を見て、「そうかー」としか言えない僕だった。ヴァンダムのプラモを買うのは雪奈に任せて、僕は流行りのゲームでもやっていればいいかな、と。そんな事を考えながら。
更新が遅くなりました。
たぶん長期休み明けとかズル休みとかによくあると思うんですが。
……マイページを開くのに恐怖感を覚えるようになるんですよねぇ。それも含めて筆者のメンタルが豆腐なためですが。これから少しずつリハビリしていこうと思います。
まだ見ていただける方が居れば、よろしくお願い致します。
野球?? WBC面白かったですよね!!(ボールぶつけられそう)そっちはもう少し待って……




