97.カモメにもシチューを気に入ってもらえたようです
シロカが出してくれた昼食は、鳥の丸焼きにしたものと、野菜みたいなものだった。
……鳥の丸焼き?
これって共食いにあたるんじゃないのか?
「なあ、シロカ? ちょっと聞いてもいいか?」
「はい、何でしょう、エンラさん?」
「これって鳥を焼いたものだよな? シロカも鳥だよな? 食べていいのか、これ?」
「あら、確かにそう言われれば共食いにあたりますわね。でもわたくし達にとってはその鳥は昔からずっと食べてきましたので、あまり気にしていないんですのよ?」
ふーん。
意外とその辺りは寛容なんだな、この世界の動物ってさ。
まあ、別に本人が気にしないっていうのならいいんだけど。
「それにこのエリアに住む中で食料になる動物はある程度決まっています。ここは年中過ごしやすい季節なのはいいのですが、短い草しか生えない関係上、生息している動物の種類が少ないもので。ですからあまり食べる動物にこだわってはいられないのです」
「ふーん、そういうものなのか。大変だな」
「あっ、もちろんわたくしの住民を食べたりはしませんわよ!? さすがに同族を食べるほど食に困っている訳ではありませんからね!?」
そう言って慌てふためくシロカ。
別にシロカの事を責めている訳じゃないんだから、そんな焦らなくてもいいんだけどなぁ。
シロカの話を聞く限り、シロカ達は同じような動物を食べてきているって事だろう。
それはきっと飽きるだろうなぁ……
同じような料理が続くという訳だしさ。
よし、それならいっちょ腕を振るってみますか!
調理器具も女神倉庫にしまってあるから簡単に用意出来るし、後は火を使ってもいい場所さえ借りる事ができれば……!
まあ、その前にせっかく出してくれた昼食を頂くことにしますか。
早く食べないと冷めちゃうしな。
鳥の丸焼きはそのまま鳥を焼いただけのものなので、あまり味はしない。
だが良い肉を使っているようで、ほどよい歯ごたえのある食感はやみつきになるな。
野菜もシャキシャキした新鮮なもので、食が進む。
あっという間に俺は昼食を平らげてしまった。
「ふふっ、良い食べっぷりですわね」
「ああ、美味しかったぞ。ご馳走様。ただ食事をいただくだけというのも何か悪いから、何かお返しさせてくれないか?」
「あらっ、わたくし達に何か食べさせてくれるということですの?」
「そうだ。だけど、ちょっと火を使っても大丈夫なスペースが欲しいんだが、どこか良い所はないかな?」
「そうですわね……外でもよろしければうってつけの広場がありますけれど、そこでもよろしくて?」
「ああ、それでも全然構わないぞ」
キュビカのエリアで料理をする時もいつも外でしているしな。
むしろ外の方が最近は慣れているし、ありがたいかもしれない。
外で料理するのって意外と面白いんだよな。
何というか、キャンプ感が出て、何か良いんだ。
時々料理に近寄ってくる虫はたまにキズだけど。
そういう虫には容赦なくファイアで焼き殺したりしていたり。
殺虫剤いらずでこれが結構便利なんだな。
シロカとの昼食の時間が終わった後、シロカが広場まで案内してくれることになった。
広場までは徒歩で三分ほどで到着した。
ちなみに元々一面草原の土地だから広場じゃなくても広々とした空間はある。
だけど広場は草が刈り取られていて地面がむき出しになっており、地面が平らになるように整備された土地のようだ。
平地になっているから座ってくつろぐにはもってこいで、広場には十数羽のカモメが腰を下ろして休んでいるようだった。
「さあ、着きましたわよ。ここが広場ですわ」
「うわぁ、ちょっと悪く思わないでもらいたいんだが、何もない所にやけにカモメが集まっているのが不思議だな……」
「ふふっ、この広場は平地になっていますから、くつろぐにはもってこいなのですわよ。結構私たちのエリアは緩やかな坂になっている場所が多くて、平地になっている所は少ないですから」
ふーん、そういう事か。
確か平らじゃない場所に長時間いると、体が疲労するという話を聞いたことがある。
だから平地が少ないカモメ達のエリアでは、平地になっている広場は最高なくつろぎ場所なんだろうな。
そんなカモメ達が集まってくつろいでいる広場の中で比較的空いているスペースを見つけた俺。
一応シロカにこの辺りのスペースを使って良いか聞いた所、好きに使って構わないとのことだった。
なので俺は女神倉庫から調理器具などを出して、遠慮なく料理の準備を進めていく。
「なんだ、なんだ? あのドラゴン、何をするつもりなんだ?」
「あのドラゴンさん、確かエリアボス様の客人よね? 一体こんな所で何をするのかしら?」
「何か見慣れないものを出しているな。金属だよな、あれ? 何に使うんだ?」
俺が料理の準備をしていると、カモメ達はその様子が気になっているようで、あるものはくつろぎながらこちらを注視し、あるものに至っては俺のそばまで近寄ってきたリした。
あまりに近付きすぎたカモメに対してはシロカが注意して追い払ってくれたけど。
まあ、調理器具なんて使うのは人間と俺くらいなものだろうし、そりゃ珍しいわな。
カモメ達は家らしきものを作ってはいるみたいだが、調理方法としては焼いて食べたり、自然のまま食べるなど、キュビカと大差なかったしさ。
さて、それじゃあ準備もできたことだし、早速料理開始といきますか!
今回作るのはシチューだ。
クマのクータにせがまれて何度も作っていた関係上、今の俺にとっては一番作り慣れた料理だな。
カレーに比べれば刺激は強くないから、比較的多くの人に気に入ってもらえると思う。
いつものように野菜を切ったり、煮込んだりしてシチューを淡々と作っていく俺。
一つの野菜を切るたびに観衆のカモメ達がおぉ~という声を出してくるのは作っていて気持ち良かった。
大げさだとは思うけど、反応があるってやっぱり良いよな。
そして数十分後。
シチューは問題なく完成した。
「よし、これで完成だ。シロカ、シチューを食べてみないか? さっき昼食をとったばかりだから無理はしなくてもいいが……」
「ふふっ、大丈夫よ。いただくことにするわ。何て言っても美味しそうな香りが広がるこの状況で食べられない方が辛いもの」
どうやらシロカはシチューを食べる余力があるようだな。
ということなので、俺はシロカ用にシチューを一杯分よそうことにした。
そしてシロカはシチューをぱくり。
すると……
「お、美味しい……まろやかでクリーミーで何だか優しい味……」
シロカはそういいながらうっとりした様子になっていた。
そしてゆっくりとしたペースでシチューを完食したのだった。
その様子を見た他のカモメ達は自分達にもシチューを分けてくれと俺の近くに殺到。
どうしようかとシロカに聞いた所、是非他のカモメ達にも分けてあげてほしいということだったので、他のカモメにもシチューをふるまうことに。
他のカモメ達もシチューの味を気に入ってくれたようで、シチューを食べ終わった後に「こんなに素晴らしい食べ物をありがとう」と涙を流して伝えてくるカモメさえいた。
いくら同じような食に飽き飽きしていたとはいえ、すごい反応だな。
それだけいつもの料理以外の料理に飢えていたのか想像がつかない。
シロカも同じような状況である事を考えれば、俺が出す未知の料理に関してキュビカから聞いた途端に俺の元へやってきた理由も分かる気がする。
そう考えると、カモメのエリアって、過ごしやすいようで、実は過ごしにくいのかもな。
シチューを気に入ってくれたカモメの中には、是非シチューを食べさせてくれたお礼がしたいという者もいた。
その中で気になったのが、カモメが使っている瓶の生産の見学への誘いだ。
いわゆる工場見学というやつだろう。
シロカに聞いてみた所、是非行ってみるとよいということだったので、俺はそのカモメの好意に甘えて工場見学をさせてもらう事にした。
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七十一日目:残金5349550B
収入:なし
支出:シチューの材料500B、皿など300B
収支;ー800B
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