96.シロカの家におじゃましてみました
「さあ、そろそろあたしのエリアに突入するよ!」
自分の家から飛び立っておよそ30分。
北北東をずっと進み続けると、ようやくシロカのエリアに突入するようだ。
これまではイタチのエリアの上空を飛んでいたので、ずっと小雨が降っていた状態ではあった。
エリアが変わると結構環境も変わる事が多いが、シロカのエリアはどんな所なんだろうな?
そう疑問に思いつつ、シロカと一緒に飛び続ける俺。
するとついにその時がやって来た。
エリアが切り替わったその瞬間、天気は一気に変わり、上空から雨雲は消え去った!
暖かい日差しが優しく体を照らし、穏やかに吹く風がまた一層俺を心地よくさせる。
「わあ、穏やかな気候だな。シロカのエリアって」
「ふふ、そうだろ? あたしのエリアは常春気候。つまり、一年中春のような気候を保つエリアなんだ。雨も時々降る程度だから結構過ごしやすいんだよ?」
へえ……
そりゃいいな。
常に春のような気候が続くエリアか。
日本の春はスギ花粉とかの印象があるからあまり好きになれなかったけど、この世界にはそういうものがなさそうだしな。
実際、この世界に来てから花粉の症状は出てないし。
まあ、ドラゴンの体自体、花粉症になるのかどうかもよく分からないんだけどさ。
とにかく、何が言いたいかというと、とても過ごしやすそうだという事だ。
「おっと、そろそろ人目につくかもしれないな。それじゃエンラ、あたしはそろそろ仮面を被るけど、エンラはそのままの感じであたしに話しかけてくれないかい? その方があたしとしては嬉しいんだ」
「ああ、シロカがそう思っているならそうする事にするよ」
俺と言葉を交わした後、シロカは一気にさらに上空へと高度を上げる。
そしてしばらくすると高度を下げて俺の近くに来た時には、以前のような純白の体へと戻っていた。
「お待たせ致しましたわ。エンラさん」
「本当、切り替え早いですね、シロカさん」
「……エンラさん!? 今まで通りの口調でってわたくし申し上げましたよね!?」
「ああ、悪い悪い。シロカがそう話すとつい、な」
ぷんぷんと怒るシロカ。
本当はシロカとしては相手と気軽に接したいんだろうな、きっと。
キュビカもシロカの事情を知っていたから、ちょっとよそよそしい態度をシロカがとっていたように見えても何も言わなかったのかもしれないな。
「あと数分も飛べばわたくし達の集落にたどり着きます。ほら、もうわたくしのエリアの住民がちらほらと見え始めましたわ」
シロカが指す方向を見ると、上空を飛んでいるカモメの姿があちこちに見えた。
どのカモメも緑色のバッグみたいなものを背負っているが、みんなその中に瓶を入れているんだろうか?
「なあ、シロカ? カモメってみんな緑のバッグを持っている気がするが、その中にはやっぱり瓶が入っているのか?」
「ええ、そうですわよ。何ていっても瓶の配達がわたくし達カモメの生き甲斐ですから」
「へぇ、そうなんだな……」
瓶の配達が生き甲斐、ね。
瓶の配達をする事で何か良い事でもあるんだろうか?
その辺りの仕組みはよく分からないんだが、まあ別にいいだろう。
本人達がそうしたいのならそうすればいいと思うしさ。
そのまま飛び続けて数分。
あちこちに緑色の半球みたいなものが目につき始めた。
どうやらあれら一つ一つがカモメの家らしい。
何とも不思議な家だよな。
そんな家を見ているうちに、俺とシロカはある地点で着陸する事になった。
そしてその目の前には……
「うわぁ、デカいな……」
巨大なドーム。
俺の体も簡単に入りそうなほど大きな緑色のドームの家が目の前にそびえ立っていた。
下手したら前世でよく大きさの比較で使われるあのドーム一個分ほどの大きさはあるのではなかろうか?
この建物。
「ようやく着きましたわね。ようこそ、わたくしの家へ! さあ、中へご案内致しますわ」
どうやらこの巨大なドームはシロカの家だったらしい。
俺はシロカに案内されるがままに巨大なドームの中へと入っていくのだった。
ドームの中も緑色の植物の床や植物で覆われていて、一面緑色だ。
いくつかの部屋に分かれているようで、俺はその中の一室を案内された。
「ではエンラさん、少し経ったらまた呼びに参りますから、それまでくつろいで下さいね」
「ああ、分かった。そうさせてもらうよ」
そう言うとシロカは部屋の扉を閉めてどこかへ行ってしまった。
さて、時間ができた訳だが、どうしたもんかな?
やる事もないし、とりあえずこのドームを構成する植物について調べてみるか。
では売却コマンドっと。
@@@@@@@@
この”アレノスアイビー”は所有できないので売却できません。
@@@@@@@@
ふーん、この植物はアレノスアイビーっていうのか。
ちなみに他の部分を調べてみてもみんなアレノスアイビーだったので、アレノスアイビーだけを使って家を作っているようだな。
だから何だって話だが。
だって暇なんだもん。
あー他にやることねえかなぁ?
あっ、この辺りが窓になっていそうだな。
ちょっと開けてみようか。
俺は窓っぽくなっている部分を掴んで開けようとした。
だが、なかなか開かない。
おかしいなあ?
窓を開けるのに悪戦苦闘していると、コンコンという音がしてから誰が中に入ってきた。
「あら、エンラ様、何をしていらっしゃるのですか?」
中に入ってきたのはちょっと小柄な白いカモメだった。
恐らくシロカの召使いといった所か。
「窓を開けようと思っているんだが、なかなか開かなくてな……」
「あら、そうなのですか? ちょっと私が開けてみますね」
こうして俺の代わりに窓を開けようと窓の前に立つカモメ。
窓の取っ手を持つと、その取っ手を内側に引っ張った。
すると窓は開き、部屋に外からの風が中に入ってきた!
……ええっ、まさかの内開きの窓なの?
てっきり窓って外に開くものだと思っていたんだが。
思い込みって怖いものだな……
「窓は開きましたね。これでよろしいでしょうか?」
「ああ、これでいい。ありがとな」
そう俺が言うとぺこりと頭を下げて、カモメは部屋から出て行ってしまった。
それを見届けた俺は窓の外へと目を向ける。
空から見ていても思ったが、このシロカのエリアって一面草原だよな。
所々に木も生えているが、ほとんどは草原だ。
また、小型動物の姿が所々に見えた一方で、大型動物の姿はあまり見かけなかった。
なので、穏やかな場所だなという感想を持つことになった。
刺激になるような事はあまりないが、くつろぐにはもってこいな場所といった所だろうか。
気候も過ごしやすい感じだしな。
別荘を建てるにはちょうど良い場所かもしれない。
もちろん前世では別荘なんてものはありませんでしたが。
「エンラさん、中に入りますわよ?」
そう言って中に入ってきたシロカ。
召使いと一緒に入ってきたのだが、召使いに食べ物や飲み物を持ってこさせているようだ。
「ちょっとしたものしかありませんけれど、ここでお昼に致しません? 長旅でお疲れでしょう?」
「そんなに疲れてはいないが、せっかくだからお言葉に甘えて昼食を頂戴するとしようか」
こうして俺はシロカと一緒に昼食を取ることにした。
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収支;+0B
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