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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
三章 ビジネスショッピング
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78.クマにシチューを販売しました

「お、驚かせてすいません!? 実はぼく、動物の皆さんが白い何かを口につけて嬉しそうな表情をしているのを見かけたんです! それからその白いものがしちゅーだという事を知って。それでそのしちゅーというものはドラゴンさんから買えると聞いて。だからぼく、魚を捕ってきたんです!」



 そう言ったクマは地面に落とした三匹の魚の方を見る。

 なるほど。

 俺を見て魚を落としたのって、もしかして俺と話す為に敢えて落としたのかもな。

 口が塞がっていては話をする事も出来ないだろうしさ。



「なるほど、分かった。でもあいにく今はシチューを切らしてしまっていてな。すまなかったな」

「そ、そうなんですか。ぼく、しちゅーというもの食べたかったんですけど……食べられないですか……そうですかあ……」



 俺の言葉を聞いてガッカリとうなだれるクマ。

 このクマ、完全にひ弱なタイプだな。

 見た目とのギャップがありすぎだろ。

 今のクマなんて、この世の終わりのような顔をしているんだが。

 たかがシチューだけに大袈裟すぎるだろ。

 でもこのまま帰すのも何だかかわいそうだな……

 今のクマの様子を見ていると心が痛むというか何というか。

 とにかく、見ていられないのだ。



「お前が良ければだが……しばらく待ってくれればシチューを渡す事は出来るぞ? 実は俺、今シチューを作っている最中なんだ」

「そ、そうなんですかあ!? あっ、でもそうするとこの魚の価値が下がりますよね。時間経ちすぎると食べられなくなっちゃいますから……」



 ハァとため息をつくクマ。

 確かにクマが持ってきたものは生物である魚。

 俺がシチューを渡すまで待っていたら、その魚は傷んでいって、価値はだいぶ下がってしまうだろう。

 クマの心配はごもっともである。

 それならば―――



「それならこういうのはどうだ? 俺がまずクマからその魚を先に買い取る。そしてクマは後で俺からシチューを受け取る。そうすれば問題ないだろ?」



 俺の言っている事を聞いてもキョトンとしているクマ。

 だがしばらく経つと―――



「そ、それはつまり、ぼくがしちゅーを食べられるって事なんですかあ!?」

「ああ、そういう事になるな」

「ああっ、ありがとうございます! これでぼくも念願のしちゅーを口に出来るのですね!?」



 その場で感動に浸っているクマ。

 その間に俺は地面に落ちている三匹の魚に目を向け、売却額を調べる。

 すると画面には次々に魚の価値が下がっていく表示が!

 早く売らなくては!



「クマさん、その話で大丈夫そうか? それなら早くこの魚を貰いたいんだが?」

「はいっ、大丈夫ですっ! ううっ、本当にありがとうございます、ドラゴンさん……!」



 クマの了承を得たのでさっさと魚を売る事にした俺。

 ふー。

 生物ってやっぱり取り扱い辛いな。

 それだけに新鮮な生物はそれだけ価値があるし、とっても美味しい物なんだけど。

 だからこそ日本では色んな物を生で食べる習慣がある訳だしさ。

 科学技術がないといかに管理が大変な思い知らされるよなぁ。

 現代技術って本当凄かったんだな……。


 さて、いつまでも感傷に浸ってはいられないな。

 早くシチューを作らなければ。

 そうそう、その前にクマにあれを渡しておかないとな。



「クマさん。シチューを受け取る時にはこれを俺に渡してくれ」



 そう言って俺は銀貨三枚の入った財布をクマの首にかけた。



「これは何ですか?」

「これは財布といってな。中に硬貨、お金が入っているんだ。そのお金があれば、俺からシチューを受け取れるって事だ」

「なるほど。つまり、これを失くすとシチューを食べられなくなるんですね!?」

「そういう事だ。失くさないようにしてくれな」

「わ、分かりました。あわわ、これを失くすとシチューを食べられない……大事に、大事にしなくちゃ……」



 そう言ってよろよろと動き始めるクマ。

 おーい、足がフラフラしてるぞー。



「とにかく、俺は茂みの向こう側でシチューを作ってる。シチューができたらみんなに販売し始めるんだが、その時は動物達が列を作って並んでいるから、クマさんはその一番後ろに並んで待つこと! 分かったか?」

「はい! とにかくドラゴンさんの所に行けばいいんですね? 分かりました!」



 本当に理解出来ているんだろうか、このクマは?

 何だかとっても不安なんだが……


 話を終えると、そのクマはフラフラした足取りで森の奥の方へと去って行った。

 ふう、これで何とか一段落ついたかな。


 それにしてもなんだか不思議なクマだったな。

 頼りないというか、弱々しいというか。

 喋らなければ厳つくて危ない普通のクマなんだけどな。

 でもフラフラ歩いていたりオドオドしている所を見れば、やっぱり見た感じでも弱々しいのかもしれないが。

 まあ、何とか丸く収まりそうで何よりだ。



「え、エンラさん、大変です!」

「ん? どうしたんだ、カリス?」

「何だかシチューの様子が変なんです。なんかすごいブクブクしていて……」



 シチューがすごくブクブクしている?

 ……しまった!

 俺、シチューに火をかけたまま放置していたんだった!


 クマとの話し合いを終えた俺はシチューのある所へ戻る。

 するとシチューが沸騰してブクブクしていることに気が付く!

 カリス以外の動物達も何かシチューに異変が起きていることには気付いているらしく、そわそわしていたようだ。

 俺は慌ててシチューにかける火力を弱めて事なきを得たのだった……


 カリスが教えてくれて本当助かった。

 もう一歩遅れていたら、大惨事になりかねない。

 前の世界でも調理中に火をかけたまま目を離すのは危険だとは言われていたが、本当にそうなんだな。

 今度からは火を消してから離れることにしようっと。



 それから俺はシチュー作りを再開する。

 ちょっと焦げてしまったものもあるのでその部分だけは切り落として女神ショッピングで売却。

 使える部分はそのまま調理に使っていくことに。

 そうしてしばらく調理していって、ようやくシチューが完成する!



「シチューが出来たぞ。欲しい奴は店の前に並んでくれー!」



 すると大急ぎで列に並びだす動物達。

 元々列に並んで待っていた動物もいたから、あっという間に長蛇の列に。

 こりゃもう一回はシチューを作らないと間に合いそうにないな……



 シチューを皿に分け、再び動物達に配りだす俺。

 そしてしばらく配っていると、遠くからまた動物の悲鳴が。

 どうやらクマさんが来たようだな。



 のっそりのっそりと俺の方へと近付いてくるクマ。

 クマの姿を見るや否や、店の前に並んでいた動物達は一目散に逃げ出してしまった。

 それだけクマをみんなが恐れているのだろう。



「ドラゴンさん、しちゅーもらいにきたよお」

「ああ、それじゃさっきの財布を出してくれないか?」



 そう俺が言うと、クマは財布を差し出してきた。

 シチュー一杯はおにぎりと同じ値段、つまり銀貨一枚と交換している。

 クマには銀貨三枚入れた財布を渡していたから、一杯分なら全然クマは買う事ができるという訳だ。


 俺はクマの財布から銀貨一枚を取り出し、財布をクマに渡す。

 そしてその後、一杯のシチューをクマに渡した。



「はい、お待たせ。これがシチューだ」

「これが……しちゅー……」



 じゅるりとよだれをすするクマ。

 そして少しの間をあけると、シチューをぺろりとなめるのだった。



「あ、あつぅい!? で、でもおいしい!」

「あっ、すまないな。今更だが熱いから気を付けて食べてくれよ」



 ふぅふぅしながら少しずつシチューを食べていくクマ。

 そして時間をかけてシチューを食べきるのだった。



「ごちそうさま! おかわり!」

「すまないな。シチューは一人一杯なんだ。他の動物達の分もあるからな。食べたかったらまた明後日来てくれ。一日おきに店はやっているからさ」

「そ、そうなんだあ……残念。それじゃ、また明後日くるねー!」



 ご機嫌な様子で帰っていくクマ。

 どうやらシチューはクマの口に合ったようだ。


 ちなみに他の動物達にはシチューを食べ終わったらまた並べば良いとは言ったが、クマの場合は事情が異なる。

 何て言っても、クマがここにいたら、他の動物達が怯えてこの場から逃げてしまうのだ。

 そりゃ、自分を食べるような存在が近くにいれば恐ろしくて逃げるのも当然だろう。


 クマに一日に何度も来られると、他の動物達が怯えてしまって商売にならないので、クマへのシチュー販売は一日一回ということにしたのだ。



********

四十七日目:残金1199050B

収入:魚524B

支出:財布など300B

収支;+224B

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