67.料理をすることになりました
おにぎりパーティーをみんなでした後、俺は家の中でくつろぐ事にした。
ちなみに家の中には俺の他にコクリとキュビカ、ユニとカトカがいる。
みんなが入ってもスペースに余裕があるこの家って結構良いよな。
前に購入した湿気取りもうまく機能しているみたいで、以前よりも湿気は取れているみたいだしさ。
ちなみに湿気を吸い取った部分の重曹は女神ショッピングで売却して処分している。
そうして減った分だけまた新たに重曹を加えれば、ずっと使えるって訳だ。
いらないものを買い取ってくれるっていうのは便利なもんだ。
家の中に廃棄物がたまってしまうこともないし、ゴミ出しをする必要もないんだからな。
そんな広々としたスペースにゴロリと横になってくつろぐ俺。
ちょっと力を使い過ぎて疲れちまったんだよな。
だからこのままゆっくりと寝るとしようか―――
「エンラ、起きておるか?」
「キュビカさんか? 俺はまだ起きてはいるが?」
「ちょっと聞きたい事があるのじゃが、構わないかの?」
「うーん、眠たいから手短に頼むぞ」
わざわざこのタイミングで聞いてこないで欲しいんだけどな……
疲れて眠たいこの時にさ。
「すまないの。ちょっと疑問に思ったんじゃが、エンラってどこで鷹を指導する方法を学んだのじゃ?」
「え、それってどういう事だ?」
「いや、ドラゴンって普通は群れを為さない生き物じゃから、集団で行動する戦術など学ぶ機会がないはずと思ってな」
なるほど。
確かにドラゴンが群れる印象ってあんまりないよな。
そんな生物がどうして集団でうまく行動できるように指揮ができるんだってキュビカが疑問を持つのも当然だろう。
実際、俺はこの世界に来てから集団として行動する知恵なんて全く学んでない訳だからな。
「確かにこの世界に生まれてからは学ぶ機会はなかったな」
「それではまるでこの世界に生まれる前にも生きていたような発言じゃのう?」
「ん? キュビカさんの言う通りだが? 俺、前世は違う世界で人間として生きていたんだぞ?」
俺がそう言った瞬間、この場にいるみんなの動きが硬直した。
ああ、そういえばまだみんなにこの事は言ってなかったっけな。
「あっ、この事を言うのはこれが初めてだっけか? 別に隠すつもりはなかったんだけどな」
「え、エンラは人間だったって、本当なの?」
「お、驚いたんだな……」
「お父さんはドラゴンじゃないの?」
「い、いやカトカ、今はドラゴンだぞ? あくまで前世の話なんだからさ!」
俺の話を聞いてみんなは動揺を隠しきれない様子である。
だがそんな中でキュビカだけは比較的早く冷静さを取り戻していた。
「そういう事なのじゃな。にわかには信じがたい事ではあるが、それならお主の様々な行動にも合点がいくわい」
「というと?」
「例えば違う種族と交流を持とうとする所じゃ。人間は自分一人だけでは生きていけない故、他の人と関わりを持とうとする。そんな人間としての感覚があるのなら、エンラが周囲の生き物と仲良くしようとするのも納得がいくじゃろう」
なるほどな。
普通のドラゴンだったら確かに周囲の生き物と交流を持つなんてイメージはないだろう。
自分一人でも生きていけるほど強力な存在なんだからさ。
俺がそのようにしている理由は、人間の感性が俺にあるからだとキュビカさんは判断した訳だ。
「あと家というものをわざわざ作る事にも疑問を感じておったが、それもお主に人間の感性があるからと思えば納得が出来るじゃろう」
「確かにドラゴンが家造りなんてするイメージないよな。普通のドラゴンは洞窟などに住んでいるイメージが何となくあるしさ」
「じゃが人間の家としては中が寂しすぎる気がするのぉ」
「そういえばキュビカさんは人間の家を見たことがあるんだっけ?」
「そうなのじゃ。これでも長年守り神をやっておった事があっての。人間の暮らしは一通り見た事があるのじゃぞ?」
へぇ、このキュビカが守り神ねぇ。
キュビカは食欲がすごいから、食の神様として奉られていたんだろうか?
「そういえばこの家には調理する器材がないのぉ。赤いレンガも全くないようじゃしな」
「調理する器材か……言われてみれば確かにないな」
今までの食べ物はほぼ全て女神ショッピングで買って手に入れたものだもんな。
それらは当然調理済みだし、そういう物を食べてきた俺には調理器具なんて必要なかった。
だけどたまには調理するっていうのもいいかもしれないな。
自分で苦労して作った食べ物は美味しく感じるだろうしさ。
そういう事も悪くない。
だが、この家に換気用の煙突がある訳ではないので、家の中で火を焚くのはちょっと危ないだろう。
調理するとしたら外に出てやった方が良さそうだ。
「キュビカさん、調理を知っているんだな。キュビカさん自身は調理した事があるのか?」
「もちろんあるぞ。狩ってきた獲物を火でこんがりと焼いてから食う。いつもやっている事じゃろうが」
獲物を火で焼く、か。
確かにそれも一種の調理なんだろうな。
だけどこの様子だとキュビカは火で焼く以外の調理はした事はなさそうだ。
どれ、それなら俺がちょっと腕を振るって、調理とはどういうものか見せてやりますか。
「キュビカさん、調理ってものは火で焼く以外にも色々あるんだぞ? 今からそれをちょっと見せてやるよ」
「おっ? エンラが調理をするってことは、料理が出来るのか!?」
そう言いながらよだれをすするキュビカ。
おいおい、さっきおにぎり食べたばかりなはずなんだが、もう腹が空いているのかよ。
それに俺、一言もキュビカに料理を食べさせるなんて言っていないんだけど。
「誰もキュビカさんにあげるなんて言ってないぞ」
「えー、ケチじゃのう。なら味見位はわらわにさせてくれるな? 確か人間どもは料理を作る際に味見というものをしておったぞ?」
「キュビカさんに味見を任せていたらそのまま全部食べてしまいそうだからダメだ。味見はそうだな―――コクリに頼んでいいか?」
「えっ、私? 私なんかでいいの、エンラ?」
「もちろんだ。コクリは嗅覚にも優れているし、味覚もいいだろうから、とても頼りに出来そうだしな」
戸惑うコクリとそんなコクリをにらむキュビカ。
ちょっ、キュビカさん、怖いって!
「キュビカさんにも後で少し分けてあげるって! だからそんな目をするなよ、頼むからさ!?」
「ふむ、そういう事ならば構わぬぞ」
ひえぇぇ。
やっぱり食べ物の恨みって恐ろしいんだな。
特に食べ物第一のキュビカに対しては一層恐ろしく感じる。
キュビカの前では下手に食べ物の話をするもんじゃないな、うん。
その場でちょっと休んで時間をおいた後、俺は外へ出て料理作りの準備を始めたのだった。
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四十四日目:残金1299326B
収入:なし
支出:おにぎり4000B
収支;ー4000B
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