65.狩り対決が始まりました
翌日以降、俺は鷹の扱いの特訓を続けた。
毎朝の狩りには必ずついて行って、鷹達がどのように狩りをしているのかを観察する。
そしてある程度理解できたら指示を出してみたりした。
だがやはり最初からうまくいくはずもなく、うまく鷹とのタイミングを合わせることがしばらくできなかった。
一羽一羽の鷹に指示ができるようになっても、鷹全体に指示を出すことはまた難しい。
鷹達は総勢十六羽もいる。
そんな大勢の鷹一羽一羽に指示を出していたら時間がいくらあっても足りないだろう。
そこで鷹を四羽で一つの隊を四つ作ることにした。
ちなみに四つの隊はそれぞれイチガの隊、ニーガの隊、サンガの隊、ターガの隊と呼ぶことにしている。
それぞれの隊員は隊長と仲の良い鷹で構成することに。
そうした方が隊としてのまとまりをもって行動しやすそうだからな。
俺がその部隊制度を作ると、事はスムーズに動き始めた。
今までバラバラだった鷹の動きが隊ごとにまとまるようになり、目的を持って動くようになったのだ。
そして隊ごとに色々と指示を出して動きをそれぞれ観察した。
すると隊ごとにも特色があることに気が付く。
イチガの隊は周りをよく見ていて、獲物を真っ先に発見したり、ピンチになっている隊を助けにいってくれたりした。
ニーガの隊は持久力があり、ちょっとした攻撃を受けてもひるまずに立ち向かう事ができる。
サンガの隊はとにかく明るくて、周りの鷹達の気分を盛り上げてくれる。
ターガの隊はスピードが速く、獲物を狩るスピードは部隊一だ。
―――なんか一つの隊だけ狩りと直接関係ない説明になっていた気がするが、まあそこは気にしない方向で。
この特色を活かせばより狩りが効率化できるのではないかと思った俺。
そこで部隊ごとに役割を設けたのだ。
そしてその役割に沿った指示をした所、見事にそれが噛みあった!
やはりそれぞれの長所を活かすことのできるこの作戦はうまくいったようだ。
そんなこんなで練習をしながら、あっという間に十日が過ぎ、運命の日がやってきたのだった。
十日後の早朝。
いつもの狩りに出かける時間である。
だが今日はいつもとは雰囲気が違う。
何しろ、今日はキュビカとの対決の日なのだ。
鷹達からは緊迫したムードが漂ってくる。
「今日が運命の日じゃな。さて、狩る場所はどうする? あと狩る魔物の対象は?」
「そうだな……狩る場所はキュビカさんが決めていいぞ。狩る魔物の種類はそこに多く生息魔物の中から俺が一体選ぶ。それでどうだ?」
「了解じゃ。それじゃあ行くとしようかの。フフフ……おにぎり1000個、楽しみじゃのぉ……」
じゅるりとよだれをすするキュビカ。
やはりキュビカは狩りに絶対の自信を持っているようだな。
だが、そうはさせるものか。
そのために十日間、一生懸命頑張ってきたのだから。
ちなみにキュビカには俺が鷹と特訓している様子を見せていない。
この十日間、狩りは全部俺と鷹でこなすことにしたからな。
だけどそれでキュビカに報酬がなくなるという事は全く納得されなかったので、キュビカには狩りに行かなくても特別に狩りの報酬を与える事にした。
ちょっとずるい気もするが、そうでもしないとキュビカは納得しなかったからな。
俺と鷹達にしても狩りの練習をする必要があった訳だし、必要経費ってやつだ、うん。
では狩る必要のなくなったキュビカは十日間だらけていたのかと言えば、そうでもないようだ。
キュビカが時々ふらっと空白の地に出かけては魔物と戦ったりしている様子を鷹が目撃しているようだしな。
つまり、キュビカの狩りの腕がなまっていることには期待できそうにないだろう。
まあだからこそ、戦い甲斐があるってもんだが。
走って移動するキュビカを追う俺と鷹達。
するとたどり着いたのは分厚い雷雲が覆い尽しているフィールドだった。
確か雷虎のエリアに近い場所だったか。
激しい雨、そして時々響く雷が印象的な場所だな。
「このエリアを狩りの場所に指定したいと思うのじゃが、どうじゃ?」
「えげつない所を選んでくるな、キュビカさんは。……でもキュビカさんに決めてもらうと言ったのは俺なんだから仕方ない。ここでいいぞ」
その言葉のやり取りによって、この場所が狩りの場所に決定した。
というか、よりにもよってこの場所かよ。
このエリアはちょっと危険だと思って、ここで狩りの練習はした事がなかったんだよな……
雷に当たったら危ないし、それに雨が降っているから鷹は飛行しにくいしさ。
圧倒的にこちらが不利な戦いを強いられるという訳か。
「狩る対象の魔物はどうするのじゃ?」
「えっとそうだな……あいつなんてどうだ?」
俺が指さしたのは、大きなテントウムシみたいな魔物だ。
全身黒い甲殻に覆われていて、ちょこっと黄色の紋様があるのが特徴的である。
ちなみにその魔物の名はライメイコクチュというらしい。
この魔物は見渡すと所々に見かけるので、この辺りではありふれた魔物なのだと思う。
「あれがターゲットじゃな。何体狩ればよいのじゃ?」
「そうだな……いつも通り十六体狩るというのでどうだ?」
「了解じゃ。先手、後手はどうする?」
「それはキュビカさんに任せよう。どちらが良いんだ?」
「そうじゃな……ならわらわが先手をもらうとしよう。先手の方が魔物の数が多くて有利じゃからな」
そう言うとキュビカは構えをとった。
ちなみに時間はキュビカの番の時は俺が測り、俺と鷹の番の時はキュビカが測ることになっている。
だいぶ前に買ったデジタル置時計にはストップウォッチ機能もついていたので、時間はそれで測ることに。
「では始めるぞ……3、2、1、スタート!」
俺がそう言った瞬間、キュビカは目にも止まらぬ速さで地を駆け抜けていった!
目の前にいる獲物を瞬殺し、そしてその後すぐにバリアで獲物を囲い込む。
そのまま次の獲物にターゲットを絞り込む。
一体狩ってから次の獲物を狩るまでのインターバルはおよそ五秒といった所か。
実に驚異的なスピードである。
結局その目にも留まらぬ狩りのスピードは終わるまで続き……
「エンラ、16体狩り終わったぞ!」
キュビカがそう叫んだのを聞き、俺はストップウォッチを止める。
すると表示されたタイムは―――
「キュビカさんがかかった時間は―――2分53秒!」
おおっとどよめく鷹達。
まさかキュビカ単独の狩りで3分を切ってくるとはな。
途中で獲物が見当たらなくなって時間ロスした事を考えれば、実質もっと早く狩れていただろうしさ。
実に驚異的なタイムである。
だがだからといって俺は怖気づいたりしない。
これ位のタイムを出してくるのは予想通りだ。
自分達のベストを尽くせばそれ以上のタイムは出せるほど鷹達の潜在能力は高い。
後はこの悪条件をどう切り抜けるかだが……
「キュビカさん、確認したいんだが、この場所で狩りをするのが条件ということでいいのか?」
「ああ、その認識で合っとる。だからこそ存在する獲物の数が多い先攻をわらわはとったのじゃ」
うん、そういう事だよな。
大雨が降りしきる上に雷鳴轟く悪天候。
さらにキュビカが周囲の獲物をだいぶ狩ってしまったという不利な状況。
普通だったら勝ち目はないと思えるだろう。
だが、その状況を変える秘策が俺にはあるのだ。
「分かった。だけどいくらなんでもこの状況じゃこちらが不利すぎるから少し時間をもらってもいいか?」
「ん? 作戦会議ということか? まあ、いいじゃろう。そんな事をしても大差ないとは思うがな」
フフフと笑みを浮かべるキュビカ。
もう勝ちを確信しているという感じだな。
対して鷹達の様子はというと、すっかり自信を喪失していたり、どんよりした雰囲気が立ち込めている。
俺は鷹達を集めて話をすることにした。
「みんな、元気がないな。大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ、エンラさん。こんな悪天候ではまともに飛べないですし、それに雷をみんな怖がっています……」
「うん、この状況じゃ確かに飛ぶのは怖いよな。雷に当たったら命に関わるしさ」
「そうですよ。普通こんな気候になったら外を飛んだりなんてしませんよ、私達!? まともな天候ならまだしも、こんな天候じゃ勝負にすらならないですよ……」
「なるほどな。ならもしもの話だが、これから自分達の狩りの時間だけ天気がものすごく良くなったら、勝てる自信はあるか?」
「それだったら十分可能性はあると思いますが……ってまさか!?」
「ああ、予言するよ。今から3分後、この辺りは奇跡的に天候が良くなる。そしてその時こそが俺達のショータイムって訳だな!」
俺は驚きの表情を浮かべる鷹をよそに空を見上げる。
なるほど、確かに分厚く黒い雷雲はそう簡単に晴れてくれそうにはないな。
だが、この技を使えばどうだ?
「フィールドクリエイト!」
俺はそう叫ぶ。
しかし何も起こらない。
今はな。
「キュビカさん、今から3分後に俺達は狩りを始める。それからタイムを計測してくれ」
「たった3分で良いのか? まあそれでいいのならわらわには別に異論はないが」
「ああ、十分だ。鷹のみんな、3分後に備えて、今見渡す限り見える獲物が多いスポットを教えてくれ。そこから一気に攻めるぞ!」
こくりとうなづいた鷹達。
そして俺達はその場で休みつつ、現状どこにどれだけの獲物が残っているかに関する情報を共有して、狩りに備えるのだった。
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四十四日目:残金1255326B
収入:鷹達の獲物(九日分)512000B
支出:食事など365000B
収支;+147000B
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