54.傲慢なネズミを少し懲らしめてみました
「あっ、これです! 間違いないです!」
ネズミが手に持っている石を見てタヌキがそう興奮気味でそう言った。
ネズミが持っている石は光を浴びると輝くもので、確かにタヌキが言っていた石の特徴と合致している。
「ネズミさん、その石で間違いないそうだ」
「そうか。つまり、そこにいるタヌキがこの石を欲しがっているという事なんだな?」
「ああ、その通りだ。元々その石はタヌキの物だったらしいから、それを返してあげてくれないか?」
「ただでか? そんなのはゴメンだね。だってこの石は今やオレのもの。欲しいのならそれ相応の物と交換しなければ渡す気はないな!」
まあ、そうなりますよねー。
落ちている物を拾うだけなら楽だったんだが、誰かに拾われているとちょっと厄介なんだよな。
力づくで奪うという事も出来なくはないのだが、そうするとネズミとの後々の関係に影響が出てしまう。
ここは丸く収めるように努力すべきだろう。
「それ相応の物というと、例えばどんな物が欲しいんだ?」
「そうだな……あんたが売ってるっていう白くて黒い食べ物となら交換してやってもいい」
「なるほどな。これでいいのか?」
俺はそう言うと自分の手におにぎりを出現させた。
「おおっ、それが例のやつか。そうだな……それならそれを100個で手を打ってやろうか」
「ひゃっ……100個だと!? それはそれはすごい要求をしてきたもんだな。ハハハ……」
「このオレの恩を受けようってんだ。それ位の対価は当然だろ? さあ、はやくよこしな!」
えっ、こいつ本気で言ってんの?
てっきり冗談だとばかり思っていたんだが、どうやらそうではないらしい。
つくづくなめられたものだ。
確かに拾ってくれた事に対して恩を返すべきだろう。
でもおにぎり100個を渡さないと返さないっていうのは、いくらなんでも不合理すぎる。
一種の脅迫ととらえられなくもない。
そっちがそんな態度をとるっていうのならこちらもそれなりの対応をとらせてもらおうか。
「二人とも下がってくれ」
俺から離れるよう二人に伝えると、コクリとタヌキはそっと俺のそばから離れる。
そして―――
「おにぎり100個と交換しないと返さない。それがお前の意思ということでいいんだな?」
「ああ、その通りさ。それとも、200個くれるのか? 別にそれでも構わないぞ?」
「お前の気持ちはよく分かった。なら俺もその思いに応えよう」
そう言うと俺はまず体の大きさと重さをゆっくりと戻していく。
ちなみに今回はこの体本来の重さ、つまり3トンの重さに戻している。
すると俺の体が大きくなるにつれ、ネズミの顔がどんどん青ざめていった。
だがそんなネズミの様子を見ても、俺の変化はまだ終わらせない。
周囲に放っていた”自然の恵み”の使用を止める。
するとネズミはその場でガタガタ震えてへたり込んでしまった。
さらに、俺は足を持ち上げてから地面に足を降りおろした。
するとドンッと周囲に地響きが鳴り、ネズミの体は振動でぴょんと浮き上がる。
その頃にはネズミは白目をむいていた。
……さすがにやりすぎちまったか。
失神してないよな?
「なあ、ネズミさん。その石を返してほしいんだが、おにぎりいくつと交換してくれるのかな?」
「さ……差し上げますとも! お、おにぎりなんていりません! で、ですからどうか命だけは―――」
完全にネズミは恐怖で震えあがっているようだ。
何だかここまでの反応をされると悪いことしちまったなと思ってしまう。
で、でも、ネズミが俺に対してなめた態度をとったのがいけないんだからな!?
「命なんてとらねえよ。それより挑発というか何というか……そういう人を困らせるような事はやめろ」
「は、はい! も、もちろんこれからは人を困らせることは致しません!」
「お前が石を拾ったこと自体は良い事なんだ。せっかく良い事をしたのに、そういう態度をとってると、みんなに嫌われるぞ? ほら、これはお前にやる。少しは反省しろよな」
「あ……ありがたきお言葉でございます!」
ネズミは石を俺に渡し、俺はネズミに先程出したおにぎりを渡す。
そして俺は再び”自然の恵み”を発動させ、体重を普段の重さに戻してから、その場から立ち去っていった。
「あっ、エンラ! その石を持っているという事は、うまくいったのね?」
「ああ、まあちょっと強引ではあったがな。多分丸く収まっただろう」
「ドラゴンさん。本当に……ありがとうございます!」
俺は石をタヌキに渡した。
するとタヌキは石をじーっとしばらく見つめている。
「どうしたんだ、タヌキさん?」
「あっ、いや、とてもきれいな石だなーと思って」
「本当にそうだよな。どこで拾ったんだ?」
「確かあっちの方の川辺で拾ったって言ってた気がします。でもオラ、そこに何度も行ったことあるけど、似たような石は見た事ないんです」
「そうなのか。その石は本当に珍しいものなんだな」
珍しい石。
しかもこんなにキラキラ赤く輝くきれいな石なんだ。
そりゃあ、一生の宝物にしたくもなるわな。
「一刻も早く、妹さんにその石を返してあげないとな」
「はい! きっと喜んでくれると思います!」
満面の笑みを浮かべるタヌキ。
それにつられて俺やコクリも自然と嬉しくなる。
誰かを助けるっていうのはいいもんだな。
それから俺達はタヌキの住処付近まで行き、タヌキは自分の住処に石を持って行く。
するとその後、兄タヌキと妹タヌキが二匹で外に出てきた。
二匹からお礼を一緒に言われ、そして報酬のアレノスマロン5個を渡されたのだった。
「本当に助かりました、ドラゴンさん!」
「ドラゴンさん、本当にありがとう」
「二人とも嬉しそうで何よりだ。また何か困ったことがあったらいつでも言ってくれな。あと今後とも俺の店をごひいきにな」
「それはもちろんです! またドラゴンさんの美味しい食べ物買いに行きますとも! 今度は妹と一緒に!」
「お兄ちゃんと一緒に行くよ」
「ふふ、それは楽しみだな。それじゃあな、タヌキさん達。またお店で会おう」
「「さようならー!」」
二人に見送られながら、俺とコクリは自分の住処へと戻っていった。
特に何事もなく住処のテントの近くにまで到着した俺達。
するとテントの近くにはカトカ、ユニ、キュビカ、鷹達がみんな集まっているようだった。
何かしているんだろうか?
しばらく様子を見ていると、キュビカが俺の近くまでやってきた。
なんだ、俺が帰ってきたことに気が付いていたのか。
『おかえりなさい、エンラ』
「ただいま……ってええ!? 何だよキュビカさん、その口調は!?」
「なに、ニホンゴというものを試しに使ってみただけじゃ。その様子じゃ、うまく話せたようじゃな」
愉快そうにケラケラと笑うキュビカや他の皆さん。
キュビカが日本語の勉強しているなんて聞いてねえよ……
「キュビカさんいつの間に日本語を勉強していたんだ? 俺が直接教えた事はないはずだが?」
「なに、わらわにはターガという頼もしき鷹がいるものでな。こいつが何から何まで教えてくれよった。じゃからニホンゴをわらわが身につけるのもさほど驚く事はあるまい?」
なるほどな。
コクリやターガの二人には早い時期から日本語を教えているし、特に日本語を深く理解しているだろう。
だからこそターガが他の人、例えばキュビカに日本語を教えるという事も別に不思議ではないのか。
「それよりエンラ、早くメシじゃ。金ならあるから早く用意するのじゃ!」
「ああ、分かった分かった。今から準備するからちょっと待ってろよ」
やっぱりキュビカはぶれないなあ。
時間は13:50。
確かにちょっと遅い昼食にはなってしまったから、みんなお腹を空かせていることだろう。
いつものようにみんなは持っている硬貨と食べ物を交換して、昼食をとり始めた。
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二十七日目:残金7048126B
収入:なし
支出:おにぎり100B
収支;ー100B
アレノスマロン5個は女神倉庫に収納。
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