53.探し物がある場所を見つけました
「エンラ、探している物はそのタヌキさんの物なのよね? そしたら私がちょっと匂いで追ってみようと思うんだけど」
「おっ、それはいいな! 多分このタヌキの物だとは思うが、一応聞いてみるよ」
こうして俺は探している石はタヌキ自身の物なのかを聞いてみることに。
すると……
「いや、実はオラのではなくて妹の物なんです……。妹が石をなくしてからしょんぼりして元気なくなっちゃって……」
「えっ、そうだったのか!? てっきり自分の物を探しているのだとばかり……」
「別に隠すつもりはなかったんですけど……すいません」
「いや、謝らなくてもいいさ。それより、その妹さんに会う事ってできるか?」
「あっ、はい、できますよ。……ですが一つだけお願いしてもいいですか?」
「ん? お願いって何だ?」
「妹には石を探している事を内緒にしてくれませんか? 見つけて驚かせてやりたいんです……」
ああ、そういう事か。
大切にしていた石を何気なく渡して妹を驚かせてやりたいということだな。
タヌキもなかなか粋な事を考えるもんだ。
「ああ、それはもちろんだ。ただ、石を探す為にこのオオカミに妹さんの匂いを嗅がせてほしいんだが……」
「な、なるほど! オオカミさんなら嗅覚が鋭いでしょうし、匂いで探す事も可能って事ですね! ただ、そうなるとどうやって言えばいいのか……」
確かに事情を話さずに匂いを嗅がせてもらうのって難しいよな。
やっぱりここは素直に事情を話すべきじゃないか?
タヌキには悪いけどさ。
下手にウソ言って疑われるのも良くない気がするんだよな……
「あっ、大丈夫です。オラに名案が浮かんだのでドラゴンさん達は心配しないで下さいね!」
「そ、そうなのか? 大丈夫ならいいんだが……」
タヌキは自信に満ち溢れた表情をしているので、よほどの名案が浮かんだという事だろう。
何とかなるなら俺はとやかく言う必要もないよな。
ここはタヌキに任せよう。
俺達はタヌキについていく。
すると大きな岩の近くまでやってきた。
「ドラゴンさん達はここで待っていて下さいね。妹を呼んできますから」
そう言ってタヌキは岩と地面に空いている隙間のような所に入っていった。
隙間の先に妹がいるってことは、そこがタヌキの住処になっているという事か。
岩の下に空間が広がっているなら確かに雨宿りもしやすそうだし、入口も目立たないから警備もしやすそうでいいな。
野生の動物はこうやって住みやすそうな地形を探して住処にするんだろうな、きっと。
「お待たせしました。ドラゴンさん、連れてきましたよ」
すると二匹のタヌキが穴からひょっこりと現れた。
多分話している方が先程まで一緒にいたタヌキで、もう一方がその妹なんだろう。
目がキリッとしているのが兄、目がとろんとしているのが妹といったところか。
俺とコクリをきょろきょろ怯えながら見渡す妹。
すると急に俺に近付いてくんくんと匂いを嗅ぎ始めた!?
少しすると次はコクリの所に近付いてくんくん嗅ぎ始める。
その後、恥ずかしそうに大急ぎで妹は兄の後ろへと隠れてしまった。
「よくやったな。じゃあ後は戻っていいぞ」
こくんとうなづいた妹はそそくさと穴の奥へと消えてしまった。
一体さっきのは何だったんだろうか?
「えっと、これはどういう事なんだ?」
「あっ、これはですね。オラがひいきにしているお店の人が挨拶しに来たから妹に挨拶するように言ったんです」
「挨拶? その割には何も喋っていなかった気がするが? それにくんくんと匂いを嗅ぐような不思議な動作をしていたし」
「ああ、それはドラゴンさん達の挨拶は互いの匂いを嗅いでするものだと妹に教えたからです。こうすれば自然と妹の匂いを嗅げますよね?」
えっ……?
まあ確かに匂いを嗅ぐ事はできるかもしれないが……
俺とコクリが匂いを嗅ぐ挨拶をするものだと誤解されてしまっているのはちょっと気になるな。
別にそういう挨拶をする生き物も本当にいるだろうし、それ位の誤解ならどうってことないか、うん。
それより問題なのは、コクリがタヌキの妹の匂いを覚えられたかどうかだ。
「コクリ、タヌキの匂いは覚えられたか?」
「ええ、ばっちりよ。これから探してみるからちょっと待ってて」
コクリはそう言うとくんくんと周囲を嗅ぎまわる。
「こっちの方からうっすらと匂いがするわ。ついてきて」
どうやらコクリが匂いを見つけたようだ。
コクリがどこかへと進んでいくので、俺とタヌキは静かについていくことに。
しばらく歩いていると、ある木の前までたどりついた。
「この木から匂いがするわ」
「この木から……? あそこに穴が空いているから、もしかしてあの穴に住む何者かが持っていると言う事か?」
赤く輝く石を落としたという事だし、もしそれが落ちていたら他の生物がそれを拾わないとも限らないよな。
これは厄介な事になりそうだ。
「オラ、ちょっと行ってきます」
「おいおい、ちょっと待て。お前のその体では大きすぎてあそこの穴に入れないだろう?」
「で、でも……ドラゴンさんとオオカミさんよりは体が小さいですし……」
「今のままならな。だが、これならどうだ?」
俺は自身にサイズチェンジを使い、体を小さくした。
「……!? ドラゴンさんの体が小さくなった!?」
「そうだ。俺は体の大きさを自在に操れるからな。小さくなる事もたやすいってことだ」
「なるほど。ではここはドラゴンさんにお任せします」
「ああ、そうしてくれ。ここでコクリ、いやオオカミと待っているんだぞ」
「分かりました」
「コクリ、タヌキと一緒にここで待っていてくれ」
「ええ、分かったわ。気を付けてね」
俺はコクリとタヌキに見送られながら木に空いた穴の中へと入っていった。
穴の中は薄暗く、そして複数の道に分かれているようだ。
そしてその中には無数の気配が感じ取れる。
「何者だ、お前?」
そう声がした方を振り向くと、そこにはネズミがいた。
「ああ、いきなり訪ねて悪いな。俺はエンラというこの辺りで商売やっているドラゴンだ」
「商売、ドラゴン……あのウワサになっている美味しい物と交換してくれるドラゴンさんって事か。なるほどな。で、そんなドラゴンさんがこんな所に何用で?」
「とある探し物をしていてな。赤く輝く石みたいなものってあったりしないか?」
「赤く輝く石? ああ、確か持ってる奴がいたな。呼んできた方がいいか?」
「ああ、そうしてくれると助かる」
「分かった。ちょっと待ってろよ」
そう言うとネズミは奥へと引っ込んでいく。
そしてしばらくすると、二匹のネズミが目の前に現れた。
「これの事を言っているんだよな?」
そう言ってネズミが見せてきたのは、赤い石だった。
この場に光があまり差し込まないからか、輝いては見えないが。
「多分そういう物なんだが……実は探し主が外で待っていてな。ちょっと外まで来てもらってもいいか?」
「外? ああ、別に構わないが」
こうして俺はネズミを連れて外へと出る事にした。
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