47.キュビカは自制をしないようです
俺は自分が考えた狩りに関する報酬の仕組みを話した。
その際、どの獲物を狩ってくれば報酬がどれだけ入るのかを説明することになった。
ツインヘッドは金貨10枚、リトルベアーは金貨2枚、リトルヘッドは金貨1枚、フォレストラビットは銀貨5枚という感じにな。
つまり、女神ショッピング売却額の十分の一の価格で買い取ることになる。
ちなみに鷹達はフォレストラビットの価値が低いのは何となく分かっていたようだった。
だが他の獲物の価値については分かっていなかったようで、ふむふむとしきりにうなづいていた。
「なら、ツインヘッドを狩りまくればいいって事じゃな?」
「まあそうした方が報酬は多くなるが……くれぐれも狩りすぎるなよ? 絶滅させてしまっては長い目で見ると大きな損失になるぞ?」
「それ位分かっておる。こうなったらわらわも久しぶりに鷹と一緒に狩りをするとしようかの。だからエンラ、早く体を軽くするのじゃ!」
そうちょっと怒り気味で言ってくるキュビカ。
おいおい、その件で俺に怒るなんて理不尽なんだが?
体重を元に戻す事になったのはキュビカが暴れているのを止めるためだったんだからさ。
なんか納得いかないな。
……まあ、ウェイトチェンジをかけないといけないというのは、俺がキュビカの弱みを握っているようなものだもんな。
ウェイトチェンジをかけなければキュビカの行動は大きく制限される訳だし。
いざとなったらそれを脅しに使うか―――って腹黒すぎるだろ、それ。
とにかくキュビカに行動してもらった方が俺としても助かるし、断る意味はないだろう。
俺がいつもの方法で少しずつキュビカの体を軽くしていく。
そして俺が体を軽くし終わると。
「わらわは地上から攻める! 皆は空からわらわの援護をするのじゃ! 目指せ、金貨160枚じゃぞ!」
「「「おー!」」」
金貨160枚って……
おいおい、ツインヘッドを16体狩るつもりかよ!?
俺の話聞いていたのか、キュビカさん?
絶滅したら元も子もないんだぞー?
俺の心配を他所に、キュビカは地面を走り抜けていき、鷹達は空へと舞い上がった。
……もうどうなっても知らないよっと。
それからは、キュビカと鷹がツインヘッドを持って来てはまた出かけの繰り返す。
その間、だいぶ時間がかかっていたので、俺やコクリ達は朝食を取っていた。
ちなみに俺はお目覚めセット、他の人はサンドイッチを食べました。
そんなこんなで食べながら待っていると、最終的には本当にツインヘッドを16体狩ってきてしまった。
「ふう、これで文句あるまい。さあ、早く金貨を寄越すのじゃ!」
「……ああ、分かってる。キュビカさんには白金貨3枚金貨2枚、他の鷹達には金貨8枚な」
俺はそう言って俺はキュビカや鷹達に報酬を渡した。
あと、ついでに夜の見張りをしてくれた者達にへ金貨1枚を追加で渡しておいた。
ちなみに鷹以外にはもう渡し終わってます。
「えっと、これでおにぎり何個食べられるのじゃ?」
「おにぎり換算にすると320個だな。今までの狩りに比べるとおよそ三倍以上の報酬にはなる」
「おおっ、それは凄いのう! なら明日もまた同じようにすれば……ふふふ」
「えっと、張り切るのはいいんだが、本当に大丈夫なんだろうな? あとツインヘッドは何頭位生息している?」
「……えっと、多分百頭はいるのじゃ。だから心配はいらぬ」
「多分? キュビカさんのエリア内だから大体の生物の事は把握しているんじゃなかったのか?」
「……も、も、もちろんそうだとも! わらわが間違えることなどある訳がなかろう!?」
うーん、何か怪しいな……
ここは鷹達に聞いてみるか。
「なあ、鷹のみんな、お前達はどこで狩りをしているんだ?」
「私達はここから北に向かった所にある土地で狩りをしています」
「北の地……そこもキュビカさんのエリアなのか?」
「い、いえ、それは……」
話している鷹の目が泳いでいる。
これはますます怪しくなってきたな。
「じゃあ正直に言った奴に金貨1枚―――」
「はい! そこはわらわのエリアではないのじゃ! エリアボス不在の空白の地と呼ばれる土地じゃから、そこの獲物を狩っても誰もとがめられないんじゃぞ!」
って、キュビカが言うんかい!
言えるならさっさと言ってくれないと困るんだけどな……
隠していたキュビカにはもちろん金貨なんてあげないことに。
かなりぶーたれていたけど、こんな事で金貨をあげていたら、何事も金貨をくれないと答えないなんて事になりそうだし、ダメなのである。
むしろ下手に隠そうとするなら金貨没収にした方がいい位だ。
とにかく、狩場はキュビカの土地でない以上、何をどれ位狩っても問題ないかは全く把握出来ていないということになる。
これは生態系を調査した方が良さそうだな。
どの生物がどれ位生息しているのかという情報は狩りにも繋がるし、俺たちの身の安全にもつながってくる。
知っていて損はないよな。
という訳で、周辺の調査する必要がある。
その際、できれば狩りとは無関係の人物に調査役をお願いした方がいいだろう。
関係する奴に任せたら、狩りが出来るように実態よりも多く生息するなんて事を言いそうで怖いからな。
となると頼めるのはコクリ、カトカ、ユニ位になるか。
カトカとユニに任せるのは何となく不安がのこるし……
うん、ここはこうしようか。
「コクリ、この北の地域の生態系を調査したいんだが、協力してくれないか?」
「ええ、もちろんいいわよ」
俺自身がコクリと調査する、それが一番だろう。
コクリ一人に任せるのも不安だし、かといって、カトカやユニは日本語が話せないからコクリと連携が取れない。
となれば俺が出るしかないという事だ。
そもそも調査といっても目視になるだろうし、大雑把な数しか分からないと思う。
なら自分自身が行った方が早いんだよな、うん。
口頭で聞いただけだと感覚が全然掴めないだろうしさ。
という訳で、キュビカ達に留守を任せ、俺はコクリと北に向かう事にした。
北がどちらか分からなかったが、コクリが分かるみたいなので、コクリについていく事に。
そしてしばらく歩いて行くと木々が段々と少なくなり、次第に周囲の環境は荒地へと変貌した。
「おわっ!? なんだこの環境の差は!?」
「キュビカさんのエリアから外れたからよ。キュビカさんの力が及ばない地だから、もちろん環境も変わるし、景色も変わるでしょうね」
「へえ、そうなのか。そう考えるとキュビカさんってやっぱり凄いんだな……」
俺はこの世界に生まれてからずっとキュビカのエリアで過ごしてきた。
だからこそ、周囲には自然豊かな環境が広がっており、それがこの世界では当たり前だと思っていた。
だが、キュビカのエリアから外れるとこんな荒野地帯になるなんて、いかにエリアボスの影響力が強いか実感させられるな。
キュビカのエリアから外れてもそこに隣接している地域は自然が残っていて、キュビカの影響を受けているみたいだしさ。
「という事はキュビカのエリアみたいに自然豊かな環境って珍しいのか?」
「そうね……あそこまで安定した環境はないわ。自然豊かなエリアはあるけど、エリア自体がとても狭いか、自然の豊かさにムラがある事がほとんどだもの」
自然の豊かさにムラがある、か。
エリアボスが力を注ぎ込んで自然が豊かになるのなら、一部分に豊かさを集中させて一部分は捨てるという事も出来るんだろうな。
むしろ力のないエリアボスだったら全エリアを豊かにする余裕がないだろうから、そうせざるを得ないだろうし。
エリア内がムラなく豊かな状態を保つだけでも大変っていう事なんだろうな、きっと。
そしてここはエリアボス不在の土地だからこそ、土地は荒れているって訳だな。
その割にはポツポツと生き物の姿は見えるが。
でも数自体はそこまで多くはないように見える。
「全然生き物がいないように見えるが、本当にキュビカさんと鷹達ってここで狩りしているのか?」
「どうなのかしらね? とにかくさっさと調査を始めましょうか。空白の地ってあまり良い噂を聞かないから長居はしたくないのよね……」
「ああ、分かった。早く終わらせようか」
俺はコクリと一緒に周囲を観察しながら大地を一気に駆け抜けていった。
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二十日目:残金6926576B
収入:ツインヘッド1600000B
支出:朝のお目覚めセット1000B、サンドイッチ600B
収支;+1598400B
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