43.巨大米粒はボリュームがあるみたいです
「今回キュビカさんが欲しい物はなんだ?」
「わらわはおにぎり50個とあのフワフワしたもの50個を所望する!」
「おにぎりとサンドイッチか。分かった」
「お主、そういえばその食べ物の用意はいつしておるのだ? そんな大量の物、用意している様子は見られないのじゃが……まさか、長時間放置したものをわらわによこしていたのか!?」
「そんな訳ないだろ。ちょっと見ていろよ」
俺は女神ショッピングを起動し、そしておにぎりを1個購入した。
そして俺の右手の上におにぎりが出現したのだった。
「ほれ、こういう感じだ。俺が使える一種の魔法みたいなもので食べ物を作り出しているっていう所だな」
「魔法じゃと? そんな魔法は聞いたことがないんじゃが……。実際に起きているという事は存在するんじゃろうけどの」
「そうだ。その魔法によって作り出しているからこそ、俺はキュビカさんに新鮮な食べ物を要望の通りに提供できるという訳さ。ただこの魔法、魔力ではなく対価を要求されるものでな。何かをもらわないと、何かを手に入れる事はできないんだ」
「なるほど。じゃからお主はわらわに対価を要求したということじゃな?」
「そういう事だ。こちらも無制限にそういう事ができる訳じゃないからな」
女神ショッピングが無制限に使えてしまったら、途方もないことになるよな。
強力なスキルは身につけ放題だし、食べ物も好きなものを好きなだけ食べられる。
住居だって、あと多分暇つぶしの物だって手に入ってしまう。
それができたらどんなに良い事かと思うが、できないものは仕方ないのだ。
けど、今の俺には500万弱の所持金がある。
チートスキルを身につけるにはまだ足りないが、多くの事ができるようになったのではないだろうか。
まあそのお金は俺の生活に欠かせないものだから、あまり浪費をしようとは思わないんだけど。
「魔法で作り出すとはいうが、そんな物を食べて大丈夫なんじゃろうか?」
「そうだな……正直俺にもこの食べ物がどこから来ているのかさっぱり分からねえ。でも美味いからそれでいいじゃないか。それを食べて今の俺は問題なく生きることができている訳だしさ」
「まあ、確かにそうじゃがの……」
「嫌なら食べなければいい。だが、キュビカさんの好きなおにぎりやサンドイッチはこの魔法でないと手に入らない。なら、どうするよ、キュビカさん?」
原産地不明。
そして食べ物がどこから来るのか、それは本当に食べても平気な物なのか、それらを知る術は一切ない。
その現状はいくら取り繕った所で変わりようがないのだ。
だからこそキュビカには正直に話した。
今後長く取引をし、そして仲間としてやっていきたいからこそ、今の現状を知っておいてもらいたい。
俺と取引するとはどういうことなのかを理解した上で、取引してほしいのだ。
「……もちろん、食べるに決まっているじゃろ。もしおにぎりというものがわらわにとって害のあるものでも、こんなに美味いのじゃ。美味い物を食って死ぬのなら、わらわとしても本望じゃ」
「ハハハ、言ってくれるな、キュビカさん。なら俺と取引することには何の問題もないよな。じゃあ取引を再開するぞ」
美味い物を食べて死ぬのなら本望、か。
そういえば昔の日本で、フグの肝に毒があると知りながら食べて死んだ人がいると聞いたことがある。
その人の気持ちも今のキュビカと似たような気持ちだったんだろうか?
まあキュビカの場合は毒と確定したものを食べる訳ではないから事情は少し異なるけど。
俺は取引をするため、先程出したおにぎりを口に入れながら鷹の獲物の売却額を計算する。
今回の獲物はフォレストラビットが2体、リトルヘッドが6体、ツインヘッドが4体、リトルベアーが3体。
売却額は53万B。
もちろん余裕でキュビカが要求するものの価値を上回る。
「この獲物であれば、キュビカさんが欲しい物を出すことは出来そうだ」
「そうか! なら早く交換してもらっても良いか!?」
「分かった、交渉成立という訳だな。ならまずこの獲物を先に俺が貰わせてもらうぞ」
俺はそう言ってキュビカの了承を得てから、獲物を次々と売却していった。
そして売却が終わってから、大きな袋を購入し、その袋の中にキュビカの要求するものを購入して入れていく。
「おおっ、こんな感じで現れていたのじゃな! 何だか不思議な感覚じゃ……もう食べてもいいかの?」
「おっと、ちょっと待ってくれ。食べる前にはまずさっき言った米粒を食べてもらうぞ」
米粒(100粒)はもう100粒分使い切ってしまったようなので、俺は新たにそれを購入する。
ついでに水も切れてしまったので、水2リットルも購入。
そして米粒を一粒出し、それをサイズチェンジで等身大サイズまでに巨大化させた。
「はい、これを食べ終わったら好きなだけ食べていいぞ」
「分かったのじゃ。―――お主もわらわと同じ事をすると言ったこと、忘れてはおらぬだろうな?」
「ギクッ!? わ、忘れてなんかないぞ。いいさ、やってやるぜ」
俺は巨大米粒をキュビカに渡した後、自分用の巨大米粒を用意する。
そしてせーので同時に俺とキュビカは巨大米粒を食べ始めた。
「味気ないの……食感がいいのはいいんじゃが」
「確かにこれを食べ続けるのは辛いな。でも、我慢するんだ。これさえ食べれば、後は自由なんだからさ」
「……そうじゃの。もう少しの辛抱じゃ」
俺とキュビカは何とか頑張って巨大米粒を平らげた。
ふう、もうこんなもの食いたくないわ……。
というか、かなり胃にたまるな、これ。
食欲がだいぶ薄れるわ。
というより、よく自分の体と同じサイズの物が胃の中におさまるよな。
俺とキュビカの胃の構造ってどうなっているのやら。
実に不思議だ。
そんなにボリュームのある巨大米粒ではあるが、栄養自体は小さな米粒一粒分しかないだろうから、何かを食べないといけないんだよな。
でないとまた前の時のように体に力が入らなくなってしまう。
うーん、辛すぎる。
一方でキュビカはというと、巨大米粒を食べた後だというのに、大きな袋に入っているおにぎりとサンドイッチをすごい勢いでむさぼり始めた!
すごい食欲だな、キュビカさん……。
俺よりも断然胃袋が大きいんだろうな、きっと。
結局キュビカはあまり時間が経たないうちに、おにぎりとサンドイッチを平らげてしまった。
「これはなかなか満足感があるのぉ。こんな感覚は初めてじゃ」
「それは良かった。というかよくそんなに食べられるな。俺は米粒食っただけで、ほとんどもう限界に来ていたんだが」
「フフフ、わらわの食欲を甘くみるでないぞ? じゃがわらわもさすがにもう食べきれん。いつもなら追加で鷹達に狩りをさせるんじゃがのう……」
そういうものなのか。
というか薄々思っていたんだが、キュビカって大量に獲物を鷹達に狩らせているよな。
いつかその生物は絶滅してしまうんじゃないか?
「キュビカさん、あまりに獲物を狩り過ぎていると、いつかその獲物が死に絶えて狩れなくなっちゃうんじゃないか?」
「ほほ、その心配は無用じゃよ。そうならないように、鷹達には毎回違う場所に生息する生物を狩るように命じておる」
「なるほどな。それで大丈夫ならいいんだが……」
「大丈夫じゃ。最近は何故か特に植物の生育も、動物や魔物の成長スピードも早くなっておるしの。食料が多ければ自然とそれを食べる動物もそれにつられて増える。それにあまりに減り過ぎないよう、わらわはしっかりと管理しておるからの」
まあそうだよな。
エリアボス様だしな、キュビカさん。
エリア内にどれ位の生物が生息しているのかなどを感じる事ができるのだろう、きっと。
それを踏まえた上で大丈夫というのなら、これ以上俺がとやかく言う筋合いはない。
「そういえばあそこに生えている植物……アレノス・ピュアではないか? なんであんな所に生えておるじゃ? ここいらで生息できるはずないのじゃが……」
アレノス・ピュア?
あっ、もしかしてコクリからもらった植物の事を言っているのか。
あれは丘の方から持ってきたものだし、コクリによれば珍しい植物らしい。
生息地が限られている植物なんだとしたら、ここに生えているのは異様に見えるんだろうな。
「ああ、あれはコクリがくれた花束を植えておいたものなんだ。茎から切断しているからいつかは枯れてしまうとは思っていたんだが」
「でも全然枯れてなどおらぬではないか。むしろ種までできておるぞ?」
おっ、確かに言われてみれば種らしきものがある。
俺はその種を取って、いくつかを地面に植え、いくつかをカバンの中に入れておいた。
「お主、茎から切断されたものを持ってきたと言ったな?」
「ああ、そうだが、それがどうした?」
「これを見るがよい」
キュビカが言っているのは、アレノス・ピュアが生えている地面部分。
キュビカはその地面をいくらか掘ったようで、そこを指さしているようだ。
俺は指差されている所を見ると―――
「な、なんだこれは!?」
アレノス・ピュアの茎の断面から直接根っこのようなものが生えているのが見えたのだ!
切断された茎の断面から根っこが生えることなんてあるのか?
あまり俺は聞いた事がないのだが。
「すごい生命力じゃ。アレノス・ピュアがこんな生命力を持つのならそこら中にあふれているはず」
「だけどそうはなっていないよな。一体どういう事なんだ?」
「見ればここら一帯の植物は比較的みな活き活きとしているように見えるの。もしや、お主が影響しておるのではないか? 心当たりはないのかの?」
俺が影響しているだって?
とはいってもそんな事に心当たりは―――あっ、もしかして!?
「俺は普段から魔力を放出する体質みたいなんだが、その魔力を【自然の恵み】という技を使い続けて絶えず消費してきている。まさかそれが原因なのか?」
「そうかもしれぬな。お主が何か技を使っているという感じは見受けられぬが、この状況から考えるに、その技の影響は少なからずあるのじゃろう」
そういう事だったのか。
自然の恵みという技は自分の周囲の植物、自然を活性化させる効果があるんだな。
すぐに目に見えて効果が出る技ではないから全く気付かなかったけど、しっかりと効果は発揮されていたということか。
まあそういう自分の周囲の植物が元気になってくれるのなら、それは良い事だし、このままでいくことにしよう。
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十九日目:残金5512697B
収入:フォレストラビット10000B、リトルヘッド60000B、ツインヘッド400000B、リトルベアー60000B
支出:米粒1B、水100B、おにぎり5100B、サンドイッチ10000B、大きな袋400B
収支;+514399B
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