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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
二章 ライフショッピング
27/357

27.対等な取引とは何か考えてみました

 外から溢れ出る日の光によって目が覚める。

 あー、よく寝た!

 あっ、日の光を感じるってことは、雨が止んだのか!?


 俺はテントから外へと出てみる。

 するとそこには―――



「うわぁ、綺麗な虹だなぁ……」



 空を見上げると、一面の青空で、頭上には大きな虹がかかっていた。

 雨上がりのこういう景色って何だかいいよな。

 気持ちも晴れやかになるし、スッキリする!



「あらっ、エンラ、今日は起きるの早かったわね」



 そう声をかけてきたのはコクリだ。

 のっそりとテントの中から俺をのぞいている。



「コクリも見てみろよ、とっても綺麗な虹だぞ!」 

「虹……? あっ、本当に綺麗ね! こんなに綺麗な虹を見たのはいつ以来かしら……」



 俺はコクリとしばらくの間、虹をボーッと眺めていた。 

 こういうのんびり過ごす時間も悪くないな。



 ……ん?

 なんだか多くの気配がこちらにやってくる感じがする。

 これはもしかして―――


 俺が気配のする方を見てみると、そこには大勢の鷹がこちらに向かってきている様子が見えた!

 そういえば九尾と取引するって話だったっけ。

 だから早速補佐役の鷹を寄越したって訳だな。



「ドラゴン様はいらっしゃいますかー?」

「俺はここにいるぞー!」



 俺の言葉を聞いて位置が分かると、鷹達は一斉に急降下し、俺の近くまで舞い降りた。

 ……音もたてずに急に近付いてくるもんだからびっくりするよな。

 それに今の俺はテントの中で休むためにいつもより体を小さくしているもんだから、一層迫力を感じられる。



「えっと……九尾様の取引相手のドラゴン様でお間違いないですよね?」

「ああ、俺で合ってるぞ。事情があってその時よりも少し小さくなってはいるが、まあ気にしないでくれ」



 見た目は変わらなくても大きさがだいぶ小さいから、本当に九尾と出会ったドラゴンと今の俺が同じなのか確信を持てていないようだな。

 まあ大きさがそんな簡単に変わるような生物はいないだろうし、そうなるのも無理はないんだけど。



「そ、そうなのですか。では私達がここへ来た用件もご存じですよね?」

「ああ、知っているぞ。対価に値する物を持ってきたから、要求するものを寄越せっていうことだよな?」

「お話が早くて助かります。では早速あなたにお渡しするものを渡してしまいましょう」



 すると鷹は足でつかんでいた獲物を俺の前に山積みにした。

 獲物から腐敗臭はしないので、まだそこまで死後から時間は経っていないんだろう。



「これが私達が出せるものです。それと九尾様の要求はおにぎり百個だそうですが、どうでしょうか?」

「なるほどな。ちょっと待ってろよ……」



 鷹は十五羽いて、一羽ずつそれぞれの鷹が何かしらの獲物を持ってきたようだ。

 ……交渉材料が全て動物や魔物の獲物って容赦ねえな。

 鮮度が命のモノだし、こりゃ買い取らずに返した所で九尾の怒りを買うだけだぞ?

 つまり全部買い取れということか……

 てっきり植物や木の実などを織り交ぜてくるとふんでいたんだが、どうやら考えが甘かったらしい。

 とにかく早速一つ一つ調べてみるとするか。



@@@@@@@@


 ”フォレストラビット”を売却しますか?


 売却額 5000B


@@@@@@@@



 うっ!?

 いきなりの高額じゃねえかよ!?

 これだけでおにぎり50個分に該当するじゃねえか……

 まあ実際はこちらに利益が出るように渡すつもりだからもう少し実際に渡す量は減るだろうけど。

 とにかく、次だ。



@@@@@@@@


 ”リトルヘッド”を売却しますか?


 売却額 10000B


@@@@@@@@



 リトルヘッドっていう位だから、あのツインヘッドの子供とかそういう所だろうか?

 価値はツインヘッドの十分の一みたいだが。


 って、もうこの二つの物だけで、要求のおにぎり100個分の価値をとうに上回っているじゃないか!

 どうすんだよ、これ……



 結局全部調べてみた結果、鷹が持ってきたのはフォレストラビットが8体、リトルヘッドが4体、ツインヘッドが2体、リトルベアーが1体だった。

 それを全部売却すると、30万Bにもなる。

 こんなに引き取れないということをそれとなく伝えても鷹は首をひねるばかり。

 それどころか鷹の話によれば、九尾はこれでも足りないのならもっと鷹に獲物を持ってこさせる用意があるとまで言っているのだとか。

 ……おにぎりにずいぶんと価値を見出してくれているんだな、九尾さん。


 だが、どうしよう?

 さすがに要求通りのおにぎり100個だけを渡すのも良心がとがめる。

 だからといってもちろん持ってきた物の価値分のおにぎりを鷹に渡したって持ちきれるわけがない。

 何か良い考えはないものか?


 鷹の発言を聞いている限り、九尾はおにぎり100個だけをもらっても満足してくれそうだ。

 確かに俺が渡す物と九尾が渡す物では女神ショッピングにおける売却価格に差はある。

 だが、それでも取引する当人が互いにそれで満足しているのなら、その取引は対等な価値の物を交換したことになるだろう。

 例えばかつて市場価格が100円ほどだった物がネットオークションでプレミア化して数万円で売れることもある。

 つまり、その人がそれだけの価値を認めたのなら、それはそれだけの価値があるということだ。


 九尾との取引で価値に差が出てきた時は貨幣を奥の手として考えていた。

 だがそれは、俺が交換に出すものに、九尾が価値を見出さなかった時に使う予定だったもの。

 例えばさっきのフォレストラビット一匹だけでおにぎり1000個を要求してくる時とかにさ。

 だから価値が対等、むしろ高く思ってもらえているこの状況では貨幣を使う必要は全くない。

 もしおにぎりに加えて余分な分を貨幣という形で九尾に還元したりなんてしたら、俺の提供するおにぎりの価値を自分で下げてしまうことになるからな。


 そもそも貨幣は取引相手が価値を見出してくれないと全く意味がないものだ。

 信用のない貨幣はただの紙切れ、もしくは金属に過ぎないからな。

 できればもっと貨幣についてみんなの理解が深まった時に使いたい。


 せっかく九尾が俺の提供するおにぎりに価値を見出してくれている。

 だからこそ、おにぎりの価値を損なわず、かつ俺の罪悪感を薄め、俺としても九尾としてもより嬉しくなるような方法はないだろうか?

 ……そうだ、良い事を思いついたぞ!



 俺はまず鮮度が落ちないうちに鷹が持ってきた獲物を全部売却する。

 そして大きな袋を購入し、その袋の中にシーチキン味のおにぎりを100個つめて、結んでおく。

 鷹が持ち運びやすいようにいくつか袋を持ち上げるためのひもみたいなものもつけておいた。


 さて、本題はここからだ。

 この袋を鷹に九尾の所まで届けてもらえれば、九尾の要求を満たしたことになる。

 だがそれだけでは終わらない。


 九尾はまだシーチキン味のおにぎりしか知らない。

 そこで俺からの気持ちとして、色んな味のおにぎりをもう100個、九尾にプレゼントするのだ!


 おにぎりといえば多種多様な味があるのが売りだ。

 シーチキン味ももちろん美味いが、それはおにぎりのうちの一種類にしか過ぎない。

 ただ現状、九尾はシーチキン味のおにぎりしか知らない訳だから、それしか要求しようがない。

 だから今後九尾に選択肢を増やしてあげるために、こうした要求外の新しい味の物を九尾に渡してあげよう。

 こうすることで、九尾は新しい味を知ることができる。

 俺としても九尾が色々な物を頼んでくれることになり、取引が活発化してさらに利益をもらう事ができる。

 まさに良いことづくめなんだよな。


 俺は先程と同じように色々な味のおにぎりを袋に詰め、鷹に持っていくように伝えた。



「いいんですか? こんなにもらってしまって?」

「ああ、構わない。俺からのプレゼントだとでも言っておいてくれ。おにぎりには色々な未知の味があるんだってな」

「未知の味……? 前に私達がいただいたものとはまた違う味がするのですか?」

「ああ、そうだ。もし九尾さんに分けてもらう機会があったら分けてもらうといい」

「そうなったら嬉しいのですが、多分無理でしょうね。あの方の胃袋は底なしですから……とにかく、ドラゴン様からプレゼントがあったと伝えておきます」

「ああ、九尾さんによろしく言っておいてくれな」



 そう言葉を交わし終わると、大きな二つの袋を持って鷹達は飛び去っていった。

 一応ギュッと結んでおいたから大丈夫だとは思うんだが、それでも中身がこぼれ落ちる不安があるな……

 まあもしこぼれ落ちちゃったらその時はまた鷹が俺の所に知らせにくるだろう。



 それにしても九尾、太っ腹だったな。

 逆に言えばあれだけの価値のものを九尾は毎日食べ続けているっていうことだろうか?

 それだったらあんな体になるのも納得だ。

 というか、それだったら、多分おにぎり100個程度じゃ足らないだろうな。

 その場合は他に何かを鷹に狩らせて食べるんだろうな、きっと。


 ……九尾があんなに多くの生物を狩っているにも関わらず、よくこの地域の生態系は壊れないよな。

 実に不思議だ。

 まあ大丈夫なら俺は遠慮なくいただくけどさ。

 あの九尾はこの一帯のエリアのボスとかいっていたし、何かまずい状態になったら知らせてくるだろう。



「ねえ、エンラ、私眠いからそろそろ寝てもいいかしら?」



 恐る恐るそう聞いてくるコクリ。

 ああ、コクリはそういえばまだ寝ていないんだっけ。

 気付かなくてごめんな、コクリ。


 俺が寝てもいいと言ったら、コクリはすぐにぐうぐう眠り始めた。

 一方ターガはというと、木の枝にとまってぐっすりと眠っている最中だ。

 多分夜の間から眠ってしまっているのだろう。

 ターガの仲間が来たんだが、それにも全く気付かないとはな……

 まあ本人が気にしないのならいいんだけど。



********

七日目:残金318898B

収入:フォレストラビット40000B、リトルヘッド40000B、ツインヘッド200000B、リトルベアー20000B

支出:おにぎり20000B、大きな袋800B、ひも200B

収支;+279000B

********

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