16.リス達に名前をつけてみました
リス達が立ち去ってからは特に何事も起きなかった。
ちなみに食事に関しては昼は”本日のランチセット(昼限定)”が1000Bで販売していたので、それを注文して腹いっぱい食うことに。
夜は”本日のディナーセット(夜限定)”があったのだが、3000Bもしたのでやめておいた。
朝も昼も腹いっぱい食ったから夜は食わなくても十分なんだよな。
今の体になるとそういった食べ放題系のものを注文しないといけないのはちょっと不便だな。
結構出費も大きいし。
俺とコクリの分、毎食2000Bずつ消費するからな。
夜はぬくとしても毎日4000Bは出費することになる。
ちなみにカトカには”米粒(100粒)”と”水(100滴)”を注文しておいた。
カトカの体はまだ小さいし、玄米と水さえあれば十分生きられるだろうからな。
玄米100粒と水100滴あれば一日は十分持つだろうしさ。
たまには他のものを食べさせてやろうとは思っているけど。
つまり毎日4002Bの出費は免れない訳ではあるが、この出費が生活にはそれほど支障が出るとは考えていない。
というのも、実は何もしなくても俺には臨時収入が入ってくるのだ。
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”ドラゴンの鱗”を売却しますか?
売却額 10030B
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そう。
俺の体から時々剥がれ落ちる鱗を売れば、出費以上の収入が得られるのだ。
とはいっても、鱗が剥がれ落ちるペースがどの程度もものなのかよく分からないし、無駄遣いは避けた方が良さそうだけど。
ちなみに剥がれ落ちる前の自分の鱗は売却できなかった。
まあそんな事ができたら自分を売却できる事になってしまうし、当然と言えば当然か。
夜を迎え、辺りは真っ暗になっている。
そんな中で俺とコクリはじっとその場でくつろぐ。
夜になったとはいえ、周囲からは脅威になるような気配は感じない。
そこまで周りを警戒をする必要はなさそうだ。
でも周囲が見えないので下手に動きたくもないからじっとしているという感じである。
そういえば、こうやって夜をずっと外で過ごそうとするのはこれが初めてだよな。
いつもは安全な穴や大穴に引きこもっていたから無理もないんだけど。
ちなみに試してみて分かったのだが、安全な穴などは俺しか使えないらしい。
安全な大穴を購入して、俺とカトカで入ろうとしたのだが、カトカだけ入口で弾かれてしまったのだ。
ちなみにコクリが一匹で入ろうとしても弾かれてしまったので、俺しか入れないという事が分かる。
カトカを守りながら過ごす必要がある為、俺は安全な穴を使わずにこうして外でくつろぐ事になった。
「夜ってこんなに暗いんだな」
「何当たり前の事をいっているの? もしかして夜はあんまり起きていなかったのかしら?」
「そうだな。起きていたのは寝床が小さすぎて外に出た時ぐらいかな。後は寝床でぐっすりだ」
「まああなたほど強ければ、周囲を警戒しなくてもいいものね」
「ハハハ、今なら確かにそうかもな」
周囲を警戒しなくても良かった理由は俺しか入れない安全な穴で寝れたからってだけなんだけど、まあ理由はどうでもいいよな。
実際、今の俺なら周囲を警戒しなくてもよほどの事がない限りは死ぬことはないだろうし。
それより問題になるのは、周囲を警戒しながら夜を過ごした経験がない事だ。
前世の人間時代も安全な日本で暮らしていたから、夜は周囲を気にせず寝ることができた。
そしてこの世界に来てからも、寝床では安全が保障されていたから周囲を気にする必要もなかった。
でも今は違う。
このひ弱なカトカを守りながら夜を過ごさなくてはいけないのだ。
俺にとって脅威にならないような相手でも、カトカには天敵になりうる生物はたくさんいる。
俺が眠りこけている間に、カトカがそいつからやられてしまう可能性だってあるのだ。
だから今、俺はコクリと一緒に頑張って周囲を警戒しながら夜を過ごしているのだが……
「ふぁ~あ……」
眠くて思わずあくびが出てしまう。
やっぱり日頃の生活と違う事をするのって辛いな。
「エンラ、随分と眠そうね。ここは私が起きておくから、エンラは寝ていていいわよ」
「いいのか、任せちゃって?」
「いいの、こういう事には慣れてるし。その代わり、明日もまた美味しいお食事をお願いね?」
「ああ、それは任せとけ。あと何かあったらすぐに俺を起こしていいからな?」
「ええ、そうさせてもらうわ」
確かに日頃から周囲を警戒しながら外で寝ているコクリにはこういう状況は慣れているのかもしれない。
いや、そもそもコクリはオオカミだし、夜行性なんだろうか?
その割には昼間に活発に動いていたような気もするが……
この世界のオオカミは昼行性だということも否定はできないもんな。
オオカミを家畜化したような存在の犬は昼行性だし。
まあ昼行性だとしても、危険な外での休み方を心得ているコクリなら、信用できるだろう。
あまり任せっぱなしもどうかとも思うが、ここはコクリを信用して俺は寝るとしようか。
下手に夜更かしすれば明日に響くからな……
俺は見張りをコクリに任せ、その場でぐっすりと眠ることにした。
そして翌朝。
日の光を浴びて、俺は目を覚ます。
辺りを見渡すと、コクリもカトカも無事みたいだ。
コクリやカトカと過ごす、初めての夜を無事に越すことができたみたいだな。
「おはよう、コクリ。夜の見張り、ありがとな」
「あっ、お目覚めねエンラ。ぐっすり眠れた?」
「ああ、おかげさまでな」
「そう、それは良かった。なら私、ちょっと寝てもいいかしら? さすがに私も眠くなってきたわ……」
「構わないぞ。俺が起きているから安心して寝るといい」
「ふふっ、任せたわよ。それじゃあおやすみ……」
コクリはそう言うと、ぐったりと横になって、そのままスースー寝息をたてた。
横になってすぐに寝てしまうなんて、よっぽど頑張ってくれたんだろうな。
本当にありがとうな、コクリ。
カトカは相変わらずぐっすり眠っているようだ。
ちなみにカトカは近くにある薬草の葉に寝てもらっている。
さすがに俺が眠る時までカトカを俺の体にくっつけてしまうと、俺が寝返りをうったりしてカトカをつぶしかねないからな。
だから必ず俺の体から離れた場所で寝てもらう必要があるのだ。
なかなか俺から離れないから、カトカを引き離すのにはだいぶ苦労したが……まあ、なんとかなった。
そういえば薬草と薬草もどきの違いなのだが、どうやら薬草からは独特な匂いがして、薬草もどきからは匂いがしないようだ。
見た目はほとんど変わらないので判別がつかないのだが。
ちなみに薬草の売却額は100B、薬草もどきの売却額は1Bだった。
やっぱり価値は全然違うみたいだな。
もちろん薬草に価値があるからといって売却したりはしないけど。
売却なんてしたら、カトカの隠れ場所や敵避けの匂いがなくなってしまうからな。
もちろん生物を寄せ付けにくい匂いがする薬草の葉にカトカを寝かせることにしている。
薬草もどきは匂いがしないから、ちょっと隠れ場所としては心許ないんだよな。
「クピャア……」
おっ、カトカが起きたみたいだ。
まだ起きたばかりだからとても眠そうで、目をこすっている。
とても愛らしくて可愛いな。
んっ!?
なんか近づいてくる気配がある……
一体何者だ!?
俺は警戒を強めて気配がする方向を注視する。
すると現れたのは―――
「そ、そんなににらまないでよ、トカゲさん……怖いじゃないか」
昨日おにぎりと木の実を交換した三匹のリス達だった。
「おお、また来てくれたのか。早起きだな、三人とも」
「ふふ、そうだろ? オレ達、早起きなのが自慢なんだ」
「……いつもはもっと起きるの遅いんだけどねぇ、じゅるり」
「みんな、トカゲさん達に会いたかったんだよぉ……」
おお、三匹とも会いに来てくれたんだな。
カトカもリス達に会えて嬉しそうにしている。
「そういえばそのトカゲの名前はカトカっていうんだ。気軽に呼んであげてな」
「カトカ……名前なんてあるのか。珍しいな」
「名前、だれがつけたのぉ?」
「名前は俺がつけたんだ。こう見えても名前を考えるのは得意でな」
「へー、そうなんだぁ。だったらせっかくだし、ボクの名前もつけてよぉ」
「なっ、お前何言って―――」
「わたしの名前もお願いするんだよぉ……」
「お、お前まで!? ……オレのもお願いしていいかな?」
名前かぁ……
確かに名前があった方がこのリス達を呼びやすくていいもんな。
今後ともよく会うことになるのなら、名前をつけても損しないだろう。
名前をつけるのにお金がかかる訳でもないしさ。
さて、どうしたものかな。
「じゃあまず、お前の名前はカリスだ」
「カリス……ああ、分かった!」
まず一人称がオレのリスの名前はカリスにした。
由来は”勝気”の”か”と”リス”から来ている。
「お前の名前はクリスだ」
「クリス……うん、分かったぁ」
一人称がボクのリスの名前はクリスだ。
由来は”食いしん坊”の”く”と”リス”である。
「お前の名前はコリスだ」
「コリス……うん、分かったんだよぉ……」
一人称がわたしのリスの名前がコリス。
由来は……カリス、クリスときたからコリスというだけ。
安直な名前で申し訳ないから、本人達には由来は絶対に言わないでおこう。
言わなければそれなりの名前だと思うし、うん。
「ちなみに改めてだけど、俺の名前はエンラという。そしてあのオオカミの名前がコクリだ」
「エンラにコクリ……うん、分かったよ!」
「トカゲさんがエンラ、オオカミさんがコクリだねぇ」
「名前、覚えるの大変なんだよぉ……」
「ふふっ、まあ少しずつ覚えてくれればいいよ。いきなり全部覚えるのは難しいからな」
何て言ってもリス達には名前を呼ぶ習慣なんてなかったのだ。
いきなり初めて使うような名前を四個も五個も覚えろなんて言われても難しいよな。
「えっとコクリさん、ボク、お腹すいたんだなぁ。おにぎりぃ……」
「俺はコクリじゃなくてエンラだぞ?」
「うわぁ、早速間違えたぁ」
「まだまだだな、コリス。オレはトカゲさんがエンラさんというのは分かっていたぞ!」
「えっと、コリスは私の名前なんだよぉ……」
「ぷふっ、カリスも間違えたぁ」
「う、うわっ、そうなのか!? 名前って難しいな……」
早速名前がぐっちゃぐっちゃになるリス達。
もうちょっと分かりやすくしてあげた方が良さそうだな。
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以下の物を購入しました。
残り所持金 68548B
自由帳 100B
鉛筆 30B
おにぎりシーチキン味一個 100B
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俺が購入したのは白紙のノートと鉛筆。
あと、クリス用のおにぎり。
そのノートが手元に現れたら、早速ノートにリス達の名前を日本語で書き、その紙をひきちぎった。
「これがカリス、クリス、コリス、それぞれみんなの名前だ」
俺はそう言って、リスの名前が書かれた紙をリス達それぞれに渡した。
クリスにはその紙と一緒におにぎりを渡し、代わりに木の実を受け取った。
カリスとコリスは紙を受け取って不思議そうな顔をしている。
クリスはおにぎりをむしゃむしゃ食べながら紙をちらちら見ている。
「エンラさん、これって何の模様なんです?」
「それは文字というんだ。三つ模様が書いてあるだろ? その三つの模様があわさったものがお前達の名前って訳だ」
「へぇ……そうなのか。人間は文字を使うって聞いたことがあるけど、エンラさん、よくそんな文字なんて知っているな?」
「ハハハ、ちょっとその辺りの勉強をしたことがあってな」
「そうなのか! だったらさ、その文字って奴をオレ達に教えてくれよ! なあ、いいだろ?」
「うーん、そうだなぁ……ただでは教えられないんだけどな……」
勉強するにはノートや鉛筆などの道具が必要だ。
教えるのだってただじゃない。
教えたいのはやまやまなんだが、慈善事業という訳でもないしな……
「なら、この木の実を多めに持って来ればいいか?」
「そうだな……それならいいだろう」
「やった! ならオレ、もう一つ木の実取ってくる!」
「あーボクも取りに行くよぉ」
「待ってぇ、わたしを置いて行かないでぇ……」
リス達はそう言うとどこかへ行ってしまった。
多分木の実を取りに行ったんだろうけど。
「クピャア」
「ん、どうしたんだ、カトカ? 木の実が気になるのか?」
「クピャ!」
「仕方ないな。ほい」
俺はカトカの近くに木の実を転がしてあげた。
するとカトカはその木の実を使って遊び始めた。
コロコロ、コロコロ……
木の実を使って遊んでいる姿もかわいいなぁ。
しばらくコロコロして遊んでいると、今度はコンコンと木の実を叩き始めた。
木の実の中身が気になるんだろうか?
「クピャア……」
「中身が知りたいんだな? ちょっと待っていろよ」
俺は木の実を拾い上げ、そして爪で木の実の殻を割る。
すると木の実は殻と実に分かれた。
ちなみにこの分かれた状態で売却するとどうなるんだろうな?
ちょっと売却を試してみると……
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”アレノスナッツの殻”と”アレノスナッツの実”を売却しますか?
売却額 260B
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えっ!?
売却額が260Bだと!?
なんだこれ、殻を割るとめっちゃ価値が上がるじゃねえか!?
だってアレノスナッツって売却額は120Bだったはず。
それはつまり殻と実を分離しただけで価値が二倍以上になったということだ。
今までそのまま売却していたのって実はもったいなかったんだな……
ちなみに260Bの内訳は殻が40B、実が220Bだった。
やっぱり実の方が食用にもなるんだろうし、断然価値は高いみたいだ。
「クピャア!」
「あーはいはい。今回だけだぞ。毎回そんな贅沢はさせられないからな」
俺はアレノスナッツの実をカトカにあげることに。
するとカトカは実を美味しそうに食べていた。
220Bもする食べ物を食べるなんて贅沢だな、カトカの奴。
……可愛いから今回は許してやるけど。
もちろん殻は使わないので売却しておきました。
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五日目:残金68588B
収入:ドラゴンの鱗10030B、アレノスナッツの殻40B
支出:ランチセット2000B、米粒1B、水1B、自由帳100B、鉛筆30B、おにぎり100B、安全な大穴30B
収支;+7808B
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