14.コクリからプレゼントをもらいました
「あそこに見えるのは人間の町なのか?」
「どうなのかしらね? あそこまで行ったことがないから正直分からないわ」
そうなのか。
人間の町らしき建物はうっすらと見えるほどの所にあるから、距離にするとだいぶあるんだろう。
別に人間の町に行く予定がある訳でもないから距離があってもなくてもどちらでもいいんだけど。
むしろ厄介事に巻き込まれにくい分、遠い方が好都合か。
「あっ、エンラ、ちょっと待ってて! すぐ戻ってくるから!」
「おっ、おう。あんまり変な所にいくなよー?」
そう言うとコクリは急にどこかへ行ってしまった。
一体どうしたんだろうな?
しばらく一人でその場でくつろいで待っていると、コクリが何かをくわえて戻って来た。
コクリがくわえているものは、白を基調としてほのかに赤みがかった綺麗な花がいくつかの束になったものみたいだ。
「エンラ、はい、これ。私からのプレゼント。いつもエンラからもらってばかりだったから、これはお返しよ!」
「おお、とても綺麗な花だな! どうしたんだ、これ?」
「ここにくる途中で見つけたの。とっても綺麗だから喜んでくれるかなと思って」
「へえ、そうなのか……ありがとう、コクリ。大切にするからな!」
俺はコクリから花束を受け取り、大事に手に持った。
だが、ずっと花束を手に持ったままだとさすがに不自由だよな。
せっかくコクリからもらった初めてのプレゼントだから売却したくもないし。
ということで俺は肩にかけている小さなショルダーバッグの中に花束を収納する事に。
バッグは俺の今の体に不釣り合いなほど小さな物ではあったが、コクリの花束を入れるには十分な大きさだった。
「それにしてもここ、気持ち良いよな! コクリは昔からここにはよく来ていたのか?」
「実はここは最近見つけた場所なの。でもここは見晴らしもいいし、風も気持ち良いから私のお気に入りの場所になっているわ」
「そうだよな。俺もこの場所気に入ったよ!」
爽快感あふれるよな、この場所は。
見晴らしも本当に良いしさ。
……って待てよ?
見晴らしがいい場所という事は、それはつまり―――
ドヒィィィ!?
メェェェェ!?
こちらの方を見て慌てて逃げ出す動物達。
そう、多くの生物の目に触れる場所に俺がいるということになる。
驚かせるつもりは全くなかったんだけどな……
今まで気付かれなかったのは、それだけ俺が存在を隠せていたということか。
体重を軽くしたり、有り余る魔力の放出を抑えたり、いわゆる努力の賜物ってやつだ。
……いや、努力自体はあまりしてないんだけど。
使っている魔法も無意識に勝手に使われるものだしさ。
とにかく、もう俺の存在が知れ渡ってしまったようだ。
みんなを怖がらせるのも何だし、そろそろお暇するとしますか。
「コクリ、そろそろ移動しようか?」
「えっ、別にもうちょっとゆっくりしていってもいいのに……」
「すまないな。でももう俺は十分満喫できたよ。コクリはもう少しここに残るか?」
「いや、エンラが移動するなら私もついていくわ。エンラがいいならそれでいいの」
「分かった。なら一緒に移動するか」
俺とコクリはこうして見晴らしの良い、大地の丘という場所を後にする事にした。
さて、景色を堪能した事だし、これからどうするかな?
一応まだお金に余裕はあるから、物の売却に奔走しなくても良さそうだし。
もう少しゆったりとした時間を過ごしてもいいかもしれない。
「そういえばエンラってどこで生まれたの?」
「生まれた場所か? そうだな……確か薬草もどきの根元で生まれたぞ」
「薬草もどき……ああ、あの薬草地帯で生まれたのね」
「場所を知っているのか?」
「ええ。普段は薬草の独特な匂いがあるからあんまり近付かないけど、でも場所は知っているわ。せっかくだし、見に行かない?」
生まれた場所かぁ。
そういえば生まれた当初は薬草もどきがすごく巨大な植物に見えていたっけ。
それが今の体から見るとどんな感じなんだろうな?
ちょっと気になってきた。
どうせ行く所もないんだし、せっかくだから行ってみますか。
「ああ、一緒に見に行こうか」
「決まりね。あんまり薬草地帯をしっかり覗いた事はなかったからどうなっているのか楽しみだわ……」
別に大したものはないと思うけど……
いや、トカゲのタマゴ位ならあるかもしれないな。
俺だってそこで生まれた訳なんだしさ。
ちょっとそういうのを観察してみようかな。
俺とコクリはそれから薬草地帯を目指した。
特に脅威になる生物はいないので、快適快適。
途中で厄介そうな気配を感じた時は、自然の恵みの使用を止めれば、一目散に逃げていってくれた。
使いようによっては威圧も便利なものだな。
別に威圧しているつもりはないから不思議な感じだけど。
ちょっとすると、葉っぱが生い茂っている所まで来た。
すると周囲からツンとくる匂いを感じる。
この匂いに何だか懐かしさを感じるかもしれない。
「ついたわ。ここが薬草地帯よ」
「へえ、ここがそうなのか……」
俺の目の前には渋いカーキ色をした植物がたくさん生えていた。
確かにこの植物の色は俺が初めて見た植物と似ている。
ただ大きさは全然小さかった。
大きい植物でもコクリの背丈と同じ位といった所だろうか。
やはりこういうのを見ると、俺の体が成長したんだと実感するよな。
「あっ、見て見て! ここにタマゴがあるわよ!」
コクリの目線の先を見ると、そこには確かにタマゴらしき白い物体があった。
一応本当にトカゲのタマゴなのかどうか女神ショッピングの売却アナウンスで確かめてみるか。
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この”ベビートカゲの卵”は所有できないので売却できません。
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おっ、やっぱりベビートカゲのタマゴだったみたいだ。
俺も生まれる前はこうだったんだろうな。
そう考えると感慨深いものがある。
ピキッ!
俺がタマゴをジッと見ていると、タマゴに亀裂が走った。
えっ!?
お、俺、タマゴ壊してないよな!?
さ、触ってないしさ!?
「エンラ、もうすぐ赤ちゃんが生まれるみたいよ!」
あっ、もうすぐ生まれるのか。
なんだ、タマゴに亀裂が走ったのは俺のせいじゃないんだな。
全く驚かせやがって……
俺がタマゴを踏んで壊しちゃったのかと思って焦ったぞ。
……って生まれるだって!?
俺の驚きも収まらぬまま、タマゴにはどんどん亀裂が走っていく。
そして……
クピャア!
ベビートカゲ、ついに誕生。
それにしても小ちゃいなぁ……
俺の指位のサイズしかないじゃないか。
というか、俺も生まれたばかりの時はこんなんだったんだよな。
そりゃあ、周りの物が全て大きく見える訳だわ。
生まれたトカゲは自分が生まれたタマゴの殻をパクパク食べている。
やっぱりそのタマゴの殻は普通食べるものだったんだな。
タマゴの殻を食べずに売ったのは多分俺ぐらいなものだろう。
タマゴの殻を食べ尽くしたトカゲは植物の葉っぱの上まで登るとそのまま寝てしまった。
って、寝るの早っ!?
……まあ、まだ赤ん坊だから、ちょっと活動したら寝てしまうのも仕方ないのか。
ベビートカゲの体色と植物の色が同じカーキ色で保護色になっているから、寝ても問題ないのかもしれないな。
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四日目:残金60720B
収入:なし
支出:なし
収支;+0B
※コクリからもらった花を取得
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