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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二十話 風よ、光よ

クリスマスイブなので主人公に奴隷をプレゼントです。(金払うからプレゼントじゃないな)

7442年6月2日


 ゼノムとラルファと連れ立って奴隷商館に行ってみた。まずは一軒目『ターニー奴隷商会』だ。この店は迷宮探索用の戦闘奴隷を専門に扱っており、そこが他の二軒と異なるところだ。多分戦闘奴隷専門なんてこの街くらいしか成り立たないのではないだろうか? だが、専門商社なのだから、品揃えには期待してもいいだろう。


 『ターニー商会』は想像していたよりも小ぢんまりとした店構えだった。小ぢんまりとは言え、それは俺が逗留しているような大きな宿屋や八本ある大通りの中心に近いような大店と比較しての話だけどな。商店主は商会の名前通りターニーと言うノームのおっさんだ。俺がウェブドス侯爵のプレートを見せながら「戦闘奴隷を一人見繕いに来た」と告げると手を揉みながら擦り寄ってきた。今は十二人の戦闘奴隷を在庫しているらしい。選びたい放題だな。


 奴隷を用意して貰う間にソファーに腰掛けながら小声で怪鳥や水神、地を駆ける黒豹の部分を鼻歌で歌っていたら二人に変な顔をされた。女子高生だったなら知らんだろ。


 暫くして用意ができたのか、ターニーが戻ってきた。俺達はターニーの後をぞろぞろと付いて行き、別の部屋に通された。20畳ほどの広い部屋の奥の壁際に奴隷が並べられている。ここの並べられている十二人の奴隷から選べということなのだろう。


 うむ、着ている服はあんまり上等とは言えないだろうが、皆良い体つきをしている。取り敢えず男は鑑定してみて能力やレベルくらいは確かめておかないとな。自分の持ち物の能力は正確に把握しておかないといざという時に困る。だが女は戦闘力が低いだろうからパスだ。一人目。普人族の女。顔はそこそこいいが、女は戦闘力が低いだろうからいらん。MPが勿体無いわけじゃないぞ。男連中に使えそうなのがいなかったら選択対象に入れてもいいけど。


 二人目、普人族の男。レベルは9。年齢は32歳。ふーん。


 三人目、普人族の男。レベルは8。年齢は27歳。年齢の伸びを考えたらこっちのがさっきより良いかな? 暫定一位。


 四人目、山人族ドワーフの男。レベルは10。年齢は34歳。うーん。


 五人目、同じくドワーフの男。レベルは9。年齢は31歳。むぅ。


 六人目、今度はドワーフの女。パス。


 七人目、矮人族ノームの女。パス。


 八人目、狼人族ウルフワーの男。レベルは8。年齢は27歳。ウルフワーは種族の特殊技能として犬人族ドッグワー同様に『超嗅覚』を持っている。取り敢えずこいつが暫定一位に変更っと。


 九人目、兎人族バニーマンの男、レベルは7。年齢は29歳。『聞き耳』は役に立つかも知れんがなぁ。ダメだろうな。


 十人目、精人族エルフの女。綺麗だけどパス。


 十一人目、同じくエルフの女。こいつも綺麗だけどパス。


 十二人目、虎人族タイガーマンの男。レベルは10。年齢は28歳。『夜目ナイトビジョン』と『剛力ストレングス』の種族技能は役に立つかも知れない。年齢とレベルを考えたらこいつが一番マシかもな。


 うーん、豹人族グインなんてのが居て黒い毛ならロデムと名づけても良かったんだが、そんな種族は寡聞にして知らん。俺の捏造だよ。俺はタイガーマンの前に行くと再度彼を観察した。健康状態は良好。当然四肢や指の欠損もない。どうしよっかなぁ。因みに、誰も魔法は使えないようだ。女? 魔法が使えたとしてもどうせ大したことないだろうから戦力になる奴のがいい。女は俺が金持ちになるまでパスだ。あ、値段聞いてないわ。


「こいつ、幾ら?」


 と聞くとターニーは相変わらず揉み手で擦り寄ってきた。ゼノムは腕を組みながら突っ立って眺めている。ラルファはよくわからんが、偉そうに「口を開けて歯を見せて」とか言ってる。何言ってんだ、こいつは。


「流石はお目が高いですな、彼は見ての通り亜人ですが、力はあり、俊敏に動けます。剣の修行もつけておりますので即戦力ですよ」


 と言ってきた。そりゃ戦闘奴隷なんだから即戦力にならない奴は詐欺だろう。こいつでもいいような気もするが、なんとなく俺の琴線に触れる感じがしない。


「お値段ですが、970万Zで如何でしょう?」


 高ぇわ! 装備も買うと1100万Z超えるじゃねぇか。こいつを買ってモト取るまでが大変過ぎる。だが、奴隷商はあと二軒あるのだ。焦らなくてもいいさ。ほかの二軒を回って、めぼしいのがいないと確認してからでも遅くないだろう。


「うーん。今日一日取り置きって出来るの?」


 つい聞いてしまった。


「取り置き……でございますか。いいでしょう。今日一日取り置き致しましょう。ですが、今日中にご連絡を頂けなかった場合には明日は売れているかも知れませんぞ」


 ターニーは渋い顔で言ってきた。そりゃ仕方ない。奴隷商にいい顔してもしょうがないし。


「ゼノム、ラルファ、ほか回るぞ。……おい、ラルファ、行くぞ」


 そう言って『ターニー商会』を後にした。次は『リッグス商会』に行ってみるか。


 因みにラルファに「何で歯を見てたんだ?」と聞いてみたら「昔、なんかで見たのよね。奴隷を買うときには歯を見て健康かどうか確かめるんだって」と来た。わかんのかよ、お前。俺は歯医者じゃねぇから見てもわからんわ。虫歯なんて聞いたこともねぇし。




・・・・・・・・・




 『リッグス商会』からは戦闘奴隷だけでなく、一般の奴隷全般も扱っている。余計な奴などどうでもいいので、戦闘奴隷だけ見せろと言って、また並べさせた。五人いたが、そのうち四人が女で残った男は40絡みのおっさんだった。能力が下降線に入っているのはいらんわ。この店はダメだな。


 最後に『奴隷の店、ロンスライル』に行ってみた。ここも一般の奴隷全般も扱っている店だ。だが、残り物には福があるという言葉もある。多大な期待は出来ないだろうが、いいさ、見てみよう。俺たちは『ロンスライル』に入ると店主に声をかけた。


 店主は女性のエルフだった。年の頃は40代前半というところか。エルフらしくこの年齢でも輝くような美貌は円熟味も加わりマダムと呼ぶに相応しい貫禄を与えている。マダムは俺のプレートをしげしげと眺めたあと、


「ちょうど良い戦闘奴隷が入荷したところですわ」


 と言って奥に引っ込んだがすぐに出て来て、ついて来いと言う。また並べて見せてくれるのだろうか。


 別の部屋に行くと想像通り奴隷達が並んで待っていた。八人もいるが、全員が女だった。使えねー。だが、やはり女の戦闘奴隷は売れ残りやすいのだろうな。もう、女でもいいかと思っていたら一人追加された。男だ。早速鑑定してみると、


【ダディノ・ズールー/28/5/7442 ダディノ・ズールー/20/7/7422】

【男性/24/5/7421・獅人族・ロンスライル家所有奴隷】

【状態:良好】

【年齢:21歳】

【レベル:6】

【HP:100(100) MP:5(5) 】

【筋力:16】

【俊敏:17】

【器用:11】

【耐久:15】

【特殊技能:小魔法】

【特殊技能:瞬発】

【特殊技能:夜目ナイトビジョン

【経験:37082(43000)】


 ふむ、獅人族ライオスか。レベルはそこそこだが、若いのはいいな。体つきも良いじゃないか。なんだ、名前はライオン○とか獅子○じゃないのか。果心居士の弟子かと思ったぜ。


 『瞬発』は瞬間的に筋力と俊敏をレベルと同じ数値分だけ引き上げる技能だ。この技能自体にはレベルはないが、肉体レベルと同じだけの秒数持続し、肉体レベルと同じ時間使用不能になる。連続使用こそ出来ないし、レベルアップとともに強力になりはするが使えない時間も伸びる。だが、ここぞという時の白兵戦闘には有利な技能と言えるだろう。能力値が上昇している間、HPも増加するかどうかは鑑定のウインドウには書かれていなかった。まぁ上昇したとしても数秒だろうからあまり意味はない。俺はわざとすがめるように見ながら、


「彼はラグダリオス語(コモン・ランゲージ)は話せるのですか?」


 とマダムに聞いてみた。


「勿論でございますよ。この男は先日のデーバス王国との紛争で捕らえた捕虜ですの。デーバス王国で兵をしていたそうですから、武器も一通り扱えるはずです」


 マダム・ロンスライルはそう言って微笑んだ。


 そうか、こいつは戦時捕虜から奴隷になったのか。身代金を払って貰えなかったのだろう。命名の儀式の日付から見るに奴隷に落ちて数日といったところか。このあたりかな、攻めどころは。


「ちょっと試してみてもいいですか? ああ、万一傷ついたら治療はしますので」


 そう言ってマダム・ロンスライルの方を見やった。


「どうぞ、お好きなようにお試し下さいませ」


 マダム・ロンスライルはそう言って同意してくれた。遠慮はいらんということか。俺はマダム・ロンスライルの方を見ながら、ライオスの奴隷に向かって『アイスグラベル』の魔術を使い、小さな氷の礫を飛ばした。氷の礫は奴隷の左腕に命中した。俺は胴体の鳩尾あたりを狙ったので反応出来たということだ。ふむ、充分だな。奴隷は、いきなり魔法を使って狙われたことに驚いた顔をしたが、すぐにその目に不満そうな感情を滲ませた。よしよし。


「怪我をしたでしょうから治療しますね」


 俺はそう言って奴隷に近づいていくと治癒魔法ですぐに怪我をした左腕を治療してやった。今度は不意をつくような真似はせず、ゆっくりと時間をかけて魔法を使ったように見せかけてやった。治療を受けたにも拘わらず、奴隷は不満そうな表情を続けている。うむうむ。俺は振り返ってマダム・ロンスライルを見つめると、


「そう言えば、まだ価格をお伺いしておりませんでしたね」


 と言って、今度は女性の奴隷に興味を惹かれた風を装ってみた。


「彼の価格は800万Zです。兵士をしておりましたので、武器の扱いもできますからね」


 マダムの口調に幾分焦りも出てきたようだ。


「彼の躾はどうなっていますか? 本人は不満げなようですが」


 と言ってやった。ここでもマダムは慌てることなく「勿論、奴隷としての躾は出来ておりますよ」と返事をして来たが、口調が幾分早くなっている。


「なるほど、では、あちらの彼女の価格は?」


 そう言いながら並んでいる中では一番力がありそうな30前後の女を指さした。


「彼女は650万Zです。勿論躾もしっかりと行っていますわ」


 多少だがマダムに焦りが見られる気がした。ここらでいいだろう。 


「うーん、そうですねぇ。貴店とは今後もいいお付き合いをさせていただきたいですし……」


 おれがそう言うと、マダムがごくり、と唾を飲み込んだのがわかる。


「ここは言い値で買いましょう。あのライオスの彼にします」


 マダムの顔がぱぁっと明るくなった。そして、


「ありがとうございます。諸手続きはこちらの部屋で。なお、命名の儀式は明日以降でしたら当店から神社に申し伝えますので、ご希望のお時間はございますか?」


 と聞いてきた。


「わかりました、伺いましょう。おい、ラルファ、彼に聞けるだけのことは聞いておいてくれ」


 そう言うと、俺はマダムの後を追って別室へと移り、契約書の作成をした。手続きと支払いを終え、元の部屋に戻るとラルファはライオスの男となにやら話をしていた。うむ、しっかりと言いつけを守っているようだな。感心感心。ゼノムの方はドワーフの女と世間話でもしているようだ。まぁ同じ種族同士で話すことでもあるだろう。俺は彼らを呼ぶとこの店を退去することを告げ、踵を返した。ライオスの装備を調えに行かなきゃならんしな。


 店を出てラルファに聞く。


「で、あいつの得物は何だって?」


「え? 知らない」


 こともなげに言いやがった。


「は? え? 何話してたんだよ」


「あのね、ライオスって甘いものが好きなんだって!」


 けらけら笑いながら言う。どうでもいいわ、そんなもん!


「あと、彼、デーバス王国で平民だったらしいの。この前の紛争で捕まっちゃったんだってさ。お父さんは戦死、お兄さんは身代金で戻れたらしいんだけどさ。彼も運悪いよねぇ」


 お前と同行する羽目になっている俺の運も相当悪い気がするよ……。怪鳥だけに鳥頭かよ。


「アル、その辺は俺が聞いておいた。両手剣らしい。鎧はどうせすぐには用意できんからしばらくは無し、ということになるな」


 おお、流石はポセイド、ゼノム。本当に頼りになる奴は違うね。


「そうか、わかった。じゃあ鍛冶屋にでも行くか」


 そう言って鍛冶屋の方へと足を向けた。無事に120万Z也を払って両手剣を購入し、折角なので一緒に木綿の糸を買いに行った。こちらはひと巻き100m程度の長さで540Zと安かった。面倒だから10巻購入した。


 晩飯も二人と食い、明日以降、おそらく明後日からの迷宮内での行動や隊列などを確認する。明日は朝早くに神社へ出かけ、命名の儀式を済ませたあと、街外れで彼の戦闘力などの確認や連携の訓練をするということで話が付き、この日はさっさと宿に戻って寝ることにした。


 ベッドに横になりながら、ハタと気がつく。あのライオスのあんちゃんの宿ってどうしよう。まぁラルファ達と同じ宿でいいか。そう考えると彼らが安い宿に泊まっているのは好都合だったな。




・・・・・・・・・




7442年6月3日


 早朝から『奴隷の店、ロンスライル』へと赴き、ライオスの奴隷を伴って店の下働きとともに神社へと向かった。奴隷の命名の儀式はなにか特別なことでもあるのかと思っていたが、普通の命名の儀式と何ら変わるところはなかった。


【ダディノ・ズールー/3/6/7442 ダディノ・ズールー/28/5/7442】

【男性/24/5/7421・獅人族・グリード士爵家所有奴隷】


 無事にステータスが変更されたのを確認すると、剣を渡した。これでいいか尋ねるとバランスを確かめるように暫く手の中で弄んだあと「これなら丈夫そうだし、充分です」と返答があった。昨日のような不満げな目つきはしていない。俺はロデ、ズールーと一緒に彼の鎧の調整の為に革細工屋へと向かいながら話をする。名前より姓の方が呼びやすいんだよ、フォネティックコードみたいだしさ。


「俺のことはもう知っているだろうが、改めて自己紹介しよう。俺はアレイン・グリードだ。これから宜しくな」


 すると、彼は少し驚いたようにしていたが、すぐに答えを返してきた。


「私はダディノ・ズールーです。これから宜しくお願いします。ご主人様」


 おう、ご主人様、と来たか。うん、悪くないね。


「ああ、こちらこそだ。ところで、お前のことはズールーと呼んでもいいか? なんだか名前より姓の響きがいいからな。ああ、嫌だったら気兼ねせず言ってくれ」


「あ、はい。問題ありません。私は姓に誇りを持っておりますので嬉しいです」 


 そうか、そりゃ良かったよ。


 革細工屋で革鎧を注文し、既製品の中でサイズが近そうなものを見繕ってもらうとズールーの体のサイズを測ってもらった。彼は大柄で身長は190cm近い。タイガーマンと並んでライオスは大柄な種族だ。その分革を沢山使うから値段は高くなるのだろうか? 少しだけ心配したが値段が変わったとしてもせいぜい数万Zだろう。ここでこれっぽっちケチるのもバカみたいだと思い直し、職人がズールーのサイズを測っているのを眺めていた。


 その後は昨日ゼノムとラルファと約束した町外れの草地を目指す。ズールーの力の確認と連携の訓練のためだ。


 ズールーの実力はまずレベル相応と言っても良い物だった。兵士として訓練をしていた時間が長かったからだろう、同じレベルとはいえ実戦慣れしてるラルファには一歩譲るところも見られたが、俺たちがフォローを入れればまぁ大丈夫だろう。


 ところでラルファだが、いつの間にか無魔法を覚えていた。特殊技能の経験値は入っていなかったので、本人が気が付いているかどうかまではわからない。昨日の夜か今朝の間に習得した可能性が高い。訓練中に怪我を負ってくれたから鑑定の必要が起きたので気がついたことだ。それとなく魔法が使えるようになったか試して見ろ、と言って種火のような小さな炎を揺らさせてみせたら問題なく出来たようだ。だが、MPの枯渇の問題があるので、当面は一日一回までと制限した。無事に無魔法のレベルが上昇した時と新たに元素魔法の特殊技能を覚え、そのレベルが上昇したら少し増やしても大丈夫だと言っておいた。


 

女性の奴隷について鑑定しないのは今は秘密です。

http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/808499/

明かされるのは当分先になります。

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新たに購入したズールー用の両手剣のデータです。

【バスタードソード】

【鉄】

【状態:良好】

【加工日:19/10/7441】

【価値:119000】

【耐久:820】

【性能:140-230】

【効果:無し】

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔のネタなら変身忍者嵐もひとつお願いします
[良い点] いいねぇ! どうせまた美人の奴隷だろうと思ってたから尚更良い
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