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西の森、その後②

「ともかく、今回の討伐で、死傷者無し、怪我人が少なく、しかも日程は最短で投供まで完遂できたのは、聖女ティリーエ殿の尽力の成果が大きい。

改めて礼を申そう。

また、此度用意した薬草代は充分補填できるほどの褒賞を与えよう」



「えっ!? もう充分です、陛下。お気持ちだけ有り難く頂きます」



「ティリーエ、お金はあるに越したことは無いよ。貰っときなって」


「でも… (使い所が分からないのだもの)」


「ティリーエ… 基本的に、陛下から下賜されるものを断ることは不敬にあたるぞ」


「有り難く頂きます!!(命は惜しい!)」




その後は今回の討伐に際し、目にした魔物や有効だった魔法、駆除方法などを全員で話し合い、記録に残した。

また数年後に討伐に出向く時に役に立つ筈だ。

知らない魔物や手強い魔獣は結構いた。


こうしてティリーエは、もはや金貨では枚数が分からんと言われ、金塊の棒を5本と、何らかの宝石をいくつか与えられた。


重い…









「セリオン、ティリーエといつ結婚するの?」


「ふぁっ ファラ様突然何を仰られますか」


げふげふと咳き込みながらセリオンが驚く。


「だって、セリオン、ティリーエが好きでしょ。目が明らかにハートマークやん」


「あっ、それ、僕も気になってた。いつ気持ちを伝えるの? というか、ティリーエさんの結婚の承諾って、誰にもらうのかな…?」


「シェーンも気になる!? 気になるよねぇ。 え、ティリーエは親がいないの?」


「いや… いないというかいると言うか… 難しいな」


「何にしても、美人で優しくてしかも腕が良い薬師なんだから、早めに予約しとかないと誰かに取られちゃうよ」


「そうだよセリオン。 君が好ましく思う女性なんて、これまでいなかったんだから。大切にしなくては。

その腕も、治してくれたんだろう?」


「そうだ。 まだ信じられない」


セリオンは両手をギュッと握ってみた。

まだ若干の違和感はあるが、ほとんど回復している。

腕が動かなくても全然大丈夫と思っていたが、いざ動くようになると日常生活は思った以上に快適だったし、馬に乗るのがかなり楽になった。


ティリーエには感謝しかない。


そして確かに、自分はティリーエに惹かれていると思う。


ただ、22歳の自分に、16歳のティリーエは勿体ないのではと、どうしても年の差がひっかかっているのだ。

ティリーエは同じ年くらいの少年と、小さな春を育んだ方が幸せなのではないかと思ってしまうのだ。




黙り込んだセリオンに、ファラとシェーンは顔を見合わせてため息をついた。




「セリオン様! 仕度ができました!お待たせしてすみません」


ティリーエは団員達と別れを惜しみ、また頂いた褒賞や何やらを鞄に詰めていたのだが、それが無事に終わったようだ。


ポニーテールにして腰で揺れる髪がまた可愛い。


セリオンは敢えて無表情で頷き、手を差し出す。


「ファラ様、シェーン王太子様、お見送りありがとうございます。 大変恐縮です…  お2人も、御身体には気をつけて、ご自愛下さい」



「ああ、ティリーエ殿も、気をつけて」



ティリーエは再び、侯爵家の最高級馬車で自宅まで送って頂くことになった。

動き出した馬車でしばらく、座るだけで包み込むような心地の椅子のふかふか感を楽しんでいたが、数分もしないうちに眠り込んでしまった。

まだ緊張と体調は完全に戻りきっていないのだ。



ティリーエ…



セリオンは、先程ファラ達2人に言われたことを考えながら、眠り込むティリーエの頬に落ちた睫毛の影を見つめていた。





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