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西の森、魔物討伐②

セリオンとティリーエが、大針鼠との戦闘場所に着くと、


「セリオン様だ!!」

「セリオン様!」

「聖女様…!!」



セリオン達に気づいた団員が呼びかける。

表情は真っ青で汗を流していて、周りに倒れている者がたくさんいる。

一目で、戦況が悪いことが分かった。

安堵からか恐怖からか、泣き出す者までいる。


そしてそこには、聞いているより禍々しく大きな魔獣がいた。


ハリネズミというよりドブネズミという風体の、泥色をしてギラギラと赤い目を光らせ、ぶぅっと膨らんだかと思えば、ブシュッという音を立てて針を放つ。



「逃げろ!!」


別の師団長の声で、皆木や岩の影に飛び込む。



バスバスバスッ  バスバスバスバスッ バスッ



太く鋭利な針が、地に木に突き刺さる。


グジュグジュ…

針が、肌から生えてきた。


しかも、げっ歯類特有の前歯を擦り合わせ、キシキシと高い音を出していて耳障りだ。



「きっ… 気持ち悪い…」




想像よりはるかに邪悪で気持ち悪い。

ペットショップのハリネズミのイメージとはかけ離れていた。



ピカッ バリバリバリバリ!! バリバリバリバリ!


いくつかの雷が落とされた。

当たった大針鼠は一瞬で黒焦げになるも、バラバラと焦げた針を抜け落として再生、再び動き出した。



「チッ またか…」

師団長が呟く。



あの団員が言っていたように、動きを止めることはできても、致命傷にはなっていないのだ。


他の攻撃魔法である風魔法や氷魔法も、近づけなくて届かないでいる。




「セリオン様!」


ティリーエは、ここまでの道中、セリオンと話しながら来た改良版連携技を実行に移す。


セリオンが頷く。


「水魔法使い、こちらへ!!」



セリオンの呼びかけに、針鼠を遠巻きにしていた団員が集まってくる。


「奴の下に川を敷き、水たまりを作れ!」


「み、水たまりですか? 例の連携技ですね!? ですが、届かないのです…」


「良いから、まずはやってみろ!」


「「「ハイ!!」」」



ザーーーーーーーー…



水属性のスヴェン師団長も駆けつけ、5名の水魔法使いが大針鼠に向けて川を作る。

針の射程範囲外からの魔法であり、途中から川が失速しだした。

が、ティリーエが手を翳すと、ザブザブと水嵩を増して流れが早まり、ついに針鼠の腹の下まで水が届いた。


「「「やった!!!」」」


「氷魔法使い!」


「「「はい!!!」」」



数人の氷魔法使いが、その川を凍らせていく。

セリオンも加わり、一気に加速する。


パキパキパキパキパキパキパキパキ


しかし針鼠までは届かない。

またしてもティリーエが手を翳し、氷魔法を補助する。


バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ…

その先まで川が凍り、ついに針鼠の腹についていた水ごと凍らせた。



ギチギチギチギチ  ギチギチギチギチ


大針鼠はトノサマバッタの羽音のような不快な音を出し始める。

膨らみそうな気配だが、膨らめないでいるようだ。

やはり、腹を冷やすのが弱点だった。

しばらくはモゾモゾ動いていたが、次第に動きが鈍くなってきた。



「岩魔法使い!!!」


セリオンの声で岩盾を構築したカロンが駆けつける。

ティリーエは、その盾に手を向けて手を翳すと、40cm四方だった盾は5倍に拡大し、2名は守れる広さになった。



「ティリーエ様、すっげぇ!」


カロンはその盾でセリオンを守りながら、2人で針鼠に近づく。

針鼠はギラリと目を光らせ、振り絞って身体を膨らませる。

ブシュ…と針が飛ばされたが、先程の威力は無い。

岩盾で難なく防御できた。



「ハッ!!」


セリオンが盾から飛び出し、針を再生したばかりの針鼠に手を向ける。


パキパキパキパキパキパキパキパキ



針を凍らせる。

背中の頂点、天を向いている針を凍らせ、太く長く、空高く伸ばしていく。要は、避雷針を作るのだ。

雷は、細く高いものに落ちる。

これなら、雷魔法がコントロールできなくても落雷を誘うことができる。



腹だけでなく背まで冷やされた大針鼠は、忌々しそうに身じろぎをするが、もう針は飛ばせないようだ。



「今だ!!!」



セリオンは叫ぶと、地を蹴り、カロンと共にその場を瞬時に離れた。



ピカピカピカッ   幾筋もの稲妻が走り、


ズドォォーーーーーーーーーーン!!!!!



コピルら雷魔法使いが集団で呼んだ雷雲から、目論見通り大針鼠の背にどデカい落雷が落ちた。


同時に爆発音がして、大針鼠は霧散した。




はぁっ  はぁっ   はぁっ…



「「「「ヤッター!!!」」」」



皆から歓声が上がる。




「油断するな!! まだ奴は何体もいるんだぞ!!」


セリオンの一喝で口を噤むが、希望の見えた討伐に、皆の表情が明るくなった。



「ティリーエ、まだいけるか!?」


「ふぁい、セリオンさま、いけまふ!」



エネルギー切れ防止のために串刺し弁当を口に頬張りながら、ティリーエは親指を立てた。



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