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セリオン復活

アーワワワワワワワワワワ!!!???




ピキーーーーン

突然抱きつかれたティリーエは、驚きすぎて硬直している。

セリオンの髪がティリーエの耳元で揺れるから、


「セリオン様はガッチリされてるのに、髪は猫っ毛なのね」


などと、訳の分からない思考回路を巡らせている。




セリオンは、左手がティリーエの背中に回せていることに、1人で感動していた。

引き寄せようとしても、強い力は入れられなくて、ただ添えているだけ。

それでも腕を上げて肘を曲げて手で背中に触れることなど、これまで全くできなかったのだ。

左手からは、うっすら分かるティリーエの体温と、ガーゼ生地の柔らかな手触りが感じられる。


久々の感覚だ… ふわふわして、温かい…


セリオンは、久々に主張する左手の存在感と、手から伝わるぬくもりをひとしきり噛み締めていたが、


ハッ!!!



突然正気に戻り、飛び退くようにティリーエから離れた。



「もっ、ももももももももも申し訳無い!!!」



「あっ、あのだだだだだだだ大丈夫です!!!」



2人とも、ビックリするくらい赤面し、耳なんか出血してるレベルで赤い。

継ぐ言葉も無く、気まずげに下を向く。



と、また手が視界に入った。


セリオンは真顔に戻り、その両手を少しずつ動かしてみた。

左右の指を合わせて絡めてみたり、肩を上げてみたり。



そうしてアレコレ動かしていくうちに、だいぶスムーズに動くようになっている。


ふと、右手を開き、手のひらからゴロゴロと氷を出した。

落ちて、砕ける。



「まぁ…!」


ティリーエは、久々に見る氷魔法の美しさに感嘆する。


そして、セリオンが左手を出して念じれば、



「すごい!!」


左手のひらから、コロコロと氷が零れ落ちた。



「魔法も出せる… 本当に治ったのだ…」


独り言のように呟き、そしてティリーエに向き直った。



「先程は本当に、興奮したあまり、突然身体に触れて申し訳なかった。 腕が再び動くなどと、本心では思っておらず、諦めていたから本当に驚いたし、嬉しかったのだ。

だからと言って、許可なく触れた言い訳にはならないが、とにかくありがとう」



「いっ、いいえいいえ! お役に立てて良かったです。

その…(抱きしめられたことは、)気にされなくて良いです!

私の方こそ、たくさん助けて頂きましたから、少しでもご恩返しできて良かったです!


でも、まだ力は入らないでしょう…?

私の魔法では、物理的な組織修復はできますが、落ちた筋力などはどうしようもないので、ご自身で取り戻して頂く他ありません。

中途半端な回復ですみません…」



「何を言う。 この国最高の医術師も薬師にもできなかったことをティリーエは成したのだ。本当に感謝している。

また、こちらの腕を鍛える楽しみができた」


セリオンは左腕で、頼りない力こぶを作って見せた。

ティリーエも笑い、その夜はお茶とお菓子で乾杯し、穏やかに過ぎていった。







「ティリーエさぁ〜ん!」



翌朝再び出発し、夕方に西の森近くの野営地に着いた。

着いたら真っ先にコピルが飛んできた。

他にも見覚えのある団員がたくさんいて、ティリーエは嬉しくなった。



まだ、大怪我をした団員はいないが、滑って転んだり、魔物討伐の偵察で、木々に引っ掻かれて傷を作っている団員がいた。



ティリーエは彼らの傷を治しながら、皆の修業の成果を聞いて、細かい作戦を詰めたり、改良点について考えを巡らせた。




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