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買い物と情報収集

予定より花館での滞在が長引き、早くも1週間が経過している。うち4日間は病床だ。


ミラとモレアとはだいぶ打ち解け、くつろぎ感はもはや我が家レベルになってきた。

気さくで可愛いティリーエに、2人共メロメロであり、甘やかしにも拍車がかかっていた。



今朝は、王室御用達の服屋が行商にやってきていた。

ティリーエはもともと1泊2日の用意しかしていないので、着替えが足りなくなったのだ。

手持ちのお金もそんなに無いし、土地勘が無くて買い物にも出られずに悶々としていたら、雰囲気を敏感に察知したモレアが、セリオンに進言したらしい。


そして今、所狭しと並べられた至極の商品に、ティリーエは目を回しそうになっているのだ。

どれも、高級感丸出しで、ドレス寄りのデザインである。

しかも、切子硝子と同じで、値段が書いてないから余計怖い。



「ティリーエ、遠慮することは無い。

今引き止めているのは、王国側の事情なのだから、この費用はシェー…王族が持つことになっている」


シェ、って、シェーン王子でしょうね!?

人のお金なら、尚更買えないわ!


たじろぎ、ドレスにもワンピースにも触れようとしないティリーエに、セリオンが言った。



「ミラ、モレア、ティリーエに似合いそうなものはあるか?」



そこからは着せ替え大会、上級メイド2人は喜々としてファッションコーディネーターになった。

もはや物言わぬマネキンと化したティリーエは、ひたすらに試着、交換を繰り返され、何だかよく分からないうちに、5着も買うことになっていた。

そんなにいらないと言っても、3人は聞く耳を持たず、むしろ少ないくらいなどと言い出した。

服やドレスに合わせた装飾品や靴も選ばれれば、本当に金額は見当もつかない。

満足そうなセリオンとメイド2人に太鼓判を押され、とうとうそれら全てが手元にやってきた。

王太子様すみません…

今後、働きで返していく所存です…!







昼からは、ディアナ様と、王宮図書館に来ていた。


「わぁ〜!!すごいですねぇ!!」



薬草、植物学の棚には、街の書店より遥かに蔵書数が多い。

見たことのない作者や、この国にない植物など、そんなコアな図鑑もたくさんあった。

勿論、ティリーエの母様が最後に買った異国の本も、棚にしまわれていた。


「う〜!!ここに住みたいです」


「ティリーエさんったら。王城医術師や王城薬剤師、魔術師団員は入館証を貰えるので、自由に出入りができますよ」


「ええっ!そうなんですか。志願しようかな…」


「ティリーエさんなら、どれにでもなれそうですね」


他に人もおらず、2人は談笑をしながら目当ての本を探したり読んだりして過ごした。






ティリーエは、植物コーナーから外れて、動物図鑑の棚にやってきた。

魔物の図鑑もある。

魔物には魔鳥と魔獣がいて、その種類は300種以上だが、ここシャムス王国には120種類が生息しているらしい。


大針鼠のページを捲ると、

"体長6〜7m、体重は7トン前後、背中じゅうにたくさん太くて強い針を持ち、危険を察知すると全てを飛ばすことができる。

鋭い吹き矢が背中に大量にある感じだ。

皮膚は分厚くて固く、斬撃も炎も致命傷は与えられず、しかも抜けた針は2〜3分で元通り、再び皮膚から生えてくる。

苦手なものは、光、特に雷だが、それも針の前では無力。

身体に傷をつけることはできない。

雷を使って追い立てることは比較的楽である。

討伐難易度S"



そう書いてあった。

思ったよりデカい、ヤバい。

しかも再生能力が高い。

記述を見るに、今までにコイツを倒した者はいないのでは?と思った。

森へ返す、がゴールみたいだ。




ティリーエは、魔物図鑑をやめて、一般の動物図鑑を手に取った。

案外、小動物図鑑のハリネズミに、何かヒントがあるかもしれない。おおもとは同じ種類だろうし。

ハリネズミの紹介ページはすぐに見つかった。

魔物とは違って手のひらサイズ、挿絵では愛らしく丸まって、すごく可愛い。


"ハリネズミは視力が低く、ほとんど見えていない。

針は触覚の役割をしている。

基本的に夜行性で寒い季節は冬眠する。

虫やキノコ、果物など、割と何でも食べる。

背中は5000本の針に覆われているが、腹部は柔らかく、細かな毛が生えているだけ。

お腹や身体が冷えると動きが著しく弱くなって、時折痙攣のような様子を見せるときは低体温症になっている。

また、熱い季節は熱中症になることもある"



!!


これは…結構使えるのでは?

あの大針鼠も、背中は針や堅い皮膚に守られているが、腹は柔らかいのかもしれない。

あと、北の街にいなかった理由は、寒い場所で生きられないためだいうことも分かった。

目が悪くて寒さに弱く、腹が弱点。

背中の針は、弱い腹部を守るための進化みたいなもの。

これは、いけるかもしれない。



明日の会議で提案してみたい戦い方を思いついた。

残った時間は、ディアナ様に声を掛けられるまで、夢中で細胞の新陳代謝について勉強をした。



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