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作戦会議

何だかよく分からない会は滞り無く終了した。


大怪我をした団員は、炎狐と、例の大針鼠、鎌鼬鳥にやられていた。

西の森には北では見たことの無い魔物が多く、しかも北の街の魔物より、かなり大きいそうだ。

ちなみに、氷雪熊や吹雪猫などの、冷たい系魔物はいないらしい。



偵察隊の惨状を鑑みて、魔術師団はすぐには討伐に出発しないことなった。

まずは西の森の対魔物戦術を考えるために団編成を変えたり、多少なりとも訓練を積む必要があるからだ。

何の策も無く討伐に行って、みすみすの全滅は避けたい。



鎌鼬鳥は、鋭い風切羽を飛ばして相手をスライスしてくるため、防御が重要だ。

岩石系魔術師が盾を展開し、被害を避ける必要がある。

ただ、硬度で負ければ意味が無い。

そんなわけで、コピル兄を始めとする岩石系魔術師団員は、より硬い岩盾を構築する訓練を行うことになった。



炎狐は、9尾の炎の尾を持つ狐で、尾の炎をぐるぐる回したり飛ばしたりしてくる魔物だ。

ここは水系、氷系魔術師が得意な相手ということで、セリオンを筆頭に、水氷系魔術師団員は、迅速な消火と、より大きな炎を鎮火する訓練を行うことになった。



問題は、大針鼠だ。



今は、対大針鼠のための作戦会議と、部隊編成のための会議を行っている。

あの謎の誕生日会の後、まるで2次会でもするかのように始まった会議だった。


参加メンバーは王様と王太子様、第1師団長リーベイツ、第2師団長スヴェン、第3師団長パルトゥス、第4師団長セリオン、宰相セルゲイ、王城医術師ファラ、薬師兼聖女ティリーエだ。


なぜ私まで…




主張したい気持ちは大きかったが、口を挟める雰囲気ではないため、ティリーエは頑張って黙っていた。

実は既に、こっそり帰ろうとしたらガッチリ掴まれて今に至るのだ。



「先日の襲撃で最も重傷を負わされた団員の傷穴は、多分あの大針鼠によるものと思われる。あやつは、大針を自在に飛ばすことができる。もし胸を貫いていたなら、今頃命は無かったであろう」


「しかし、その場合でも、ティリーエ殿が治療してくれれば、治るのではないか?」


いやいやいや。


「あの、申し上げにくいのですが、私のせ…魔力は、死した人を蘇らせることはできません。

心臓や頭を貫かれたら即死ですので、回復は難しいでしょう」


「なんと…! それでは自分の命は最低限守らなければならないではないか」



当たり前だ。



「大針鼠は、西の森だけに生息する、3年前にヴェッセル侯爵閣下も怪我を負わされた強い魔物じゃ。

万一街まで出てきたら、大騒動になる。

何か良い手はないか…」


「風魔法はどうか?あれなら、針の間から皮膚を狙えるか」


第1師団長リーベイツの提案に、セリオンは首を振った。



「奴の背肌は驚く程固く、それこそ岩を砕く強さの疾風が出せなければ、奴に傷を追わせることは難しいでしょう」


「ぐむむむ… だがまぁ、やってみる価値はあるな。

丁度、岩魔法使いの者は鎌鼬鳥の風切羽を防ぐ盾を構築する特訓中だ。そんな鋼鉄の盾を割れるくらいの強度の風を起こせば良いんだな。

風魔法使いと合同で鍛錬させるが良かろう。

お互いに、"どんな風や衝撃を受けても割れない盾"と、"どんな堅い盾も割る風"を目指して切磋琢磨すれば一石二鳥だ」


おぉ… 故事、『矛盾』の逸話が正にここに体現されてる…

一石二鳥かどうかは分からないが…



「そういえば、針を飛ばした後は、針鼠はつる禿げ肌になるんでしょ? 守る肌の無くなった無防備なそこを狙ったら良いんじゃない?」


ファラが尋ねる。


「つる禿げ肌…。

確かに、瞬間的に肌が露出するが、その皮がまた厚くて硬いのだ。

我々も氷柱つららを飛ばしたり、剣で切りかかったりしたが、全く歯が立たなかった。

針を飛ばした後の姿は、巨大アルマジロ、もしくは巨大ダンゴムシと言っても過言ではない。

しかもその針はすぐに再生する」


セリオンが答えた。

巨大ダンゴムシ…  



ティリーエは想像して震え上がった。

見たことの無い魔物だが、むしろ針は絶対あった方が良い。



「「「ううーん」」」


皆が頭を悩ませる中、宰相セルゲイがぽつりと言った。



「何か、弱点などあれば…」


弱点… そういえば、確か…



「雷、が嫌いではなかったですか?」


ティリーエが始めて口を開いた。


「前にセリオン様がそう仰った気がします」



「ああ、あいつは針鼠だが種族的にはモグラに近く、あまり目が見えていない魔獣だ。だから四方八方、闇雲に針を飛ばすわけで、逆に特定の相手を狙うことは無い。

雷というか光が苦手で、雷光を嫌がるから追い立てるのには雷が有効だが、攻撃としては針に効かず、また肌にダメージも与えられなかった」


「なるほどですね… 」

「ううむ…」


ティリーエとその他の面々は考え込んだ。



結局良い案は浮かばないまま、会議は一旦そこでお開きとなった。

まずは分かっている課題と対策に取り組んでもらうことになる。師団ごとではなく、属性ごとに分けて訓練を行う。

師団長の属性は、もともと重複しない。

各属性の実力トップが師団長となるのだ。


火系の第1師団長リーベイツ

水系の第2師団長スヴェン

岩系の第3師団長パルトゥス

氷系の第4師団長セリオン

そして、シェーン王子は風系の最強魔力の持ち主だ。

(ちなみに王様は草系だった)

団長にいない属性である、毒と雷は、副団長から代表者を選出した。

彼らが属性ごとに統率し、時に合同で訓練を行い、技を高めるのだ。



会議は2日後にまた行われることになり、その時に、訓練の進捗を確認し、また対大針鼠戦について案を持ち寄ることになった。





ティリーエはくたくたのへろへろで、花館に帰った。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 炎狐は、9尾の炎の尾を持つ狐で、マリオの地獄ステージばりに尾の炎をぐるぐる回したり飛ばしたりしてくる魔物だ。 ファンタジー世界になぜマリオの話が? どこの誰視点で地の文を書いているの…
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