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王城へ④

「ティリーエさんは我が国で洗礼は受けられたのかな?

魔力は何色だったのかね」


続いて王様に尋ねられ、ティリーエは気まずい気持ちで答える。


「えっと… 魔力(・・)は無くて… 何色の花も咲きませんでした」


「ほほう?」


王様は目を見開き、びっくりしているようだ。


「何も出なかったと… だが、魔物討伐を、1人の死傷者も出さずにか…?

魔力を使わずに…  ほっほっほ。

それはティリーエさん、到底無理な話じゃ。

わしに隠し事はしない方が良いぞ」


「うっ」


ティリーエの小さな心臓が激しく跳ねた。

好々爺はどこ行った?という獰猛な目でティリーエを見ている。

やはり、優しそうでも一国の王。愚鈍ではやっていけないのか。



「えっ? ティリーエ、本当は魔力アリなの?」


「いや。洗礼でティリーエに何も顕現しなかったことは、伯爵家の者から証言を得ております…

そのせいでだいぶんと処遇が悪かったようです。

ただ私も、ティリーエには不思議な力があるような気がしておりました」


セリオンがフォローするが困惑顔でティリーエを見つめる。

ファラも興味津々、王様からは射抜くように見つめられ…



ティリーエはとうとう… もう隠しきれないと思い、白状することにした。

ギュッと目を瞑り、口を開く。



「え、、えっと、私は…! 」

「白の魔力じゃな」

王様がドヤ顔で断言した。



!!??



「白の魔力って??」

「白の魔力、ですか?」



白の魔力とは???

ティリーエだって初耳だ。



「うむ。

私も白の魔力持ちに会うのは初めてじゃが、随分昔に父王から聞いたことがある」


もうそれ確定なの?



王様は目を閉じてウウムと考え込む素振りを見せ、少し勿体ぶって間を空ける。

そして咳払いをひとつしてから話し始めた。


「我が国は光の加護を持つヌール大陸の太陽(シャムス)王国だ。

光の加護は7原色を基盤に他色が派生している。

例えば、水の属性は青色の花だが、そこから派生した氷の属性は水色じゃ。

地の属性は橙色だが、地から派生した土の属性は茶色だし、岩石系は(すすき)色の花だ。

それは知っているな?」



ファラとセリオンは頷いた。


へ〜  なるほど。

ティリーエはよく知らなかった。


「光の7原色を全て重ねると、光は特定の色を出さずに白、透明になるのじゃ。

白の魔力持ちは、自身だけでは何も生み出せないが、代わりに全ての属性の魔法や魔力を高めたり強めたりできると言われている。

あと、人を癒やす力がある、とも」



へ〜。そうなんだ  ‥‥ん?



「それって、最強のサポート役じゃん!」

「それが本当なら、魔術師団の心強い味方になるな」



3人から期待のこもった目で見つめられて、ティリーエはたじろいだ。

後半は無理矢理当てはまらないこともないが、前半の内容は該当しないと思う。



「最近は、魔術師の質の低下が著しく、悩みの種であった。だが、ティリーエさんがいてくれたら、団員達は実力以上の魔力が出せる筈じゃ。

だから、今回は討伐が早く終わり、怪我人も少なかったのじゃろう」


王様は自身の仮説を確信しているのか、ウンウンと唸る。

黙って聞いていたセリオンは急に、ハッという顔をした。

「‥‥そういえば、今回の討伐では、皆が生き生きと魔法を繰り出し、次々と撃破をしていました。

いつもより表情が明るく、精気に満ちておりました。

大怪我をする者がおらず、皆軽症だったのはもしかして」


「そうじゃ。ティリーエさんが、白の魔力持ちだったからじゃろう。知らず知らずの内に、その力を使っていたのじゃ」


王様は、指でも鳴らしそうに得意満面だ。

そうじゃ。じゃない。

知らない間に力を使うとか、そんなことある?



「ティリーエさんは肌の色が陶磁器のように真っ白だから、濡れた手の甲に白の花が出ても分からなかったのじゃろう。

白の魔力のことは、一般には知られていないしの」


「そっ… そんな力があるのですね。初めて伺いました…」


「すごいティリーエ!! だから、ティリーエが前衛に移ってから負傷者が少なかったんだね!

なるほど〜! いや、いくら腕の良い薬師だとしても、ちょっとおかしいなと思ってたんだ〜!

あぁスッキリした!」


ファラはにこにこして運ばれてきた鶏肉のコンフィに齧り付いた。


セリオンは、それなりに納得しつつも何となく釈然としないものを感じながら、同じくメイン料理にナイフを入れた。




皆が納得の雰囲気で食事に戻る中、ティリーエだけが目を泳がせて汗を流していた。


だって、勿論、全く身に覚えがなかったのだから。

ティリーエの力は"アマルの聖力"であって、"白の魔力"ではない。

ただ今更違うと言えない雰囲気で、しかも違うと言ったらじゃぁ何なのと問い詰められたら困る。



この力のことは絶対に他言しないと、祖父と約束しているのだ。

さっきはウッカリ暴露しそうになったけど、踏み止まれて良かった。

ティリーエのせいで一族が皆殺しとか聖力持ちが誘拐されるのは絶対に防ぎたい。

目をつけられて悪用されたらひとたまりもない力だ。



だが、だからといって、嘘や勘違いはどうなのだろう…


カチャ…

こんがりツヤツヤの鶏肉が、ティリーエを見つめている。

味の分からない食事は、まだまだ続くのだ。





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