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魔物討伐①

グギャァァァァァ



断末魔を上げて魔物が倒れる。

しかし油断をせず止めを刺す。

"核"を壊さなければ、魔物は何度も蘇る。

セリオンは手をかざして氷矢を魔物の眉間に向かって放った。


矢が深々と刺さった魔物は再び叫び、絶命した。

この蛇型魔物の核は、眉間にあるのだ。



落ち着く間もなく、急に影が差し込んだ。

サッとしゃがみこんでやり過ごせば、耳元で風を切る音がして、鋭い爪がマントを掠った所だった。



顔を上げると、プテラノドンタイプの魔鳥が空に舞い、ギャアギャアと喚いている。



飛行系の魔物は炎を使うことが多い。

加えて直滑降で人間に向かい、傷つけたり攫ったりする。

昨日も若い魔術師が1人、同系の魔物に襲撃されて傷を負った。

かなり広範囲に切り裂かれて痛々しく、仲間が半べそで付き添っていた。

今は後衛で治療を受けている頃だが… 

彼はもう戦えないだろう。



ボゥッ



爪は避けたが、今度は吐き出された業火が押し寄せる。

セリオンは氷盾を展開し、直撃を避けた。

炎と氷は相性が悪い。

戦場そのものの温度も上がるから、氷魔法の威力が下がるのだ。



「くっ…」


じりじりと氷盾が押されている。

轟々と爆ぜる炎が透明な盾越しに見えて、背中に冷や汗が伝った。

他の隊員を見れば同じように火鳥に苦戦している。

そもそも、討伐を始めて今日で2週間。

疲労もかなり出てきている。



とその時。



ドシャァァァァ!!!



大量の岩石が炎を押しのける。

火鳥にも降り注ぎ、一旦炎を吐くのをやめたようだ。

それでもなお、ドサドサと積み上げる。

岩石は火鳥の致命傷にならないが、容量攻撃として効果を発揮する。


現に、ゴツンゴツンと岩をぶつけられ、岩石に頭と羽を埋められた火鳥は、忌々しそうに羽をバタつかせている。

岩石に阻まれて、思うように炎も吐けないようだ。



「団長!!!」


という声にハッと我に返り、氷柱を構築する。

右手を振り上げ、火鳥の胸に向かってそれを放った。


ズドン!と氷柱が胸を突き破り、一気に胸の核を壊された火鳥は、叫ぶ間も無く霧散した。




「団長、ただ今戻りました!」

「戻りました!」



そこに現れた若い魔術師は、最近入った団員だった。

それこそ昨日、火鳥に大怪我をさせられた者だ。

背中がパックリ裂けて、かなり血が出ていた。

隣のチビも一応団員で、昨日彼をかついで行った奴だ。

よく見れば顔が大変似ているので、2人は兄弟なのだろう。

先程の岩魔法は、兄の方の魔法のようだった。



「君は昨日、火鳥にやられて後衛に下がった筈では…」


セリオンが尋ねると、


「ハイ!! もうすっかり良くなりました!この通りです!!」

「僕も元気いっぱいです!!」(←もともと無傷)



と腕を振り回し、ダンダンと足を鳴らしてみせた。

弟も、負けじと首をぐるぐる回した。



嘘だろ?

昨日あの大傷と出血で今日全快なんて…

痛みを我慢している… 感じではないな。

有り得ん。

こいつが魔物だって方が納得できるぐらいだ。



セリオンが頭に???を浮かべて首を傾げていると、



「薬師ってすごいんですね!」

「すごいです!」



若い魔術師は瞳をキラキラさせて話し出した。

弟も首を上下に振り続けている。


「あの人がいてくれるなら、怪我も怖くありません」

「怖くありません!」


「治療も全然痛くないし、すぐ治るし、しかも綺麗」

「美人!」



2人は昨日受けた治療の様子を教えてくれたが、それは(にわか)には信じられないような話だった。

そういえば、いつも討伐に出ると2週間で半数はリタイヤするのに、今回は心なしか人数の減りが少ないようだ。

こいつらみたいな復帰組が、他にもいるのだろうか。




よく分からないが、とにかく後衛部隊に、腕の良い薬師が入ったらしい。

それは有り難いことだ。

討伐を無事終えたら礼を言いに寄ろう。



ただまずは、目の前の火鳥の群れと、熊豚型魔獣をどうにかしなくては。

セリオンは、妙に元気のある2人と共に、ひたすら攻撃魔法を放ち続けた。



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