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ノワの方舟  作者: EVO
決戦、暗黒生命体
70/71

平穏、…平穏?

「ノワ様・・・」

「ノワール」


 シェフィが正面から私を抱きしめる、大きな胸がふんわりと私の顔を包んだ、ばぁばも後ろから私を抱きしめた、2人に抱きしめられて私はホッと心に暖かいものが広がった。


「大丈夫、大丈夫だよ、思っていた以上の感情と、思っていた以下の感情に自分でも驚いただけだから」


 無意識に考えていなかったというか、そう、他人事のように感じていた自分があったんだよね、ママはそんな事件があったような様子を全く見せなかったのも子供の私に心配を掛けまいとしていたのは当然だったのに、今更第三皇子本人に会ってから思い知るなんて。

 改めて私には貴族の世界は無理だなと思い知った出来事となった、理不尽でも飲み込まねばならない事情や感情を強いられるなんて今の私にはとても出来そうに無い、いつかもっと大人になった時、ママと同じ年齢になった時にはそうなれるのだろうか、今の私には何も分からなかった。


「本当はね、誰にも言っていなかったのだけど事前に取り決めをしていたの」

「取り決め?」

「ええ、もし、万が一にもあの子が赦しを得られたら開拓の惑星を1つ任せてみようかって」

「赦しって、あの顔じゃあ」

「ふふ、殴られたけど貴族としての赦しは2人から得られたわ、でも実子からはダメね」

「それって」


 私のせいで彼の人生が変わるってこと? そもそも星1つなんて男爵家程度の権力だ、それさえも任せられていないということはこれまで本当に自信が犯した罪と向き合ってきたのだろう、例えば皇帝陛下(じいじ)が甘い処分をしていたとしたら、皇族の平均としては一星系くらいは任せられていておかしくはないのだから。


「いいよ、私は別に」

「え?」

「ちゃんと星を統べる能力があるのなら活かしてもらった方がいいと思う、私がどう、って言うよりは皇帝陛下と皇后陛下の判断に任せるよ」


 皇帝皇后両陛下にもそれなりの信念や考えがあっての事なんだろうけど、皇族だって遊んで暮らしている訳では無い、幼い頃からの教育にしたって統治に関する内容は当然施されているだろうし、ママとおじい様おばあ様達が貴族として赦したと言うのならば、貴族としてなんて立場は私は烏滸がましいにも程があるしね。

 飼い殺しにするという罰もあるだろうけど、どうせ能力があるのならその力は活かしてもらいたいと思う。

 まあ、自由にさせた途端に昔と同じことを繰り返したら処置無しだろうけど・・・


「惜しいわぁ、ノワール本当に皇族にならない?」

「ええっ!?」

「皇族教育も貴族教育も受けていないのにそんな視点は持てないわ、普通は感情のまま選択する人間ばかりなの」

「そうかな、激情を持つほどの関わりが薄いからだと思うけど」

「・・・お言葉ですが、ノワ様はアークのキャプテン、恋人も居りますので」

「あら、残念」

「ちょっ、シェフィ!」

「皇族になったらニーナ様とは離れ離れ、これまでの様な生活も二度と出来ないでしょう」

「あー、ね、まあ、それは」

「そうよねえ、自由を犠牲にしてまでなりたいものじゃないものね」

「う、なんか、ごめんなさい」


 皇后陛下(ばぁば)は苦笑をしてしつこくは言わなかった、本人にしか分からない苦労も多いんだろうね。


「あーあ、私も航宙艦で外に出てみようかしら」

「ぶっ!」

「うふふ、冗談よ冗談」


 若干、その瞳に宿る光には本気の色が見えたのは気の所為じゃ無いよね、皇族教育か何かで武道とか航宙艦の操作、艦隊の指揮は必須項目らしいからやろうと思えばやれるだけに恐ろしい提案だ。

 皇后陛下(ばぁば)が出奔したら私の時とは比較にならない規模で追っ手が掛かる、多分、皇帝陛下(じいじ)勅令の大規模艦隊が編成されるだろう。


「皇族ジョークよ、でも譲位した際にはゆっくり旅行しても良いかもね、その頃にはあの人も亡くなってるかしら?」


 ひい、ばぁば!?怖い怖い、皇帝の死去を匂わす話とか下手をするとアレがアレでアレな話題だよ、皇族ジョーク恐ろしいッ、護衛さえ居ない皇宮の奥での話だからまだ大丈夫だけどさ、護衛騎士とかお付の侍女が聞いていたら目を剥いて驚いていただろう。

 まあ譲位自体は有り得ない話じゃない、私は曾孫で15歳、皇帝皇后両陛下(じいじとばぁば)は曾祖父母なので高齢なのだ、生前譲位をする可能性はゼロじゃないんだよね。

 皇帝の息子世代である皇太子夫婦が私から見て祖父母で50代、皇帝の孫世代である皇子達が私から見て叔父叔母、父世代30代前後なので、世間の予想では現皇太子夫妻を飛ばして孫世代の叔父叔母が皇位を継ぐなんて話はあるあるだ、叔父叔母が皇帝とか近いなあ・・・


「その時はノワ様を護衛に推しましょう、腕は確かですよ」

「あら、シェフィちゃん名案ね!」

「ちょおー、ちょっちょっ、上皇上皇后の護衛て」

「あら、裏事情を知る人間からしたら最適な護衛だと思うわ、うふふ老後の楽しみが出来たわね!」


 いや確かにね、世間では一般庶民な私だけど、皇族から見たら身内で護衛ならこれほど安全な存在は居ない訳で気持ちは分かる、護衛も余程気を許した相手でも気を遣うんだよね、ニーナが初めてアークに乗った時の気持ちを考えると申し訳ないんだけど、なんとも言えない違和感というか落ち着かない感があるからね、だからと言って私が上皇上皇后の護衛を担うのを、半世紀以上それを担ってきた近衛騎士が「はい、そうですか」と頷くかと言えば、自信を持ってノーだと思うよ。


 ウキウキとした様子でアレコレ考え出したばぁばに水を差す事も出来ず、私は見守ることしか出来なかった、う、うん、まあその時はヨロシクオネガイシマス?




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