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ノワの方舟  作者: EVO
決戦、暗黒生命体
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会食2

「はははは、いやすまぬなノワ」

「ごめんなさい、見苦しい姿を見せてしまって」

「う、ううん」


 皇帝皇后両陛下は僅かな時間で落ち着きを取り戻した、皇帝陛下(じいじ)皇后陛下(ばぁば)は直前まで揉めていて最後の最後に私に働き掛けて本人の最終意志を確認しておきたかったらしい。

 その割にばぁばはかなり迫真だったのは知らないフリをしていた方が良いだろう、次いでに副賞の目録の中には大量のジュエリーやドレスがあることもね。


「アニマトロン男爵も、申し訳なかった」

「いいえ・・・」


 無愛想で言葉少なに答えたおじい様をじいじは咎めなかった、あくまで私の大会に対する副賞だと言う立場は崩さない、皆感情をコントロールする程度には大人だった。

 この後別室で会談することにはなってるんだけどね、それは私とは関係の無い男爵家と皇家の私的なお話となっている。


 会食はそんな感じで盛り上がることもギスギスすることも無く粛々と進んだ、皇族が食べるだけあってとても美味しいんだけどね、雰囲気が中々リラックス出来るものでは無かった。

 キャプテンはお酒に舌鼓を打ち、シェフィはポーカーフェイスで気にして無いけど、私は落ち着かない。

 ニーナはもういい加減腹を括ったのか自然で綺麗な所作で黙々と食べていた、ママ達も貴族だけあってそつ無く食事を楽しんでいた、うん、私も見習おう・・・


 ***


「こちらのスーツもお似合いですね」

「そ、そうかな」

「はい、とてもお似合いですよノワ様」

「こっちもいいんじゃないかい?」

「えー、どうかな」


 会食後、私とキャプテン、シェフィとニーナは別室であれやこれやと()()の粗品という名の超高級贈答品を試着して時間を潰していた、皇帝、皇后陛下、アニマトロン男爵家らの話し合いがまた別室で行われる為だ。

 賞金だけでも大金で恐縮なのに、贈答品もまた豪華で皇族の面子とは如何にと言ったレベルのものだった、勿論私だけではなくアーククルーのシェフィ、ニーナへ向けたメンテナンスフルードやパイロットスーツ、メイド服から普段着、正装やオシャレ着といったありとあらゆる衣服が耐レーザー素材や耐グラビティ素材で揃えられていたのだ。

 僚友となっているキャプテンにも同じ様な仕様の衣類と趣味嗜好に合わせた品物(お酒)が揃えられていて、キャプテンは過去にないほど上機嫌、皆楽しく着せ替えあったりしていた。


「あらあら楽しそうねノワール」

「あっ」


 そんな部屋に皇后陛下(ばぁば)が現れる、話し合いは終わったのだろうか、キャプテン、ニーナ、シェフィが揃って立ち上がり頭を下げる。


「ああ、良いのよ楽にして、そういうのはナシにしましょ」

「アイマム」


 ドッカとソファーに座るキャプテン、いやほんとこういう所はすごいと思うよ、せめてニーナみたいにおずおずと座り直すとか、シェフィのように会釈して立ったままとかさぁ。

 私? 私は普通のままだよ、ばぁばの目がとても優しく私を見ているのが解っているからね、家族と公で名乗ることは出来なくても今この場でそういう事を気にする人間は居ないだろうと判断した。


「楽しそうな所悪いのだけどノワールだけ来てくれないかしら」

「私だけ?」

「そうね、…シェフィだけは着いてきても構わないわ」


 私だけ、となると皇族関係の話か、ちらりとシェフィを見るとばぁばは穏やかに頷いた、シェフィは人造機械(アンドロイド)なので口止めするなら問題ない、知る人は少なくしたいのだろう。


 コツコツコツコツ、うーんやっぱり本物は違うよね、姿勢、所作、気配、今似たようなドレスを着てばぁばの後を着いて歩いているのだけど、私は服だけって感じだ、・・・綺麗だなあ。


「似合ってるわよ、ドレス」

「えっ、あ、ありがとう、ございます?」

「気に入ったようで良かったわ、私が選んだんだけどイマイチなものは好きに使っちゃっていいから」

「あ、えっと、全部可愛くて、着やすくて、とんでもないです皇后陛下」

「あら、悲しいわ、皇帝はじいじなのに、私は皇后陛下?」

「えっ!? ええーっと、」


 一瞬迷ったものの、柔らかい空気はそのままで優しく話し掛けてくるので私は遠慮なく言うことにした。


「ありがとう、ばぁば」

「ふふふ、ばぁば、ばぁば、ね、どういたしましてノワール、話し合いは無事終わったの皇帝と第三皇子、アニマトロン男爵家との話し合いはね」

()、と言うのは?」

「あのアホ孫に一応、ね、」


 歯切れ悪く苦笑したのは私の遺伝上の父親のことだからだろう、ママとおじい様おばあ様はまた別室に移ったらしく、元の部屋には皇帝陛下(じいじ)と第三皇子が居て、私と顔合わせする段取りらしい。

 今歩いている区画は完全に皇族と許可された人間しか入場出来ない場所で近くには護衛さえ居ない、何か騒ぎあってもそうそう広がる事は無いだろう。

 トントントン、ばぁばが静かに重厚な扉をノックをすると部屋の中からはじいじの返事が返って来た。


「良いぞ」


 すー、ふうー、意外と私は緊張していた、じんわりと手に汗を握り、決心してばぁばの後に続いて部屋へと入った。


「前が見えねえ」

「身から出た錆じゃ、馬鹿者」


 部屋にはじいじと顔を真っ赤に腫らした美丈夫、私の遺伝上の父がそこには居た、事前にじいじとは話をしていて私が彼を殴る権利をアニマトロン男爵、おじい様に譲ると言っていたので、おじい様とママから思う存分殴られたのだろう、まあそれにしては数発程度しか殴られてはいないようだけど。

 私は皇后陛下(ばぁば)とそっくりだけど、彼も憎らしい程に皇族の証の白銀の髪と蒼眼を受け継いでいる、30歳くらいだろうか若い頃は色々と話題を振り撒いていたようで、情報端末で調べると彼の話題には事欠かない。


 うーん、驚くほど無感動に私は彼を見ていた、何も思わない、アニマトロン男爵家は家族として見れる、皇帝皇后両陛下も見れる、産みのママは育てのママのお陰なのか絆をしっかりと感じられたのに、『彼』は見事にそこら辺の道を歩いてすれ違った他人の様な面持ちで私は見ていた。







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