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ノワの方舟  作者: EVO
決戦、暗黒生命体
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15年前の母

「じゃあ、じいじまたね」

「うむ、息災でな」


 じいじに手を振って別れると近衛旗艦グランゼウスはすぐ様光の彼方へと飛び去って行った、皇帝陛下の立場は決して暇なものでは無い、慌ただしく大嵐は主星へと帰って行ったのだった。


 じいじからは幾つか重要な情報を貰えた、育てのママを殺し、私を連れ去ろうとしたのは貴族の手先、企んだ貴族はじいじの方で処理した事。

 事件の際に身元を誤魔化す為にいくつもの賊を経由した為に私の顔が賊共の間に広がった可能性が高く、今後身の回りに注意する事。

 育てのママはじいじが手を回して葬儀を行い、私名義の墓地契約が結ばれている事など、気掛かりだった事がここに来て殆ど解決されたのは幸いだった。


 そしてこの先、生みのママに関する情報も得られた、アニマトロン男爵家は15年前の事件から皇家とは疎遠な関係になっていた。

 勿論公的な謝罪と補償は終えているのだけど必要最低限の社交以外は惑星から出て来ない一族として認識されている、まあ元々皇家と接するには男爵家は爵位が低過ぎるので接点が限りなく無く、関係改善出来ぬまま15年が経ってしまったそうな。

 表立っての活動は空振りに終わり、陰では書状メッセージを送ってもけんもほろろな対応で、不敬だと騒ぐ貴族も居れば、第三皇子が起こした醜聞を頭を下げたから許せと言うのは傲慢だ男爵家の対応も理解出来るという貴族も居て、定期的に話題に上がるそうだ。

 但しじいじは「ノワールを間に入れて関係改善をするつもりは無い」と言い切っていて、皇家と男爵家との問題は考えずに会いにゆくと良いと言ってくれた。


 程なくしてアニマトロン男爵家が領地経営する惑星に到着した私達は着陸申請をして軌道上で待機していた。


『こちら入国管理局、アーク応答を』

「はい、こちら傭兵ギルド所属艦アーク」

『着陸許可が降りました、指定座標の宙港へどうぞ』

「はい、ありがとうございます」

『ようこそ当惑星へ、あなた達の入港を歓迎致します』


 軌道上から大気圏へと突入シークエンスを開始、振動もなく周囲が赤熱して行き、シールドが真っ白に発光し始めると強化ガラスの生の光景が映像へと切り替わり減光された。

 帝国内において惑星に入る場合、入国管理局を通すのは変な感じがするけど遠い過去には星ごとに国が別れていた時代があり、その名残から入『国』管理局の名前が残っているらしい。

 それにしても大気圏突入は初めてで実はドキドキしていたのだけど、なんてことも無く拍子抜けした、これも昔は大変なことで突入角度や軌道計算をしないと機体が燃え尽きてしまう事があったそうだ、今はシールドが発達しているので何も考えること無く突入しても問題ない、まあオートで色々と計算されて誘導しているんだろうけどね、管理局によって物理的な衝突事故が起きないように突入タイミングを気をつけているだけで、大気摩擦は大した問題は無い。


「キャプテン、ママって何が好きなの?」

『あー、甘いもの?』

「他には」

『んー、一般的な貴族令嬢だ、花も人並みに』

「花って、生花? 合成花じゃないよね、どういう花が好きなの?」

『・・・』

「キャプテン?」

『アタシよりノワの方が知ってるだろ、15年一緒に過ごしたんだし、つーか会ってから聞け』

「だってー、育てのママと生みのママは違うもん」

『そりゃー違うけど趣味嗜好は同じだよ、あたしゃ寝る、おやすみ』

「あっ、キャプテン待っ、切られた・・・」

「ふふふ、大丈夫ですよノワ、暖かく迎えてくれます」

「そうかな・・・」

「はい、きっと」

「でも、銀髪恐怖症とか、青眼が嫌いとか」

「はい、いいえ、少なくともノワ様御誕生時点ではその様な精神疾患は確認されておりません、先ずは会ってそれからと存じます」

「うん・・・」


 会うのが不安な私はキャプテンにアレコレ聞いていた、聞いていたけどキャプテンは面倒くさくなったのか通信を封鎖してしまった。

 シェフィは私の誕生日と起動がほぼ変わらないから生みのママの事をあまり知らない、キャプテンが1番詳しいから聞いていたのに・・・

 育てのママは生みのママのフルコピー人造機械(アンドロイド)だから性格は15年前時点では変わらない筈だ、でも私のママを実際やってきた育てのママと、そうでない生みのママの15年では生きて来た時間が全く違う、そっくりなのは見た目だけであって、ママの顔をしたママに会いに行ったらどうなるか私は怖いのだ。


『大気圏突入シークエンス完了』


 メインモニターが外の生の映像に切り替わると赤熱していた光景は終わり、眼下には大きな貯水槽が広がっていた。


「わあ、凄い大きな貯水槽、容量どれくらいなんだろ」

「ノワ様、これは貯水槽ではなく『海』ですよ」

「海? これが、あの塩水の海・・・」

「ノワは海は初めてですか?」

「うん、凄い、こんなに大きいんだ」

「泳いでみるととても気持ち良いですよ」

「泳ぐ・・・、この大きい水で」

「塩水は人体の性質上体が浮きやすくなっております、浮き輪等の貸し出しサービスや海上ビークルもありますので行楽を楽しむのも良いですね」

「うん、綺麗・・・」


 私が知識として知っている『海』は灰色のものだ、今見ているのは一面真っ青でとても綺麗で息を飲む光景だった。

 シェフィとニーナが言うには海は赤や灰、黒と多種多様な顔を見せるという、青い海は透明度が高く空を映し出した綺麗さの象徴らしい。

 空から降る『雨』や『雲』と天気によっては濁ったり荒れたりして、ここまで穏やかで青いのは珍しいのだとか。

 此処がママの済む惑星、私はあまりの美しさに夢中になって外を見続けた。


 ***


 宙港へ着陸して指定のポートにアークを停める、手続きを済ませて艦を降りるとサアーとなんとも言えない匂いの含んだ風が頬を撫でた。


「なんか生くさいような、これは何のにおい?」

「これは『潮』の香りです、端的に言えば海に棲息する生物の総合的な匂いとなります」

「あ、そっか、確かに生魚っぽい感じだね」


 料理で何度か嗅いだことがあるよ、ただ殺菌されているのか扱ったことのある素材はここまで強いにおいはしない、これが生の生き物のにおいなんだ。

 湿気も完全に管理されたコロニーと違ってしっとりとした感じが強い、風もこんなに強く吹くこともないし、これが惑星かあ。

 空も青いんだね、宇宙は真っ暗なのにどういう現象なんだろう。


「ノワ様、初めての直射日光はお肌に悪いのでこちらを」


 シェフィが縁の大きい帽子を準備して私に被せてくれた、一応航宙艦の中では健康の為に定期的に医療ポッドに入っているから紫外線も浴びているんだけど、それとはやっぱり全然違うらしくて日差しに慣れるまでは気をつけた方が良いらしい。

 キャプテンハットはじいじに会った時からキャプテンに返して、私は素の姿のまま過ごしているからね。


「ほれ、後でいくらでも見れるんだ、取り敢えず行くよ」

「はーい、あ、ニーナは直射日光大丈夫なの?」

「はい、私は定期的に惑星でのサバイバル訓練を受けておりますので肌荒れや極端な日焼けはしません」

「そうなんだ、じゃあ、私だけ?」

「そうなるね、アタシも元は惑星住みで慣れてるからねえ」


 シェフィは人造機械(アンドロイド)なので余程の有害光線じゃない限りは影響出ないもんね、そうなると純粋なコロニストは私だけで、惑星に降り立ったのが初めてなのも私だけかあ。








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