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ノワの方舟  作者: EVO
決戦、暗黒生命体
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暗黒生命体討伐戦線4

「ご武運をお祈り致します、お姉様」


 遂にその時が来てしまった、ギリギリまでお姉様の艦アークに滞在した私は港湾で白銀の美しい艦を見送っていた。

 外部ホロインターフォンで映し出されたお姉様は親指を立て笑顔で手を振る、同時にアークを固定していたアンカーアームが外されてゆっくりと艦は港湾を離れて行った、航宙艦独特の高周波の残響を耳に残して・・・


「大丈夫ですよ、アークは、ノワ様はとてもお強い傭兵です」

「・・・うん」

「お嬢様・・・」


 心配したサトゥーが私を慰めるように穏やかな声で言った、お姉様は大丈夫信じている、そう心に決めていてもやはりこれから起こる戦闘の内容を知っていると不安もあるのは事実。


「決めた!私も航宙艦乗りになる!」

「おやおや、そうですか」


 サトゥーは静かに笑うだけで何も言わなかった、てっきり止められるかと思ったのに。


「止めないのねサトゥー」

「あれだけの腕、人柄を見せられて憧れるな、は無理があります」

「サトゥーも?」

「ええ、これでも航宙艦乗りの端くれ、畏敬と憧憬の念に絶えませんよ、お嬢様でなくとも憧れる方は沢山居るでしょう」

「うん」

「ですが、私は兎も角、旦那様は良い顔をしないでしょうね」

「分かってるもん、でも決めたんだから」


 お父様が反対しても私は絶対に航宙艦乗りになる、そう決めたの、憧れのお姉様の様に強く優しく格好良いパイロットに、お父様だって航宙艦製造メーカーで働いているのだから口が裂けても「危ないからダメ」とは言えない筈だ。

 私は早速サトゥーを巻き込んでお父様の説得方法を考え始めた、ダメでもお姉様の様にシミュレーターをやり込んでライセンスを取ってしまえばこちらのものだもんね!

 その時はお父様の秘書のエマーさんにシムの使用をお願いしよう。


 アークは既に小さい粒程の大きさになっている、コロニーから遠く離れた白銀の流星が、軌跡を残して銀河の海へと飛び立って行った。


 ***


「キャプテン調子は?」

『ご機嫌だよ!やっぱり新型艦は良いねえ! ゼクセリオン縛りだけが心残りだけどね』

「そこまでして貰っておいて文句言ったら怒られるよキャプテン・・・」

『ノワ様、此方の事はお任せ下さい、最悪コントロールを乗っ取って逃げます』

『へーい勝手な事するんじゃないよシェフィ!』

『病み上がりという事をお忘れなくキャプテン』

『大したことないさ、新生ブラックダイヤ号行くよ!』

「ノワ様、オモチャを手に入れたキャプテンの興奮は当分落ち着きませんので放っておきましょう」

「ふふ、キャプテンさんも航宙艦乗りですね、新しい艦を手に入れるとはしゃぐのは全宇宙共通です」

「まあ、気持ちは分かるけどね、でもキャプテンのは貸与品なんだから・・・」


 新艦を手に入れてはしゃぐ気持ちは解るよ、私だってアークに初めて乗った時はママが殺された悲しみが強かったけど、それでも艦を手に入れた喜びがあった位には嬉しかったのも事実だった。

 キャプテンの場合は目の前で新造艦を爆散されたから仮の艦と言っても喜びはひと塩なのかな。


『イーーヤッホォーーー!!!』


 スラスターを噴かして加速、舵を切って急速旋回、テンションの高いキャプテンを生暖かく見守る、ふふ子供だなぁ、まあ慣熟運転も兼ねているからビュンビュン飛び回るのも当然だけどね。


『ブラックダイヤ、ウエポンシステムオンライン』

「ノワ様、念の為に距離を取って下さい」

「了解、どうぞどうぞ」


 納艦が済んだのは出発予定時刻直前、大規模作戦合流宙域までは距離も時間もあるので、移動中に艦の挙動や癖、武装確認等々総てを確認しておかないと実戦投入は怖い。

 勿論ゼクセリオン・コーポレーションのドックで調整は為されているけど最終的にはパイロットの感覚との擦り合わせになるから、これは必要な措置だ。


『ダミー射出、キャプテンどうぞ』

『アイアイ!』


 納艦時には試射用のダミーがいくつか搭載されてパイロットに引き渡される、その辺のデブリとかにぶっぱなしても良いんだけど、ある程度熱源を相手にして試さないと意味が無いからね。

 マルチアームが4本が両翼付け根近くと艦底部から展開、このマルチアームは多関節腕で前後上下の死角をかなり少なくして狙い撃てるアセットだ、それら4本にレーザー砲が四門装着されている。

 但し死角を減らしたから強いという訳ではない、AIサポートが利いていても最終的な判断はパイロットなので扱いきれなければ意味が無い。


 ダミーの配置はブラックダイヤから見て前方仰角側左右に1、前方伏角右側に1、後方に2の配置にあった、私なら前方3を処理してから反転するけどキャプテンは違った。

 レーザー砲四門ともが別々にロックオン、前方は捉えた先からパルスモードで断続的にショット、後方はビームモードの一門で照射しながら薙ぎ払って撃破した。


「おおー、上手い」

「凄い、のは分かるのですがノワさんから見ても上手でしたか?」

「うん、扱いの難しいマルチロックオンを使いこなして、無駄の無い流れる様な動作だったよ」

「確かに、サラリとやってみせましたね」

「多分撃破速度なら私より早いかも」

「そこまでですか」

「やろうと思えば同じ事は出来るけど、練習しないとあそこまで綺麗に流せないと思う」

「流石、金獅子級傭兵、ですね」

「うん、キャプテンの操艦は初めて見るけど、相当だね、負けないけど!」

「御二人の艦に乗った私からすると、機動(マニューバ)はノワ様、射撃(シューティング)はキャプテンが僅かに上といった所感になります」

「傭兵としての経歴を考えるとドレイクさんの技術は納得ですが、ノワさんは異常では?」

「え、そうかな? シムやってれば出来るようになるよ?」

「・・・」

「・・・」


 なんでここでシェフィもニーナさんよ黙り込むのかな!? シムで練習していれば大抵の事は出来る様になるよ、ホントだよ!


『ノワ、練習したら出来る様になる、なんてのは出来る人間の言葉だよ』

「ええ・・・」

「練習しても出来ない人は居ますよノワさん、私も小型戦闘艦は自信有りませんし、ノワさんも私を生身で制圧して下さいって言われたら困るでしょう」

「う、それは確かに無理」

『その辺りはノワも年齢相応だねえ、まだまだ子供だ』

「確かに、ですがそこがノワ様の魅力でもあります」

「むう、子供じゃないし!成人したもん」

『ハッハッハッ! 子供だ成人だと言っているうちはまだまだだねえ!』


 キャプテンの最後の一言で艦内にはどっと笑いが満ちた、シェフィもニーナさんでさえもクスクスと、私以外の全員が笑っていた、むー!これ以上言うと逆効果な気がして私は黙るしか無かった、もうっ!








ブクマ20超えありがとうございます。

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