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ノワの方舟  作者: EVO
動き始めた未来
30/71

軍人の私服

「え、これだけ?」


 私はニーナさんの私物を見て驚いていた、グラッドストンを拠点にして何回か宇宙海賊狩りをして皆の連携が慣れて来た頃、お互いの部屋に行き来して、お茶をしたりする程度には打ち解けたある日のことだ。


「はい、取り急ぎノワさん達との合流を最優先で取り纏めて来ましたので」


 そう言ったニーナさんの私物、特に衣類はかなり少ない、思えばアークに搭乗した時に持って来た荷物は旅行バッグ2つ分、あの時は私服を着ていたけどバッグの中には嵩張る軍服も入っていたとすると私物自体がかなり少ないのも頷ける。


「買いに行こう!ごめんなさいニーナさん」

「問題無いですよ、ローテーションは回っていますし部屋着は帝国軍のスウェットを使い回していますから」

「ニーナ様そういう問題では御座いません、貴女の返事は、行きますor行きます、です」

「えっ」

「えっ、じゃないよ、ニーナさんも言ってくれないから、ううん私が気を回して時間取れば良かったんだ」

「あっ、いえ本当に困ってませんよ、優先度は低いから言わなかっただけでですね」

「ダメダメ、決まり!今から買い物行きます、シェフィ、カタログ出してニーナさんと眺めてて、私はキャプテンに言ってくるから」

「はい、畏まりました」

「えっ、えっ」


 服をローテーションで回してるって時点で足りていない証拠だ、そりゃあ共用の消耗品はアークにストックしてあるけどさ、化粧品やボディケア商品はそうもいかない、アークでは私もキャプテンもシェフィでさえもそれぞれ個別に用意しているんだから。

 まあシェフィは人造機械(アンドロイド)なのでメンテナンスポッドに入れば調整と洗浄は終わるんだけど、メンテナンスポッドにしたって詰め替え香料やトリートメント、洗浄液はちゃんとシェフィの好む物を発注している。


 何が言いたいか、買うでしょ、ニーナさんの服や日用品を経費で買うでしょ。

 大丈夫大丈夫精々100万、いっても200万マニ位大したことないからね、アークで快適に過ごす為の必要経費だよ。

 航宙艦乗りは当然だけど人生の時間の殆どを艦の中で過ごす、小型艦と言っても数十メートルサイズあるけど、密室だから不満は少しでも解消しておくべきなんだよね、メンタルケアは人類宇宙史でも永遠の問題だ。

 ニーナさんが乗っていた戦艦級なら広いし人も多いから、また対応が変わってくるんだろうけど、アークは小型艦なので全員のびのび仲良く暮らせる環境を調えるのは艦長として当然の責務だよ。

 と、言う訳でショッピングへレッツゴーー! キャプテンもこの重要性を理解しているので快く送り出してくれた。


「あ、あの、自分で支払いますから」

「ダメです、はい艦長命令!今日の買い物はキャプテン・ノワールが全て持ちます!」

「流石ノワ様です、大いに賛同致します」

「そ、そんな、受け取れません」


 遠慮するニーナさんに強権発動をした、パイロットスーツは帝国軍用を着用しているから、外部とのやり取りする時もあまり良くないんだよね、スーツ自体結構高価なものだから自浄ナノ搭載型を2、3着買うとしても数十万マニする。

 それに私服を追加するとして、グラビティウィーブ素材とか航宙艦内で着るのに適する素材の服も一般的なコロニスト着より高いから、あっという間に100万マニ超えてしまう。

 あれ? 100から200の予定だったけど、予算300万マニは組んでおこうかな、私は端末を操作して暫定予算をシェフィに提示した、ニーナさんに言うと止められるからね、先にカタログを一緒に見ていたシェフィなら概ね試算は出来ているはずだ。


「・・・はい、十分かと思います」

「よし、じゃあ予算はこれで、運用資金から引いておいてね」

「待って下さい、いくらなんですかっ、いくらの予定にしたんですか!?」

「大丈夫だよニーナさん、艦の補給と同じくらいだから大したことないからね、端数だよ端数」

「艦の補給。端数!? それ大したことある額ですよね!」

「大丈夫だよ、艦長の私を信じられないの?」

「あ、いえ、そんなつもりは、ノワさんの事は信頼の出来る御方だと認識しております」

「なら、就任祝いって事で受け取ってね」

「うう、はい・・・」


 よーし勝った、ニーナさんもスタイル良いから楽しみだなー、黒髪のボブだから何でも似合うよね。

 肌色も考えると白系はいける、カラフルな原色系も淡いパステル系も似合うと思うんだよ、私みたいに白銀の髪と白い肌だと白系はどうしてもコーディネートが難しくなるから、自分に合わない他の人のコーディネートを考えるの楽しいよね。

 シェフィは「純白の御姿も妖精みたいでお美しいですよ」なんて褒めてくれるけど、何着ても褒めるからねシェフィ、いやセンスは1番良いから信頼はしてるんだけどさ。


 ***


 さて、来たるは以前ミュウちゃんとデートをしたデパート区画のファッションエリア、大雑把になるけれどどういった服を何処ら辺の店が取り扱っているか分かっているので此処が1番だ。


「えっと、このパンツと、あと色違いを・・・」

「ねえニーナさん、スカート買わないの?」

「私には似合いませんから」

「・・・」


 おずおずと最初は遠慮がちだったニーナさんも一度割り切ってしまえば、そこは切り替えの出来る軍人さん、サクサクと服を選んで行った。

 サイズはファッションエリアに入る時にスキャン採寸を行っているので、どのお店に入っても試着要らずで買い物が出来るようになっている、アプリを情報端末にインストールしておけば、実寸大の自分自身をその場にホロ投影させて着せ替えも出来る素晴らしいシステムが組まれているのだ。


 だけどね、ニーナさんはパンツと長袖のブラウス、ベストとジャケットばかりの所謂ボーイッシュスタイルの服しか選ばない。

 似合わないって言うけどさ、私よりバストもあってウエストもくびれて、ヒップも鍛えられているから引き締まって、総合的にナイススタイルを持ちながら、スカートが似合わないとは何なのか。

 私とシェフィは無言で頷き合うと、ニーナさんから端末をひったくってスカートを着せた。


「え? ちょっと恥ずかしいので止めてください!」

「いやいやニーナさん、とても似合ってるのでスカートも買おうよ」

「はい、そうです、パンツ1本につきスカート1本という縛りを設けましょう」

「シェフィ、それ採用!」

「ええっ!?」

「ニーナさん、スカート嫌い?」

「い、いえ、嫌いでは、ただ似合わないから・・・」

「それ、誰かに言われたの?」

「あ、はい、お前はスカート履くとダメだからって幼馴染に」


 へえー、ふーん、幼馴染ねえ?


「その幼馴染って、男の人?」

「はい」


 ピンと来たね、そういうの私は許さないよ?


「ニーナさんは美人だからスカートも似合うよ、ねえシェフィ」

「はい、身長161cm、体重〇〇(わー!)kg、BWHも素晴らしい数値です、美しい黒髪、顔面偏差値の高さ、客観的に申しまして美人と断定致します」

「あ、う、ありがとうございます・・・」


 男幼馴染に言われた、軍の制服は露出の無いパンツ、スカートも有るけど膝下丈の野暮ったい奴、ここは膝上丈のスカートでしょ!

 パパっとニーナさんをホロ投影して、白のノースリーブとミニスカ、フレアスカートも似合うし、勿論生脚にヒールのあるパンプス、うん!めっちゃ可愛い!


「可愛い!好き!美人!」

「エクセレント、エレガント、ナイス生脚です」

「はう、こんな可愛いの着ちゃっても・・・、肌出し過ぎじゃあ」

「可愛いからいいと思う! ニーナさん友達とかと服買いに行かなかったの?」

「その、軍学校も、帝国軍も男性社会で・・・」

「勿体無い、私が男ならニーナさん口説いてるのに!」

「口説っ、ええっ、そんな事1度もないです」


 ニーナさんは眉を寄せて困った様子で言葉を詰まらせた、男性社会で女性士官とかほとんど居ないのにナンパしないの?


(ノワ様、上官を口説くチャレンジャーは帝国軍には居ませんよ、フラれた時や破局した時大変ですから)

(あ、あー、確かに広い戦艦内と言っても密閉空間で数ヶ月、場合によっては年単位の付き合いになると考えたらリスキー?)

(はい、そういうことです、ましてや旗艦所属の副官クラスとなれば美醜関係無く及び腰になるでしょう)


 私の視界内HUDに珍しくシェフィがショートメッセージを送って来た、ニーナさんに気付かれないようにこそこそ話で納得する。


「ノワ様、私に良い考えが御座います、誰もニーナ様を褒めず口説かずならば、私達が褒め称えましょう」

「採用! ニーナさん可愛い!」

「此方の服は如何でしょうか」


 シェフィのコーディネートはネイビーのホットパンツ、襟元が少し空いた白のブラウス、スニーカー、薄色のカラータイツだった。

 綺麗な鎖骨のチラリズム、普段パンツスタイルのニーナさんの脚線美、正直に言ってとってもセクシー。


「うーんシェフィ、グッジョブ」

「あ、あのですね、あまり薄着ですと護衛に支障が」

「あ、そっかそっか、じゃあ全部グラビティウィーブ素材でインナーも加えちゃおう」

「待って下さい!? 総グラビティウィーブ仕上げって幾ら掛かるのかッ」

「シェフィ、私の服揃える時って幾ら掛けたっけ?」

「最終的には900万マニ程、キャプテンはウニクロ等の廉価メーカーを好んだので400程で収まりました」

「そっか、じゃあ予算はそれくらいで」

「イエスマム」

「ッ!? ッッ!!」


 グラビティウィーブ素材のインナーさえ着ていれば、レーザー銃や熱線銃で撃たれても致命傷を受けにくくなる。

 宇宙空間活動用として開発されたもので、パイロットスーツやスペーススーツの素材として有名だ。

 高価な分、護衛に着いてくれるニーナさんの私服としては最適な選択になると思う、勿論私もキャプテンもシェフィの服もグラビティウィーブ素材で固めているので、顔面を撃ち抜かれない限りは早々死なない。


 後になって落ち着いてから気付いたけど私服に数百万マニって使い過ぎだよね、でも皆の安全を考えたら無駄金じゃないんだから後悔はしていない。

 例えば、アークの空調や生命維持装置が故障した時とか、・・・無いけど。

 あ、索敵を掻い潜るためにアークの機能と出力を最低まで落としてステルスに徹する時とかは酸素も薄くなるし気温もマイナスまで落ちるから、そういう時の簡易生命維持付きグラビティウィーブ素材服は活躍する筈だ、・・・多分ほぼ無いけど。






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